ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 早川書房 (2011年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (515ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151792533
作品紹介・あらすじ
女性調査員リスベットにたたきのめされた後見人のビュルマンは復讐を誓い、彼女を憎む人物に連絡を取る。そして彼女を拉致する計画が動き始めた。その頃ミカエルらはジャーナリストのダグと恋人ミアが進める人身売買と強制売春の調査をもとに、『ミレニアム』の特集号と書籍の刊行を決定する。ダグの調査では背後にザラという謎の人物がいるようだ。リスベットも独自にザラを追うが、彼女の拉致を図る者たちに襲撃された。
感想・レビュー・書評
-
めっちゃコーヒー飲みたくなる小説。
冒頭から数学の話なのか?今回のテーマは数学なのか!?
数式に拒絶反応を抑えることから始まった、ミレニアム2上巻。
当然ながらミレニアム1を読んでいなければ話の繋がりを理解できない。1を読んで間もない為、ストーリーには抵抗なく入ることができた。
まず最初に、本作のサブタイトルは『火と戯れる女』である。巻頭に、拘束された少女が登場する。彼女は自由を奪われた状況から、精神的な逃避をするために、自分を拘束している男にガソリンをかけ、マッチで火をつける妄想を繰り返していた。
この件に関して、上巻ではついに答えは出なかった。
今回も、かなり重い社会問題についてミカエル達は、衝撃的な記事、本を出版すべく仕事に取り組んでいる。
そんな中で起こる、凄惨な殺人事件を発端に、リスベットを中心に疑惑が浮上。
果たして彼女の行く先は。一体何があったのだろうか。
そして、事件とミレニアムの関連性は。
登場人物が多いので、どこまで人物にフォーカスするかは読者の考えによるところだ。
上巻では謎が謎を呼ぶ展開で、読者としては困惑する一方で下巻にどういうった辻褄合わせがくるのか楽しみだ。
社会の闇へ一石投じる物語が再び始まる。
※以下、ネタバレ有り。(備忘録)
ミレニアム1の続きとなるが、前回の事件と今回の事件は関連性は無いとされている。
リスベットの現在の後継人ビュルマン弁護士は、彼女を傷つけた代償として、報復を受け、彼女に操られるがままであったが、憎悪に憑りつかれ復讐を決意する。
リスベットを捕えよと、雇った金髪の巨人は闇社会に生きる仲介人であった。
金髪の巨人はあるオートバイクラブの総長であるマッゲにリスベットの拉致を依頼する。
ミカエルとリスベットは前回の事件以降は特に接触することなく日々の生活を送っている。というよりはリスベットの方が、クリスマスにミカエルとエリカを見て、嫉妬心や虚無感からミカエルを避けるようになった。
海外を放浪から帰国したリスベット。金には困っていないリスベットではあったが、自らの価値観で動くことは好きで、自分のやりたいことを求めアルマンスキーの事務所からデータをコピーする。(ここの描写はそこまで重要ではないように感じる)
後日、ヴァンゲル家の事件以来、顔を見せていなかったアルマンスキーに挨拶をしに行く。その際にアルマンスキーの会社が行っている調査の欠点を伝える。外部の人間が知りえない情報を、知っていたリスベットに驚くアルマンスキーは事務所に監視カメラを設置した。同時にリスベットが生きていることを喜び、彼女の人間性に苦言を呈した。君は信頼関係を軽んじている、と。
そこで、アルマンスキーはリスベットの元後見人であるパルムグレンが生きていることを伝えた。パルムグレンが生きていることを知ったリスベットは、病院に向かい多額の医療費を出し、パルムグレンの治療に選任の医師が取り組むよう手配した。
ヴェンネルストレムの口座から巨額の金を手にしていたリスベットは、これまでになかった服、体を成形し、生活は地味ではあっても多少の変化があった。住み慣れた部屋を離れた。誰にも住所は伝えていない。前の部屋は友人のミミ(ウー)にタダで譲った。
ある日、ミカエルとダグの2名が同じ店に居合わせているのに気づき、ミカエルを再び意識することに。
その後、ミカエルのPCをハッキングしている際に、今ミレニアムが取り組んでいる仕事を目にする。
ある時、リスベットはオートバイクラブの連中によって不意に襲われる。これはビュルマンの仕業と勘づいたリスベットは激怒する。からくも難を逃れたリスベットは、それから姿を消す。偶然居合わせたミカエルは後に警察にその特徴を伝えている。
そして事件は起こる。
ダグとミアが殺され、ビュルマン弁護士も殺された。
現場にはビュルマンの所持していたマグナムが落ちていた。それにはビュルマンの指紋とリスベットの指紋が着いていた。
ダグとミアが殺された直後にダグの家を訪問したミカエルは第一発見者として警察から事情聴取をされる。
その後の捜査から、リスベットの名が浮上し指名手配されることに。ミカエルは自らの考えを整理し、彼女は殺人を犯していない、仮に犯していたとしても、そこには彼女なりに正当な理由があるはずである。そう結論付けて真相を探り始める。
同じくしてアルマンスキー。彼もまたリスベットは無実である可能性を考え、自らの会社が警察の調査に加わり真実を追求することを決める。
本事件にはまだ多くの謎がある。
刑事ブブランスキーはリスベットの人物像について、記録と証言では、辻褄が合わないことに困惑する。記録では彼女は殺人を犯してもおかしくない人物として記されているが、現在の彼女を知る人物からは彼女の道徳心や能力について、とても高く評価されているという事実があった。また彼女が犯人であるならば、殺人の動機は一体何であるのか。
リスベットは一体。
ミレニアムは、ダグから受け継いだ使命を全うすることが出来るのであろうか。
覚えておくべきであろう人物をメモする。
主要人物は当然ながら、カミラ(リスベットの妹)、パルムグレン(リスベットの元後見人)、ダグとミア(本作のテーマに関連している理由で殺されたであろう2名)、ビュルマン(リスベットの現後継人・殺された)、ウー(リスベットの友人)、ブブランスキー(刑事)、金髪の巨人(謎)、ザラ(謎)、マッゲ(オートバイクラブの長)、アルマンスキー(セキュリティ会社社長)、アニカ(ミカエルの妹であり弁護士)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ミレニアム1巻とは少し異なる面白さである。1巻では、読んでいる期間中、他のことが考えられなくなるほど夢中になり、一行でも読み進めたくて仕方がなかった。だが、2巻はややスローテンポで始まり、睡眠時間を削ることなく読めた。もちろん面白いことに違いはないが、今回は登場人物それぞれに、ゆっくりとスポットライトが当てられている印象を受ける。リスベットは正体不明でミステリアスだからこそ魅力的だったのだが、人間味のある面を見せてきており、徐々にそのヴェールが剥がされてゆく。個人的にはずっと正体不明のままでもよかったのだが… 一番笑ったのは、アルマンスキーとミミに「ブラジャーに何か詰めてる」と言われるシーン。アルマンスキーは実際に発言しておらず、心の中で思っただけだが、ちょっと失礼だろう。声を出して笑ってしまった。
-
前半は割りとだらだらーっとしています
映画のPART2にありがちな展開が小説で
繰り広げられます。
リスベット・サランデルの事が好きな人は
ますます彼女のことが好きになるでしょう。
でもこのあたりが個人的には下巻の感動につながったので
なくてはならない導入部だと思います
そしてミレニアム1ではよく見えなかったミカエルの
キャラがここにきてやっと立ってきます。
彼のことをただの優等生だと思っていたのですがさにあらず。
彼のニュートラルな精神は羨ましくなるほどに特殊な才能です。
話は1よりはこちらの方が現実味があって好きですね
日本の刑事ドラマっぽくて、違和感がありませんし
さらさらと読むことができます
ただしリスベット・サランデル絡みは相変わらず黒くて重い。
彼女の純粋ではない真っ直ぐな心に救われます -
前作の疾走感が衰えていない!
あれほど大きく分厚い物語の後なのに、まったく勢いが余話回らないということに驚く。
作者の底知れぬ力量がなせる技だ。
今回の物語は、ロシアマフィアが絡んだ人身売買事件をめぐるミステリだ。リスベットとミカエルがそれぞれに調査を行い、またしても運命が交錯していく。物語の骨格は前作と同じだが、今度はより深くリスベットが幼少期に、彼女が精神病院送りになった謎が提示される。
実際の事件や人物が登場する虚実ないまぜになった妙に生々しい物語がこの作品の特徴だ。
下巻が待てない。 -
北森さんの"邪馬台"もジョブズ伝記の2巻目もユニコーンの続きも、
全てを放り出して上下巻と一気読みしてしまいました。
今回は、リスベットの過去にまつわる、物語。
始まりは穏やかに、徐々に様々な糸が交錯していき、加速していきます。
また物語の構成がすごく丁寧で、登場人物の多さに惑うことなく、いけました。
ん、副題の「火と戯れる女」の意味が、深いですね。
そういえば、性の大らかさはキリスト教国にしては珍しい、、と思っていたら、
意外に宗教観はフラットなようで、スウェーデン。
ラスト、物語としては一区切りついていますが、
消化されてない伏線が多々あるので、こちらは第3部に持ち込みとの事。
その第3部の文庫版は12月上旬発売予定、、うーん、待ち遠しいです。 -
映画化されアカデミー賞編集賞も受賞した作品。
世界的に売れに売れた本の一つだが、著者は最後まで見ることなく死去。
最初はとても小さいものだったかもしれない。
風貌や生い立ちによる差別が、一つの小さな不幸を生んだ。
不幸に折れない強い気持ちは、烈火のごとく復讐の炎となり燃やし尽くす。
この世界でも復讐は螺旋階段のごとく、連なり昇っていく。
復讐の螺旋階段は進むものを痛めつけ、不幸を背負わせることになる。
以下抜粋
- ただ単にセクシャルなのねーーセックスが好きで、性別なんかはどうでもいい。あんたは社会のエントロピーを増大させるカオス要因なのよ(P.196) -
読み出すと止まらなくなるから、このシリーズは非常に危険だ。シリーズ1よりも陰湿さが薄れたのは、主人公リスベットが外の世界に対してオープンになりつつあるから、そのような印象を受けるのだろうか。
伏線の回収も見事で、映像的な描写が刺さる。 -
続きが気になる。
ひょっとすると1より面白いかも。
先に小説を読んだほうがいいのでしょう。
下巻へ急げ。 -
最初物語にどう関係あるのかなとだらだら読んでたらおも白くなってひと段落して新しいエピソードにはいって、急展開すぎて、すごい面白くなった
けど問題なのは登場人物がカタカナすぎて誰が誰かわからん -
前作の上と同じ感じかな。
状況説明的な部分が多い。
でも、いろいろ伏線なのかな~~って
そうやって読めば全然読める(^^)/
で、終盤は一気に物語が動き出して
一気に下になだれ込むって感じ(笑)