- Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151718540
感想・レビュー・書評
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少年が経験していいことじゃない。もちろん大人だってこんな現実を目の当たりにしたら消息を絶つだろうと思う。辛くて、長いときを過ごすマイクル。
マイクルの思いの強さとかこの先に何があるんだろうと、冒険に進んで行く度胸!
きっと若くなかったらそんなマネはしない。大人には絶対にやれないことをやってのける!
本当におもしろい小説でした。
ページをめくる手が止まりませでした!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
祝・文庫化!
錠を開ける才能がある少年の進んだ道は。
切ない初恋に心貫かれます。
8歳の時の事件以来、口を利くことが出来なくなったマイク。
「奇跡の少年」と報道され、カウンセラーにもかかりました。
酒店を経営する伯父に引き取られ、ミシガン州デトロイトの小さな町で育ちます。
高校の美術クラスで思いがけず才能を認められ、初めての友達が出来ました。
17歳半の時、上級生が卒業間近の夜の悪ふざけに、マイクが錠を開く才能を使うように求められ、事件に巻き込まれます。
奉仕活動のために被害者マーシュの家に通い、仲間の名を明かすよう求めるマーシュに、炎天下でプールを掘ることを命じられます。
その家の娘アメリアに恋をするマイク。
母を失っているアメリアのほうでも、マイクにはどこか通じるものを感じたのです。
ほとんど表情も変わらない、話すことが出来ないマイクの中にあふれ出る感情。
気持ちをどう伝えたらいいか悩み、漫画的なイラストにして心の中の声を吹き出しに書いて、彼女の部屋に置いてくるのでした。
そして、始まる交流‥ここで漫画という形が出てくるのが、最近の作品ならでは?
今は服役中のマイクの手記という形で、犯罪に巻き込まれていくいきさつと、1年後の事件のなりゆきが交互に描かれます。
錠に魅せられたマイクの特技は、あまりにも危険な性質を持っていた。
大切な人を守るために特技を使うしかなくなり、ゴーストという解錠師に仕込まれ、依頼人を持つ立場になる。
心ならずも犯罪者となっていく中盤は重いですが、犯罪小説としてまずまずの読み応え。
利用されてしまうマイクがかわいそうで、どこか捨て身な態度にもはらはら。
そして、しだいに明らかになる子どもの頃の事件…
アメリアへの一筋の純愛が、希望をつなぎます。
意外に心地良い結末へ。
著者は1961年デトロイト生まれ。
1998年のデビュー作「氷の闇を越えて」で高い評価を得る。
これは2010年発表の作品。
2011年アメリカ探偵作家クラブのエドガー賞最優秀長篇賞と英国推理作家協会のイアン・フレミング・スティール・ダガー賞をダブル受賞しています。
2011年12月ポケミス刊行。 -
各賞を総ナメにしただけの事はある大傑作。一度ベージをめくると止める事は出来ません。クライム小説ですが、読者の気持ちは常に少年に寄り添い、読後感は爽やかさすら感じます。お勧めです。
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主人公に魅力がある。 無駄がなくリアルがあった。口がきけない主人公に、ふいに憧れる瞬間があった。
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文句なしの五つ星評価。ミステリの枠に収まりきらない、最高の青春小説とも言えるだろう。必読。超一流の解錠師てありながら、言葉を話すことのできないマイクル。彼の若かりし日々と、現在の姿がクロスオーバーしながら語られていく。言葉を発することができなくとも、雄弁すぎるほどの、彼の心の言葉が綴られているところも、物語の心理的な側面を効果的に彩っている。
ストーリー性だけに依らない、上手い小説を久々に読んだという印象でした。 -
スティーヴ・ハミルトン氏の作品を読破。
早川書房さんのツイッターで見かけたのがきっかけです。
サマミヤアカザさんの絵柄に引かれまして。
あと幅広帯という仕様がね!
これぞ紙書籍のだいご味www
となりました。
で、本屋さんへ行って普段立ち入らないレーベルのコーナーを見て回って。
現物見て、本当に帯だけで、思わずその場で、
「すげーwww」
となりました。
笑
さて、感想ですが――
結構な分厚さですし、海外ミステリーですし、翻訳モノですし、といろいろと不安だったのですが、そんなこと関係なく読破することができました。
さすがに時間かかったけどね!
すごくおもしろかったです。
始まりは収監されている主人公が誰かに宛てた手紙っぽくて。
だいたいなにが起きてそこにいるのか、とか説明されていて。
導入部分で「いったいなにが起きたの!?」って興味深くって。
どきどきわくわくしながら読み進めていました。
奇跡の少年と呼ばれた主人公・マイクルは、トラウマのせいで声が出せなくなって。
少年時代はごくごくフツーに過ごせていたけれど、とある特技のせいで進む道がだんだんヤバイ方へ向かっていって。
いろんな部分で修正できる箇所あったね……と思いつつ、しゃべれないというハンデが裏目に出たのかなあ。
意志疎通ができないから拒否ることもできないし。
それにマイク自身も「試したい」「やってみたい」と思ってしまってるからなあ。
そうやって最初の事件からずるずると闇社会の方へとはまり込んでいって。
でも悪いことばかりじゃなくって。
いや、悪いことをやってる最中に出会ったって感じか。
絵を見てひとめ惚れ、か――
彼女との出会いが完全に踏み外すことを止めてくれたんだろうなあ。
読んでいてそんなことを思いました。
まあ、彼女のために断れなくて、ってこともあったけどね(;^-^)
でもまた彼女に会いたいという想いがあったからこそ、だろうしなあ。
結構なボリュームもあったので、ちまちまと読み進めていたのですが、ラスト方面ではドキドキハラハラで続きが気になって、気になって。
病院の長い待ち時間も気にならないくらい読みふけっていました。
苦笑
いやあ、おもしろかったなあ。
収監されて、手紙を書いている時点で無事だってわかってるのに、それすら忘れて「マイク死なないよね? よね?」と心配したりwww
ラストで今まで謎だったマイクの過去とか判明したりして。
最後の方はほぼ一気に読んでしまいました。
それにしても――
翻訳者さんの名前を見てびっくりしました。
この人、ダン・ブラウン氏の翻訳してる人だ! って。
あとボスの登場シーンで、恰好の描写を読んで、
I田J一? って思ったのは言うまでもなく。
笑 -
ある事件に巻き込まれて言葉を失った少年が、錠を開ける才能を持ったばかりに転げ落ちるように闇の世界に巻き込まれていく物語。
2つの時系列で進んでいくストーリーは、読み進めても明るい方には行かないだろうと予想させるのに、それでもページを捲らずにはいられない。胸が痛むけれど、それでも明るい予感を求めて読み続けて、ラストで何とか一筋の光が見えた気がします。
一気に読んでしまいました。面白かったです。 -
ポケットミステリ版と文庫版があるが、装丁はポケットミステリ版の方が好きだ。
噂通りの上質な青春小説・成長物語、プロフェッショナルな金庫破りの物語。
読みながら、ドン・ウィンズロウの『ストリート・キッズ』の名前がチラチラ頭に浮かんでは消えた。
あっちは、どんな話だったっけ?
ずうっと気持ちよく読めた。
天才的ロックアーティストだし、美少年だし、バイカーだし、トラウマで口はきけないし、写実的なコミックを描くし、、、
イメージしているだけでも美しく思い描けたけれど、クライマックスに向かうほど読む方の気合いが抜けてきた。
なぜだろう?
イヤなまとめもなく良かったのに。
読み始めて、これは傑作ではないか、と読んでいるこちらの期待が大きくなっていった。
そうなのだけれど、やっぱりそういうところで終わるのかなーと妙に安心する結末。
そんなところが、オッチャンは妙に落ち着かなかったのであろー。