マン島の黄金 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 64)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300646

感想・レビュー・書評

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  • 新聞や雑誌に発表されただけで単行本に収録されなかった
    短編集、ということで、ポワロものあり、クィン氏ものあり、幻想怪奇あり、
    ロマンスあり、という感じ。ちょっと珍しいのは元が元のせいか、
    短編のそれぞれに解説がついてるところかな。
    表題作はマン島の観光振興のために行われた宝捜しのための書き下ろし…って
    JR西日本がやってる名探偵コナンもののはしりみたいなもん?まあそんなやつ。
    「クリスマスの冒険」のみアニメで見た。

    まあとにかく統一性とか全然ないのでコメントは難しいけど、
    まあクリスティですな、ってとこですか。

  • ミステリ―と言えないような作品も含まれている短編集。メダウォーによる「まえがき」や「あとがき」も、作品を理解するうえで参考になる。個人的には、風刺の利いた「孤独な神さま」が最も印象に残った。

    「夢の家」
    「白亜の美しい家」と「美しい女性」。「家」と「人間」の持つ類似点が示唆されている。外見と内面は違うこと、その違いは中に入る人、その人の気持ちの持ち方や病気に影響されることなど。内面をのぞくことの恐ろしさを感じさせる作品。

    「名演技」
    大女優の過去に気づいた男がそれをネタに揺すろうとする話。女優の持ち前の演技力が功を奏する。

    「崖っぷち」
    好きだった男性ジェラルドの妻が浮気をしていることを知ったことで起こる、クレアの心理的葛藤が描かれている。

    「クリスマスの冒険」
    「クリスマス・プディングの冒険」のもとになった話。子供たちがいたずらでポアロをかつごうとするが、実際に騙されたのは誰だったのか。

    「孤独な神さま」
    ファンタジックで風刺の利いた話。「孤独な神さま」に惹かれて博物館を訪れた男と女。やがて、二人は親しくなっていく。その二人の間をとりもった神さまが最後に見たものは何であったか。

    「マン島の黄金」
    実際に行われた宝探しの企画のヒントが小説中に盛り込まれているという異色作。ストーリー自体はありきたりで平凡。

    「壁の中」
    画家アラン、その妻イザベル、二人の娘の代母のジェインの心理的な三角関係。あとがきに書かれているように解釈の難しい話。ジェインはなぜイザベルにお金を渡していたのだろうか。アランの心を掴んでいたことの償いだったのだろうか。

    「バグダッドの大櫃の謎」
    「スペイン櫃の秘密」のもとになった話。犯人の仕組んだ罠はなかなか巧妙。ポアロの自意識過剰、自信満々の発言が印象的。

    「光が消えぬかぎり」
    恋人が戦死したと聞いて、裕福な男性と結婚したディアドリ。その恋人は実際は死んでおらず、再開する。ディアドリは裕福な今の暮らしと元恋人との愛のどちらを取るのか。ラストの場面の描写は曖昧で、作者の真意がよくわからなかった。

    「クイン氏のティー・セット」
    「謎のクイン氏」の番外編で、クイン氏はいつものようにサタースウェイトにヒントを与えるだけで去っていく。かって親交のあった家族に招待されたサタースウェイトはそのヒントを手掛かりに邪悪な企みを見抜く。

  • 大好きなクリスティの短編集、さらっと読み進めてしまうにはもったいなく感じ、ひとつひとつ大事に読みました。「崖っぷち」「名演技」の話しのテンポやキレの良さには感服。また、クリスティのロマンスをこの本で初めて読んだんですが「孤独な神さま」のような内容は‎オドレイ・トトゥにでも演じて映画としても観てみたい作品でした。そしてなにより、ハーリ・クィンとサタースウェイトのファンとしては、ふたりの再会に秘かに喜びました。

  • 表題作は、マン島の観光客向けに書かれた、今でいうミステリーツアー用作品。本格とは全く真逆みたいな描かれ方で、珍しいアガサ作品だと思います。

  • クリスティの死後、新聞や雑誌等に掲載されたきりの作品群を発掘した短編集。
    表題の「マン島の黄金」含む12編を収録。

    「夢の家」 (1926、サヴリン・マガジン)
    夢に出てきた白亜の家は、窓から狂気が覗いてた。
    人生に倦んだ男が恋した女には狂気が宿っていた。
    男は女を追いかけて、女が男を追ったのか。
    男が跨いだ敷居の先は、狂気か幸せか。
    江戸川乱歩の世界観にも似た心理サスペンス。

    「名演技」 (1923、ノヴェル・マガジン)
    叩き上げの大女優が打つ 一世一代の大芝居。
    根性 根性 ど根性。なめた真似したチンピラが大火傷。
    胸のすく大逆転トリック。ウィットの効いた大団円。

    「崖っぷち」 (1927、ピアスンズ・マガジン)
    アガサ・クリスティはこの作品の執筆直後に謎の失踪。夫の浮気が原因だとか。
    スキャンダラスな一作。男女の三角関係における女同士の葛藤を描いた心理ドラマ。
    崖っぷちに追詰められた女の生き様を描くアガサの人間観に瞠目。

    「クリスマスの冒険」 (1923、スケッチ誌)
    ある大家族のクリスマスパーティにお呼ばれした名探偵ポワロ。
    彼はある依頼を受けていた。ポワロは子供たちを襲う危機を防げるのか。
    クリスマスではしゃぐ古き良きイギリスの子供たちの楽しさが伝わってくる作品。

    「孤独な神様」 (1926、ロイヤル・マガジン)
    O.ヘンリーを彷彿とさせる、都会の孤独な男女のやさしい恋を描く。
    博物館の片隅にひっそり佇む「孤独な神様」を通じて出逢った男と女。
    アガサ作品には珍しい純粋にロマンティックな物語。

    「マン島の黄金」 (1930、デイリー・ディスパッチ紙)
    マン島観光客誘致目的の宝探し懸賞小説。
    企画は面白いが、小説は面白くない。
    若き探偵ジュアンとフェネラの従兄妹が、狡賢い大人相手に大活躍。

    「壁の中」 (1925、ロイヤル・マガジン)
    これまた男女の三角関係。画家と裕福な家に育った妻、画家を愛する貧しい女。
    結局男は体面に拘る愚かな存在なのか。女の方が現実的に物事を割り切れるのか。
    体面が破れた男は破滅的な愚かな行為に走るのか、それとも甘味に身を溺れさすのか。

    「バグダットの大櫃の謎」 (1932、ストランド・マガジン)
    名探偵ポワロ作品。男女の三角関係を利用した、ポワロ曰く、芸術的完全犯罪。
    他人を唆して動かし、決して自分に証拠を残さない完全犯罪を心理捜査で暴く。
    ポワロシリーズ最終回「カーテン」に通じる犯人像です。

    「光が消えぬかぎり」 (1924、ノヴェル・マガジン)
    またまた男女の三角関係。
    貧しいが愛し合う若い夫婦。夫は戦死し、妻は裕福な男と再婚した。
    退屈な毎日に飽いていた妻の前に戦士したはずの元夫が現れた。
    歓喜と苦痛の愛の生活と、静かで平安な生活。女はどちらを選ぶのか?

    「クィン氏のティ・セット」
    旧交を温めに旧い友人とその家族を訪れた老サタースフェイト。
    道すがら出逢った友人エラリ・クィンは「赤緑色盲」という言葉を残し去った。
    子供のいない老サタースフェイトを温かく迎え入れてくれた幸せな大家族。
    だが漠然とした不安を感じたサタースフェイト。赤緑色盲が指す意味は?
    あの世の連中とサタースフェイトの温かい交流で謎解く推理ミステリ。

    「白木蓮の花」
    愛人との駆落ちの矢先、夫の会社が倒産した。
    妻として孤独な家に戻ったテオ。
    夫に裏切られ、自由になったテオは、それでも孤独を選んだ。
    誇り高き悲劇のヒロイン、テオの物語。

    「愛犬の死」
    ジョイスは夫の忘れ形見の愛犬テリーと長年苦楽を共にした。
    生活が行き詰まったジョイスは、老犬テリーの為、嫌いな資産家に嫁ぐ決意をする。
    玉の輿と騒ぐ世間と沈むジョイス。新しい出逢いはジョイスに何をもたらしたか。

  • オカルト風味あり、ロマンスものありのバラエティ豊かな短編集。
    中でも、ポワロのお茶目なおじさんぶりが楽しい「クリスマスの冒険」と、おとぎ話みたいな恋物語「孤独な神様」が私のお気に入りです。

    どの作品にも、女性ならではの細やかさや感覚の鋭さが表れていて、「女流作家」としてのクリスティを強く意識させられる一冊ではないでしょうか。
    「崖っぷち」「壁の中」や、「光が消えぬ限り」「バグダッド大櫃の謎」では女性の持つ邪悪さ、陰湿さに、「名演技」では女性のしなやかな賢さに光が当てられています。
    女って良くも悪くも侮れないものじゃなくて?というクリスティのどや顔が見えそうな気がしました。

  • イギリスのオリジナル版より、2編多い。
    追加された「白木蓮の花」「愛犬の死」、ミステリーじゃなけど、好き。
    これらと、「クィン氏のティー・セット」以外には、一編ずつにあとがきがついていたのも、面白く読んだ。

  • 「愛の旋律」の解説で、もとい、訳者の「アガサクリスティとウェストマコット」という訳者あとがきで、本書の「壁のなか」が、愛の旋律の登場人物と対比して考えることができるとの示唆があった。

    アラン、その妻イザベルとジェーンが、
    愛の旋律のヴァーノン、ジェーン、ネル、との関係との比較だ。

    愛の旋律を先に読んでいたので、なるほどと思いながら読んだ。

    アガサクリスティの作品にある、アガサクリスティ自身は誰だろうと思いながらも読んだ。

    アガサクリスティ作品の楽しみ方の一つだと思った。

  • /?day=20081128

  • クリスティの拾遺短編集。書き直されて単行本に収録されている作品の前の版や収録されていない作品などが、収録されていて、推理小説だけではなく、さまざまなジャンルのバラエティーがあり、とても楽しめる短編集です。表題作などは、実際の宝探しゲームで使われたものであるから、ミステリ要素があったりしますし、ミステリとしてもお勧めの作品。クィン氏ものを一つ収録されてますしね。

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