マン島の黄金 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 64)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300646

感想・レビュー・書評

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  • 新聞や雑誌等、様々な媒体に掲載されたきり埋もれていたクリスティーの作品を拾い集めてきた、短編集12話が収録されています。
    内容もバラエティに富んでいて、マン島(グレートブリテン島とアイルランド島の間に浮かぶ小さな島)の観光PRの為に書かれた表題作の「マン島の黄金」のような宝探し系の話もあれば、ポアロもの2編「クリスマスの冒険」「バグダッドの大櫃の謎」や、“謎のクィン氏”のクィン&サタースウェイトが登場する「クイン氏のティー・セット」などなど、まさに“拾遺集”というか、“お徳用詰め合わせ”といった感じです。
    個人的なお気に入りは、痛快ドッキリもの「名演技」、ほっこりロマンス「孤独な神さま」が好きでした。

  • クリスティ好きの友人との会話で出てきたので私も真似して読んでみる。
    ポアロの阿房宮のように、クリスティ死後に編まれた作品だとのこと。

    一作目でびっくり。
    ミステリではなく、怪奇小説というか、ポーやヘンリー・ジェームズみたいな雰囲気。
    ええー、ミステリより怖いやつ、と怯んだけど、読み進めるうちにいろんな作品があったのでほっとした。
    全体に三角関係男女の話が多いかな。
    クリスマスは、のちに長編になおされたやつ。
    シェイクスピアがヒントになっている話があったけど、オセロのイアーゴと、この巻に収録されたバグダッドの大櫃(スペイン櫃の原型)の犯人ややり口は似ている気がする。
    印象に残ったのは、
    崖っぷち 心理描写が怖すぎる。
    名女優 手塚治虫のマンガみたい。
    クリスマス ポアロと子供たちとのわちゃわちゃが楽しそう。
    孤独な神様 まるで昔の少女マンガ。謎は多いけど纏まりがいい。
    壁の中 ううう。すごい話。
    光が消えぬかぎり ううう。しんどい。
    クイン氏のティーセット これが見たくて読んだ。いくつかハテナが残るけど、サタースウェイトがクインに会えて本当に嬉しそうで私も嬉しくなる。これがクリスティの短編絶筆だとか。犯人の逃げ足が早い。

    表題作はストーリーは二の次だったけど、外枠が面白い。特に実際の企画謎解きは、全く物語とは違ったというのも笑った。

    細かに解説があって読むのが楽しかった。

  • 他の本に手を加えて改作して収録されているものが多い。
    「壁の中」「崖っぷち」「名演技」は好み。
    「孤独な神様」「光が消えぬかぎり」などロマンティックな
    ものも割りと好き。クリスティらしい人物描写で好きなのに
    クリスティは推理もの以外では評価が不当に低いとおもう。

  • アガサ・クリスティー没後20年を記念して編まれたという短編集。
    『謎のクイン氏』を読んで、こちらの単行本に収録されていない最後のお話があるというので、そちら目当てで図書館で借りました。
    短編集なので、読みやすいけれどよく言えばバラエティに富んでいる。悪く言えば各々の話のテイストが違っていて、戸惑うというか……こう好みが分かれる感じでした。
    クイン氏の話は星5だけど、タイトルにもなっている『マン島の黄金』は星1かなあ……なんて考えてしまう。(これに関しては、元々の企画が企画なので、小説として掲載するのには、そもそもちょっと無理がある様な気がする)

  • 今まで読んだことのないタイプのクリスティの短篇集だった。「クリスティの死後、新聞や雑誌等に掲載されたきりだった幻の作品群」だそう。ポワロの話が2つとクィン氏の話が1つあり。半分くらいまで時間がかかったが、後半はスイスイ読めた。特に「孤独な神さま」「クィン氏のティーセット」「愛犬の死」が気に入った。

  • クリスティーの個性あふれる短編をご賞味あれ。

    表題作はマン島の観光客誘致のために書かれた懸賞小説とのこと。当時は新しい手法だったかもしれないが現代では割とポピュラーなイベントとも取れるだろう。しかしクリスティーが参戦するとは豪華だ。ほかにもバラエティに富んだ短編が収められている。ポアロもあればクィン氏も。

    「崖っぷち」や「壁の中」にはメアリ・ウェストマコット名義の作品群に通じる静かな狂気を感じる。「愛犬の死」は愛犬家なら共感するのだろうか。「クリスマスの冒険」は若者たちとポアロの交流も微笑ましい活劇風。「名演技」は劇作家の面が強く出た作品で、ちょっと誰かに演じてもらいたくなる。

  • ミステリ―と言えないような作品も含まれている短編集。メダウォーによる「まえがき」や「あとがき」も、作品を理解するうえで参考になる。個人的には、風刺の利いた「孤独な神さま」が最も印象に残った。

    「夢の家」
    「白亜の美しい家」と「美しい女性」。「家」と「人間」の持つ類似点が示唆されている。外見と内面は違うこと、その違いは中に入る人、その人の気持ちの持ち方や病気に影響されることなど。内面をのぞくことの恐ろしさを感じさせる作品。

    「名演技」
    大女優の過去に気づいた男がそれをネタに揺すろうとする話。女優の持ち前の演技力が功を奏する。

    「崖っぷち」
    好きだった男性ジェラルドの妻が浮気をしていることを知ったことで起こる、クレアの心理的葛藤が描かれている。

    「クリスマスの冒険」
    「クリスマス・プディングの冒険」のもとになった話。子供たちがいたずらでポアロをかつごうとするが、実際に騙されたのは誰だったのか。

    「孤独な神さま」
    ファンタジックで風刺の利いた話。「孤独な神さま」に惹かれて博物館を訪れた男と女。やがて、二人は親しくなっていく。その二人の間をとりもった神さまが最後に見たものは何であったか。

    「マン島の黄金」
    実際に行われた宝探しの企画のヒントが小説中に盛り込まれているという異色作。ストーリー自体はありきたりで平凡。

    「壁の中」
    画家アラン、その妻イザベル、二人の娘の代母のジェインの心理的な三角関係。あとがきに書かれているように解釈の難しい話。ジェインはなぜイザベルにお金を渡していたのだろうか。アランの心を掴んでいたことの償いだったのだろうか。

    「バグダッドの大櫃の謎」
    「スペイン櫃の秘密」のもとになった話。犯人の仕組んだ罠はなかなか巧妙。ポアロの自意識過剰、自信満々の発言が印象的。

    「光が消えぬかぎり」
    恋人が戦死したと聞いて、裕福な男性と結婚したディアドリ。その恋人は実際は死んでおらず、再開する。ディアドリは裕福な今の暮らしと元恋人との愛のどちらを取るのか。ラストの場面の描写は曖昧で、作者の真意がよくわからなかった。

    「クイン氏のティー・セット」
    「謎のクイン氏」の番外編で、クイン氏はいつものようにサタースウェイトにヒントを与えるだけで去っていく。かって親交のあった家族に招待されたサタースウェイトはそのヒントを手掛かりに邪悪な企みを見抜く。

  • クリスティの死後、新聞や雑誌等に掲載されたきりの作品群を発掘した短編集。
    表題の「マン島の黄金」含む12編を収録。

    「夢の家」 (1926、サヴリン・マガジン)
    夢に出てきた白亜の家は、窓から狂気が覗いてた。
    人生に倦んだ男が恋した女には狂気が宿っていた。
    男は女を追いかけて、女が男を追ったのか。
    男が跨いだ敷居の先は、狂気か幸せか。
    江戸川乱歩の世界観にも似た心理サスペンス。

    「名演技」 (1923、ノヴェル・マガジン)
    叩き上げの大女優が打つ 一世一代の大芝居。
    根性 根性 ど根性。なめた真似したチンピラが大火傷。
    胸のすく大逆転トリック。ウィットの効いた大団円。

    「崖っぷち」 (1927、ピアスンズ・マガジン)
    アガサ・クリスティはこの作品の執筆直後に謎の失踪。夫の浮気が原因だとか。
    スキャンダラスな一作。男女の三角関係における女同士の葛藤を描いた心理ドラマ。
    崖っぷちに追詰められた女の生き様を描くアガサの人間観に瞠目。

    「クリスマスの冒険」 (1923、スケッチ誌)
    ある大家族のクリスマスパーティにお呼ばれした名探偵ポワロ。
    彼はある依頼を受けていた。ポワロは子供たちを襲う危機を防げるのか。
    クリスマスではしゃぐ古き良きイギリスの子供たちの楽しさが伝わってくる作品。

    「孤独な神様」 (1926、ロイヤル・マガジン)
    O.ヘンリーを彷彿とさせる、都会の孤独な男女のやさしい恋を描く。
    博物館の片隅にひっそり佇む「孤独な神様」を通じて出逢った男と女。
    アガサ作品には珍しい純粋にロマンティックな物語。

    「マン島の黄金」 (1930、デイリー・ディスパッチ紙)
    マン島観光客誘致目的の宝探し懸賞小説。
    企画は面白いが、小説は面白くない。
    若き探偵ジュアンとフェネラの従兄妹が、狡賢い大人相手に大活躍。

    「壁の中」 (1925、ロイヤル・マガジン)
    これまた男女の三角関係。画家と裕福な家に育った妻、画家を愛する貧しい女。
    結局男は体面に拘る愚かな存在なのか。女の方が現実的に物事を割り切れるのか。
    体面が破れた男は破滅的な愚かな行為に走るのか、それとも甘味に身を溺れさすのか。

    「バグダットの大櫃の謎」 (1932、ストランド・マガジン)
    名探偵ポワロ作品。男女の三角関係を利用した、ポワロ曰く、芸術的完全犯罪。
    他人を唆して動かし、決して自分に証拠を残さない完全犯罪を心理捜査で暴く。
    ポワロシリーズ最終回「カーテン」に通じる犯人像です。

    「光が消えぬかぎり」 (1924、ノヴェル・マガジン)
    またまた男女の三角関係。
    貧しいが愛し合う若い夫婦。夫は戦死し、妻は裕福な男と再婚した。
    退屈な毎日に飽いていた妻の前に戦士したはずの元夫が現れた。
    歓喜と苦痛の愛の生活と、静かで平安な生活。女はどちらを選ぶのか?

    「クィン氏のティ・セット」
    旧交を温めに旧い友人とその家族を訪れた老サタースフェイト。
    道すがら出逢った友人エラリ・クィンは「赤緑色盲」という言葉を残し去った。
    子供のいない老サタースフェイトを温かく迎え入れてくれた幸せな大家族。
    だが漠然とした不安を感じたサタースフェイト。赤緑色盲が指す意味は?
    あの世の連中とサタースフェイトの温かい交流で謎解く推理ミステリ。

    「白木蓮の花」
    愛人との駆落ちの矢先、夫の会社が倒産した。
    妻として孤独な家に戻ったテオ。
    夫に裏切られ、自由になったテオは、それでも孤独を選んだ。
    誇り高き悲劇のヒロイン、テオの物語。

    「愛犬の死」
    ジョイスは夫の忘れ形見の愛犬テリーと長年苦楽を共にした。
    生活が行き詰まったジョイスは、老犬テリーの為、嫌いな資産家に嫁ぐ決意をする。
    玉の輿と騒ぐ世間と沈むジョイス。新しい出逢いはジョイスに何をもたらしたか。

  • イギリスのオリジナル版より、2編多い。
    追加された「白木蓮の花」「愛犬の死」、ミステリーじゃなけど、好き。
    これらと、「クィン氏のティー・セット」以外には、一編ずつにあとがきがついていたのも、面白く読んだ。

  • 短編集。ポアロの出場回数一回。ちょっと足りない。
    表題になったマン島の黄金は、マン島観光誘致目的で新聞に掲載された小説であるらしい。現場に行ったことがないので、どうかと思ったが、それなりに面白い。さすがミステリーの女王。アガサクリスティの作品は長編になれているのでちょっと物足りない気がするが、通勤電車や料理しながらのながら読書にうってつけ。

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