なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 78)
- 早川書房 (2004年3月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300783
作品紹介・あらすじ
牧師の息子ボビイは、ゴルフの最中に崖下に転落した瀕死の男を発見した。男はわずかに意識を取り戻すと、ボビイに一言だけ告げて、息を引き取った。「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」-幼なじみのお転婆娘フランキーとともに謎の言葉の意味を追うボビイ。若い男女のユーモアあふれる縦横無尽の大活躍。
感想・レビュー・書評
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ノンシリーズ冒険謎解き物語。トミーとタペンスのように若い2人が「なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか?」の謎を追って行動に出る。クリスティーの冒険物は敵もそこまで極悪非道にはならず私的には安心。誰が敵か人物描写が上手く騙された。
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『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』
なんとも印象的なタイトルです。「どうして頼まなかったんだろう?」と誰しも不思議に思うことでしょう。個人的には『そして誰もいなくなった』『鏡は横にひび割れて』に次いで好きなタイトルかもしれません。
この本を知ったのは、改めてクリスティーを読んでみようと思い立ち、書店の本棚を眺めていたとき。
有名だけどまだ読んでいないタイトルがずらりと並ぶ本棚で、ふと目に飛び込んできたのが本書でした。
購入したものの積読の列に並び……この度やっと読むことができました。うん、クリスティーは何を書いたって面白い!
今作の主人公は牧師の息子ボビイと伯爵令嬢であるフランキー。
たまたまボビイが崖から落下した男を看取ることになり、その謎の男が残した最期の言葉が「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」でした。
持ち前の好奇心と貴族の権力を駆使して潜入捜査を試みるフランキー。この展開は、あたかも少年少女の冒険譚といった雰囲気で微笑ましく読めました。
「そんなにうまくいくわけない!」なんて野暮なツッコミはノンノンです。これはワクワクしながら楽しく読むものなのですから。
いつも通り殺人事件は起こるものの、お子様が読んでもわかりやすい一冊なのではないかと思います。
とっても可愛らしい関係のボビイとフランキー。
今作だけのコンビなのが残念……もっと二人の冒険を見てみたかったです!
ポアロやマープルとはまた違った雰囲気だけども、やっぱりこれも面白い。さすがです、クリスティー。 -
牧師の息子・ボビイは崖下へ転落した瀕死の男を発見した。男が死に際に言った「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」という謎の言葉。彼は幼馴染でおてんば令嬢・フランキーとともにその意味を調べるが──。
若い男女の冒険ミステリ&ロマンス!ジュブナイル小説を思わせる大活劇に終始ワクワクした!謎の言葉を調べる内に巻き込まれる殺人事件。なぜ狙われるのかもわからない恐ろしさ。そんな中でも手がかりを得た先で潜入調査に変装!若さゆえの無敵感が心地いい。そこに絡まり合う人間関係も見逃せない!
「エヴァンズ」とは何か?人名?組織?合言葉?その意味が零れ落ちた時は思わず声を上げてしまった!それ以外でも事件の真相が浮かび上がるたびに、ああー!と唸るしかなかった。男女の勇敢な冒険活劇?いやいや、アガサ・クリスティーが書いてるんですよ?そこのところお忘れなきよう。
この人怪しい!って描き方が相変わらず絶品で、手の上で転がされた。表と裏が何回もひっくり返されるハラハラ展開。決着の時まで白か黒かまったくわからなかった。細かいトリックは勢いでごまかされた感はあるけど、そのツッコミを忘れる鮮やかなラストもいいね。 -
ノンシリーズ。
牧師の息子ボビイは、崖下に転落した瀕死の男を発見。その男は「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」という一言を告げて息を引き取ってしまいます。
謎の男の、ダイイングメッセージがそのままタイトルになっている本書。
ボビイと幼馴染の伯爵令嬢・フランキー(なんだか、ごろつきヤンキーみたいなあだ名ですが、本名は「フランシス」)が、男の死をめぐる謎の真相を追う、冒険ミステリです。
若い男女の冒険モノという事で、トミー&タペンスを彷彿とさせる、ちょっと危なっかしいけどアグレッシブな二人の様子が生き生きとしていて、読んでいるこちらも一緒に謎解きやスリルを楽しんでいるような気分にさせてくれますね。
巧妙なミスリードもあって、犯人の片方はさほど意外性が無かったのですが、“もう一人”の方は完全にその仮面に騙されていました。
ラストの犯人からの手紙もなかなかいい味でていますね。
そして、微笑ましいハッピーエンドも良き良きです。お幸せに! -
探偵役がミス・マープルでもポアロでもない、アガサ・クリスティの長編小説。
事故と片付けられた事件を追うのは、勇敢でお転婆なフランキーことフランシス伯爵令嬢と、幼馴染みで牧師の四男坊のボビィ。このレディ・フランシスであるということが、作中とても役に立つ。貴族というだけで信頼され、受け入れられ、敬意を払われる。当時の英国ではこんな感じだったのかなあ…。
迷わず人を殺しまくる殺人犯も、麻薬を扱うギャング一味も出てくるのに、何ともいえずのんびりした牧歌的なミステリー。探偵も犯人も変装しては他の人物を演じるなど、ツッコミどころ満載だ。
事件の動機や背景に社会的な問題などが絡む重いものではなく、こういう楽しい謎解きものが読みたくて手に取ったので期待どおり。なのに、読んだあとはちょっと虚しさが…。
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サスペンススリラーであり、主人公ボビィと幼馴染の伯爵令嬢フランキーが活躍する作品。主人公は医者の友人とゴルフのラウンド中、ふとした事で崖の下の今にも死にそうな男を発見する。彼を看取るが、亡くなる間際、「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか」といい残し、それを聞いていた主人公は後々様々なトラブルに巻き込まれる。
幼馴染の令嬢フランキーはかなり行動的で権力を持っており、彼女自身の魅力も手伝い様々な組織が協力的である。警察に行けば情報を得られるし、様々な細工をしてくれる医者の友人もいる。重鎮の弁護士であっても多少の無茶は許してくれる。魅力的な二人を中心に大きく物語は進行していく。
クリスティ作品の魅力の一つは作品の導入部分であり、読者に大きな疑問を提示する事により作中へ引き込むわけだが、今回は死に際の男が「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか」と呟き亡くなる事で、「エヴァンズ」とは何ものか、いつ登場するのかと興味を引き立たせる。エヴァンズの謎が明らかにされた際には思わずニヤついてしまったが、この様な仕掛けによって作品に読者を集中させることもクリスティ作品の楽しい点だ。
今作はあくまで読み物として楽しむ方が良い。リアリティやシリアスさを求めると少し物足りない。若い二人の行動は無茶苦茶だし、フランキーは後先考えないし、ボビィも行動が危なっかしい。特に犯人捜査中に探偵役が周りに色々と打ち明けたり相談したりすれば、絶対に上手くいくわけがなく。まぁ、少し設定が古いという事と、あくまで読み物であり漫画的な印象がある作品と理解すれば充分に面白い作品だ。
犯人の手口が過去のものと類似して傾向が一緒など、クリスティ作品の本格ミステリーの土台はきちんと当てはめられており、犯人が誰かという楽しみと発覚した後の驚きも感じる事ができる。
シリーズ化してフランキー&ボビィと真犯人(名前は出さない)でも面白そうだ。悪役のシリーズかがあっても楽しめるだろう。
今作のMVPはバジャーで決まりだろう。絶対絶命からの逆転劇は色々あるが、今回は流石にご都合主義では(笑)。こうなるしかない状況だった為に納得は出来るが少し強引か(笑)。バジャーに果たして商材があるのかどうかは別筋として気になる。
最後は洒落た形のハッピーエンドだ。身分違いは今の時代ではイメージがわかないし、海外なら尚更だが、お似合いの二人だ。トミーとタペンスでも良さそうだが、フランキーとボビィも魅力的なペアだ。 -
海外ドラマを観て、ちょっと分からなかった部分があったので原作を読んでみました。
完全にネタバレ状態で読んだのですが、それはそれで面白かったです。こんなこと、この人にに話しちゃ駄目じゃない!とか、ツッコミを入れながら読んでました。
今までクリスティー作品は10冊ほど読みましたが、ポアロやミス・マープルといったちょっと年配の主人公作品を読んできたせいか、クリスティー作品は落ち着いた雰囲気のものだと思ってました。でも本作はボビィとフランキーの若い二人が主人公で活気のある作品で楽しかったです。
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夢中になって読みました。すべてが練られておりまた会話や展開も小粋で、クリスティはやはり天才。子供時代からクリスティの本を読み始めると止まらず寝られなくて夜更かししたのを思い出しました。
題名もそれへのつじつま合わせも天才的です。 -
なりすましが簡単すぎるし、展開が軽すぎるが、題への答えは成程。再読だが、当然記憶なし。