ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151754517

感想・レビュー・書評

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  • 2019/11/6読了

  • 面白かった。書かれているテキサスが現実と乖離していないなら、人種差別・気候・生態系(子供が森で遊んで帰ったら虫の駆除とは)などなど、俺には住めない!

  • 久しぶりの再読。テキサス東部の田舎町に住む少年が、周囲で起きるおぞましい事件を通して成長していく話。自然描写は素晴らしいし、家族や町の人々の個性もそれぞれ際立っている。黒人への激しい差別の実態も隠すことなく書かれていて、愕然とさせられる。少年の成長物語としては正直既視感を覚えるし、犯人もだいたい予想通り。一番良かったのは、主人公の父親だ。息子のヒーローとして強い男であろうとするが、欠点や心の弱さを持っていて、その現実に苦悩する。自分の弱さと向き合おうとする誠実さには好感が持てるし、息子以上に父親の方が成長しているように思えた。

  • 1930年代のテキサス州東部で発生した連続猟奇殺人事件を当時11歳だった主人公の少年が80を過ぎた現在回想するという形式の作品。それが当然であるかのように行われる黒人差別に胸が痛くなるが、主人公と治安官でもある父親が黒人差別を問題視していて物語中の黒人差別から生まれた一つの酷い事件に落とし前をつけているので読後感は悪くない。それ以上に主人公である少年が子供時代から一歩ずつ踏み出して成長していく姿が色んな面で描かれていて少年の成長の物語としてとても素晴らしい物語になっている。

  •  80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す―11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、そこにも悪夢の光景が。体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が木にぶらさがっていたんだ。ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど…

     三十年代のテキサス東部の人種差別のなかで起こっていく残虐な連続殺人。被害者は全員女性で、緊縛され、謎の紙片がからだの内側にはいっている。サディスティックで猟奇的な行為に快楽を覚える犯人は、はじめ思い描いていた人物像のまま物語が収束していった所為で、最後まで美青年だったから想像してきゅんとした

     七十年前のボトムズに想いを馳せるハリーが、どれ程その風景を愛していたかが窺える幻想的で美しい文体に、人種差別と、奇妙な町人の団結力、おとなの気持ち悪い部分が相俟って、少年時代の孤独と噎せ返るような甘い匂いのなかに帰ってしまいたくなる

  •  老人ホームのベッドで寝たきりの生活を余儀なくされている老人が、1930年代にテキサスで過ごした少年時代を回顧する。老いた自分への嫌悪の描写がとても切なくてぐっとくる。
     黒人差別と旧弊な因習が残るテキサス東部の描写がすごくいい。父と子の関係や、徘徊する怪物ゴート・マンやKKKのリンチ場面など、みずみずしい自然とゾッとする人間社会が混じりあってていいなあ。叙情とリアリズムという感じ。
     あと末筆だけど、少年の父の経営してる床屋の清潔な描写が妙に印象に残ってます。ココナッツ・オイルの香りのする整髪剤とかいいなあ(*´∇`*)マキャモンの『少年時代』がおもしろかった人にはオススメです。

  • 悲惨な人種差別や残酷な快楽殺人事件などは、ミステリーにはよく取り扱われる要素だけど、舞台が1933年の東テキサスに設定されているため、雰囲気がどこかノスタルジック。おまけに主人公の回想の形式がとられているので、俯瞰的な視点からストーリーが語られ、ギトギトした生々しさがうまく取り払われていると思う。


    11歳の少年が、森で偶然に黒人女性の惨殺死体を発見し、彼の父親である治安官が、懸命に犯人を突き止めようと奔走する。だが被害者が黒人であるために、住人たちは犯人追及に消極的。それどころか、犯人は黒人だと勝手に決め付けている。こういった決め付けは、アメリカ人などの他の作家の作品でもちょくちょく描かれているので、決して珍しいことではないのだろう。さらに驚いたのは、「黒人の血が一滴でも混じったら、そいつは黒人だ」という言葉。これも他の作家の作品で目にしたのだが、この言葉、白人が使えば、「自分たちが一番優れている」という鼻持ちならない優越感や純血主義がぷんぷんにおっていやな感じ。


    犯人を追い詰めるのは、結局、最初に死体を発見した少年。肝心な時に、父親がいないなんて! だがその父親にしても、自分の捜査がきっかけで無実の黒人がリンチされた時、プライドを散々に踏みつけられたのだが、プライドを踏みにじった張本人に仕返しすることで、それを取り戻すのだ。きっかけを作ったら落し前はきっちりつける。ここに、ほのかにマッチョなアメリカを感じてしまうのだった。

  • 80歳を過ぎた老人が思い出す70年前の出来事。11歳の"僕"は森で伝説の怪物"ゴート・マン"に出会い、黒人女性の死体を発見する……。
    少年の視点で描かれる家族の絆や夏の日の冒険物語がノスタルジックで切ない。人種差別が根強い1930年代のテキサスという舞台の書き込みも見事。
    それにしても、こういう物語には夏が良く似合いますね。

  • スティーブン・キングの「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせるストーリー。熟してます。練れてます。

  • アンソロジー「999 妖犬の夏」に収録された表題作をそのまま長編化したものだが、かなり以前のことなので内容を失念していた(読了後そちらに目を通してみたら、大筋はほぼそのままだった)。

    この時代にサイコキラー的人物がいたということよりも、それを(結果的に)許してしまう当時の時代背景が怖い。

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著者プロフィール

 米国の作家。ホラー、SF、ミステリなど幅広いジャンルで作品を執筆。MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀長篇賞受賞作『ボトムズ』(早川書房)をはじめ、英国幻想文学大賞など数々の文学賞を受賞。中でも、HWA(ホラー作家協会)が主催するブラム・ストーカー賞は、8度も受賞している。

「2021年 『死人街道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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