死の猟犬 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300554

感想・レビュー・書評

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  • 怪奇幻想短編集。解説にもあるように降霊会や精神科医の登場する似たパターンが多いが、いつものようにクリスティーの人物描写が秀逸で私には楽しく読めた。『赤信号』『第四の男』『アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件』『S・O・S』が面白い。

  • 12話が収録された、短編集です。
    戯曲にもなった法廷ミステリの「検察側の証人」以外は、いわゆる"怪奇譚”で、オカルトやサイコサスペンスばかりなので、ミステリ目当てで読むと、あてが外れるかもです。
    私は、このちょいと不気味な雰囲気を堪能しつつ読みました。
    心霊的な描写が多く、日本語訳が難しかっただろうと、お察ししますが、時々読んでて「?」となる部分がありました。
    特に「死の猟犬」は、正直内容がよくわかりませんでしたね(苦笑)。
    この話が表題作で、しかもトップバッターなのは、短編集の構成としてどうなんだろう、と余計な事を思った次第です。
    本書唯一のミステリ「検察側の証人」は普通に面白くて、ラストの一文に「!!」となりました。

  • 「検察側の証人」は名作。「死の猟犬」大戦中にベルギーで怪奇現象を起こした修道女の話。「カーマイケル卿の事件」灰色猫の謎で読んだ。魂の入替。面白い。

  • アガサ・クリスティの幻想怪奇短編集。
    表題作を始めとする不可思議な物語の詰め合わせで、読後も結局あれは何だったんだろう…と呆けてしまう。
    真相が分かるようで分からないといった宙ぶらりんの状態。
    このもやっとした感覚、悪くない。
    それと「検察側の証人」の結末には見事にやられた。

  • そこには理屈なんてない?

    超自然現象と死。いわゆる推理小説とは違って、明らかな謎解きは行われない。これだから怪奇小説は。幻想的な雰囲気とホラーを楽しむ短編集。「検察側の証人」だけは怪奇小説でない。それ以外は、うまく理屈で説明できないものが事件を引き起こしている。それはつまり、名探偵の不在。いつもの推理小説も、名探偵がいなければ怪奇事件なのかな、と思いつつ。

    「検察側の証人」は、映画やドラマをみたことがあるが、こんなにシンプルな短編だと思っていなかった。

  • クリスティの書いた幻想怪奇を題材にした短編集。
    要するに「世にも奇妙な物語」なお話。
    但し話としては非科学的な話と科学的な話が混ざっている。
    まあさらっと読める。「検察側の証人」の最後の落ちはおおっと思ったけど。

  • タイトルに惹かれたのと、「検察側の証人」を読みたくて手に取りましたが、オカルト感満載で途中からよく分からなくなり「死の猟犬」「赤信号」まで読んで断念。
    順番に読むつもりが他の作品を飛ばし「検察側の証人」に。

    また気分が変わったら読めてない話を読もうと思います。

    「検察側の証人」
    面白かったです、
    愛がそこまで人を動かすとは…最後のセリフ少しぞっとしました。

  • オカルトに特化した短編集。交霊会、霊媒師、精神科医といった単語が飛び交う時代。怪奇現象を調べていった結果、科学的に説明がつく話もあれば、説明がつかないままの話もある。似たような題材を使いながらも、悲劇的なものもあれば、少し哀しかったり優しい雰囲気の作品もあり、オチにま工夫があって興味深く読めた。
    「赤信号」交霊会で霊から忠告を受けたあとに起こる殺人。狂気に囚われた殺人者はいったい誰なのか。主人公の追い詰められ方が緊張感あり、意外な真相も面白い。
    「第四の男」列車で意気投合した三人の学者が議論のネタにした多重人格少女の事件。そこに居合わせた四人目の男が、世間には知られていない少女の真実を語る。
    「ジプシー」子どものころからことあるごとに夢の中や現実でジプシーに不吉なお告げを受けていた友人。友人の死を機に、主人公は、友人がジプシーと呼んでいた女性に会いに行くことに。話を通しての不吉な感覚が、
    「検察側の証人」は、唯一オカルト要素のない作品。殺人の容疑者となった青年の無実を信じ、助けようとする弁護士。青年の妻は、検察側の証人として青年に不利な証言をしてくる。そこで得られた、妻の証言をさらに覆す証拠とは。ラストの衝撃はなかなか。ひねりが効いて面白かった。
    「アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件」ある朝突然、記憶をなくしたアーサー。心理学者カーステアズは、アーサーのふるまいに猫を連想していく。そして屋敷には猫に関係する怪現象や、かつての飼い猫の死の噂が。まさにオカルト探偵といった物語。
    「最後の交霊会」他の話と違い説明をつけることがない単純に怖いホラー。利己的な人間が恐怖に拍車をかけていく。

  • 有名な「検察側の証人」以外は、ほぼホラー的と言うかオカルト要素の強い作品を集めた感じの短編集です。

    偏見ではないけれど、やっぱりイギリスはオカルトの本場なのかな?と言うくらい不思議な現象や心霊的な話がクリスティの作品にもときどきありますね。
    そして私は、それも嫌いではないです(笑

    いちばん怖いと思ったのは、「最後の降霊会」。
    連れてった子供の魂はどうなったのかとか、母親は後ろを向いたままで幸せなのかとか、なぜ体が半分に縮むの!?(恐)とかいろいろ救いのない、恐怖とともに悲しい思いに侵食される作品でした...><

  • クリスティの短編集。
    幻想、怪奇小説が集まった作品。クリスティはミステリ、恋愛のイメージが強かったが、今作では新しいクリスティ像が見られる様な気がする。今作は過去に読んだ事が無く初めて読む事になる。

    死の猟犬
    表題作。友人の話からイギリスの田舎に住む姉を訪れ、戦争時代に謎の爆発現象にてドイツ兵を吹き飛ばした修道女の行方を聞く。彼女を匿う医者と彼らの元に起きる事件。それぞれに現れる「猟犬」の痕。幻想怪奇にまつわる作品ではあるが、未来予知と死の猟犬については「不思議」と思うしかないのだろう。
    赤信号
    サスペンスミステリー。短い作品だが出来は良く面白い。テーマは予感、直感。主人公が親友の妻に恋してしまい、叔父から警告され、更には医師である叔父が彼等の家に招待を受けた理由が医師としての考えからで、殺人狂の症状が見える為監禁しなければという提案(この時点では女性の方がと思ったが)に、主人公は反発する。その後、主人公が帰宅すると家から身に覚えのないリボルバーがみつかり、同時に警察もやってきて、叔父が殺害されたと知る。主人公が感じていた危険な予感。結末もしっかりしており面白い。
    第四の男
     多重人格の女性の話。医者、弁護士、牧師が列車の中、過去にあった多重人格者の研究見解について議論している。その議論の中に多重人格者フェリシーを知る男性が参加し、アネットという女性を含めた彼ら3名の関係を語り出す。最後、少しミステリアスに閉じているのが印象的だ。
    ジプシー
    ジプシーについてのイメージは難しいが、クリスティ作品ではテーマにされる事も多くイギリスやヨーロッパでの彼らの歴史はとても興味をそそられる。婚約を破棄した友人と謎の女性。助言に従わず手術を受けた友人は死んでしまい、謎の女性も亡くなってしまう。事件の詳細を推察することは可能だが、「不思議」で捉えていた方が面白い作品だ。
    ランプ
    ホラーの印象が強い作品。中々買い手が見つからない屋敷。幽霊を信じない女。屋敷に住む様になり、旦那やお手伝いさんは子供のすすり泣く様な声を聞く。やがて、息子の具合が酷くなり女にも子供のすすり泣きぐ聞こえる様になり。短く完結。わかりやすいホラー作品だ。
    ラジオ
    因果応報とはこの事だろう。老婦人は決して真相を知らなかったと思うが、メイドへ渡した金額等実は何かを勘ぐっていた可能性はある。少なからず結末は日本の昔話の様に悪い事をすれば悪い事が起きるという教訓ににている。近く殺人の痕跡も発見される事だろう。
    検察側の証人
    この作品は戯曲化され、映画化され、ドラマ化されたクリスティの短編の中でも知られている作品。主人公は弁護士であり、絶体絶命な容疑者を救う為奔走するが、彼にとって不利になる様な証言ばかり、合わせて彼と同居している女性から証言を得ようとするが、彼女も彼を落とし入れる様な証言を持ちだし、弁護士を困らせる。そんな中で謎の夫人から手紙が届き、とある証拠を金で譲ると言われ、弁護士は彼女に会う為、彼女の家を訪れる。そして裁判が始まる。
     この作品が人気の理由として、後半の裏切りや怒涛の展開があり、更にはドンデン返しで閉めている事だろう。とても衝撃的な作品で、この一作だけでも抜き出す価値がある物語だ。
    青い壺の謎
    この作品も面白い。ゴルフ中、助けを求める声が聞こえ周りを探すが何もない。同じ時間、同じ場所で助けを聞くが近くの家の美しい女性はそんな声等聞こえないといい、不審な目で主人公を見る。彼は自身がおかしくなったのかと思いながら同じホテルに泊まる精神科医と知り合い、事の解明に乗り出す。その内、例の女性が現れ、謎の夢を見る様になり、精神科医と協力し、彼女の住む家を調べにいく。最後、こんなに親切な詐欺師がいるのかと思わず笑ってしまった。
    アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件
     怪奇小説。呪いによってと言っていいのだろうか。ミステリーにおいては魔法や呪いの様な類はタブーになる事が多いが(僕自身は言及があれば認めているが)今作はミステリーでは無い為、問題ないだろう。実際、アーサーを救う手立ては奇跡しか無いわけだが、見事に奇跡的な展開を用いて解決に導くのは流石の物語巧者だ。
    翼の呼ぶ声
    この男は何故この様な結末になってしまったのか。富や金に対する不安や不信は今も昔も変わらないが、この男の人生はなんとも寂しくて切なく感じてしまう。彼は富む事で満足を得ていたが一方で恐怖感や恐ろしさもあった。不思議な笛を吹く足の無い男。彼との出会いが全ての始まりであり、愉悦感と愚鈍な感覚が彼にのしかかる様になり、恐らく彼は壊れていったのだろう。恐怖感の強い作品だ。
    最後の降霊会
    ホラー作品。子供を亡くした母親の狂気なわけだが、実際に降霊者の体が半分無くなり、降霊した子供を持ち帰ってしまった母親の罪になる訳だが理論的に説明が出来ない現象がおきる。ラウールの立ち位置は不明で本当にシモーヌを愛していた様だが結末は反するものだ。
    S•O•S
    周り数キロ何もない所に立つ怪しげな家。そこで暮らしている怪しげな家族。何かが起きようとしている雰囲気。外は嵐。偶々自動車の故障により、助けを求め家を訪れた精神科医。急遽宿泊出来ることになり、感謝しながらも怪しげな雰囲気を持つ家族に興味を持ち始めるが、彼の用意された部屋にS•O•Sの文字がかかれている。
    結果として殺人未遂の様相だが、最後この様な判断ではまた何かしらの事件が起きそうだと予測してしまった。

     幻想怪奇小説は乱歩以来で期間も空いており読み慣れていない為、充分に理解できていないと思う。幾つか素晴らしい短編作品もあり、気分転換になった作品集だ。

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