ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 早川書房 (2011年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151792540
作品紹介・あらすじ
リスベットは襲撃者たちを撃退した。だがダグとミアが殺され、現場でリスベットの指紋がついた拳銃が発見された。さらに意外な人物の死体も見つかり、彼女は連続殺人の容疑者として指名手配される。リスベットが犯人と思えないミカエルは彼女と連絡を取り、事件の調査を進める。やがてリスベットは、ある重大な情報をつかんだ。そしてミカエルはザラの正体を知るが…リスベットの衝撃的な過去が明かされる激動の第2部。
感想・レビュー・書評
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社会の闇にするどく切り込むミレニアム。
主人公は1に続きミカエルとリスベットの二名。
今回のミカエルはジャーナリストとしてではなく、リスベットの友人として奮闘する。
今回もリスベットは非常に個性的な人物として、読者である私を魅了する。
読み進める中でリスベットの過去が、徐々に明らかになってくる。
内容はやはり重い。とてつもなく重い。
正直、複雑な情報が、名前の覚えにくい登場人物たちの間で交錯する為、少々混乱してしまった。
ミレニアム2の下巻を読んだ人は、きっとミレニアム3を手に取るに違いない。私もその一人だろう。
以下、ネタバレ有り。(備忘録)
決して救いのある物語では無い。
やはり、本作の上巻冒頭に出てくる拘束された少女は、リスベットであった。
裏では国家が糸を引いていた。リスベットの公的権力への反発は、そこからであった。
リスベットの父は不明とされている。違う。リスベットは父を知っている。
父はソ連の諜報員の過去を持ち、スウェーデンへの亡命者だった。冷戦時代、彼がスウェーデンに持ち込んだ情報は、極めて重要で有益であった。
しかし、冷戦が終わりソ連が崩壊すると、父は不必要となり裏稼業の世界へ落ちてゆく。麻薬、人身売買、殺陣。彼は特殊な経歴のために、国から存在しない者として、隠されていた。
それを知るリスベットが、いつ情報を暴露するかも知れぬ為、政府はリスベットを頭のおかしい障害者として、施設に収監した。
母、そして友人のミミを傷つけた男。自らの父であるザラチェンコ、そして兄であるニーダーマン(金髪の男)への報復を実行する。
結末は不意に訪れる。
ミカエルがザラチェンコの住処で、リスベットを発見する。瀕死のリスベットはどうなるのか。
とてつもなく続きが気になるところで、本作は終わりを迎えた。
エリカはミレニアムを去るのか。ファステの異様な執着も気にかかる。
兄のニーダーマンのその後は。
リスベットの双子の妹については、深く描かれていないながらも、まだまだ深く知したくなる存在だ。
そして、まだ罪を償うべき人物も残されている。
ダグとミアの無念を晴らすことは、まだできていない。今後、ミレニアム3にて物語の進展を期待する。
リスベットの無事を祈って読了。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三部作の第二部です。
解説者によれば、
「第一部が孤島ミステリーであり、サイコ・スリラーであったとするなら、第二部は警察小説&復讐小説であり、第三部はスパイ・スリラー&リーガル・サスペンス。つまりこの三部作にはミステリーのあらゆる要素がぎっしり詰まっている。まったくすごい小説があったものだ」
言い得て妙。いやはや、まったくすごい小説があったものです。
別の言い方をすれば、第二部はスター・ウォーズの第二部「帝国の逆襲」に相当するとも言えるでしょうか。主人公ルーク・スカイウォーカーの片腕は切り落とされ、宿敵ダース・ベイダーは実父であることが告げられ、盟友ハン・ソロはカーボン凍結されて・・・と、暗いこと、この上ないです。しかし、それでもしっかり楽しめるところが不朽の名作たる所以でしょう。
『ミレニアム』の第二部にも同じことが言えます。暗さでいえば、三部作のなかで最も顕著です。第一部と第三部の中間作ということで、事件は混迷し、解決の目途も見えてこない・・・。しかし、それでも、あるいはそれだからこそ、引き込まれるように読んでしまいます。
読み終えると同時に第三部を読みたくなることは必至。
買い置きしておくことをおススメします。 -
このミス海外編2010年版9位。題名が示すとおりミレニアム1の続編。限られた時間でいろんな小説を読みたいので、長い小説嫌いなんだけどこれは別。前作同様、上巻の途中までは時間かかったけどそこからは一気読み。ほぼストレスなしに濃密な時間を心地良く過ごすことができた。前作同様女性調査員リスベットとジャーナリストのミカエルが身辺の事件にばりばり対応していくんですが、今回はもろリスベットの個人的な問題がお話の核となってる。前半は売春業界のスクープの話が中心で、共同編集者のエリカのスカウト等出版関連の話題から、殺人事件が発生して一気に話が加速し、後半はアクション活劇になっていく。アクション部分もいいんだけど、事件の真相に迫っていく部分の方が好き。今回はミカエルとリスベットが異なる立場で別々に活動するんですが、そのあたりのカラミがかっこいい。後半の活劇は無双すぎて現実感なくなるからちょっとあれですが、まあ、娯楽小説だし適度に意外性もあって良いのかも。この小説は登場人物が多いけど一人一人の描き分けがすごくて、人数多い割には苦にならない。デフォルメされたキャラではなく各人の基本設計がしっかりしててそれぞれリアリティを持って活き活きと描かれている。主要人物はDNAレベルでぐらいきっちり設計されてて、リアクションが予想できないけどそれが納得できたりするとこが凄い。リスベットを取り巻く人々の聞き込みの際に各人が彼女を同じように描写するところなども、人物設計がきっちりできてる印象を与えてうまい。人物だけではなく、設定、ストーリとも設計の完成度が高く整理されててホント良くできた小説と思います。小説好きの人みんなに進めてしまいます。
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読みごたえが凄い…!リスベットがどんなに辛い想いをしてきたか、読むのも苦しかったけれどそれでも生き抜いてきた所が心に深く刺さった。
ファステの言動がいちいち苛ついたけど、実際社会にもこんな人が沢山いると思うと身近に感じた。
人身売買や売春の問題、公権力がそこに関与していることも庶民には関係無いように見えて、意外と自分のすぐ側にある問題なんじゃないかと気づかされた。誰かがそれに対して行動を起こさないとなにも変わらないんだなと思わされた。
続きがとにかく気になる…!リスベットには彼女なりに幸せになって欲しい! -
映画化されアカデミー賞編集賞も受賞した作品。
世界的に売れに売れた本の一つだが、著者は最後まで見ることなく死去。
遺伝子という螺旋もまた、運命の連なりを作っていく。
今回もまた数奇な運命を持つ二人は、反発しているような協力体制で真実に向かっていく。
明かされる真実は衝撃的で、そこまで道のりの起伏は非常に激しくおもしろい。
以下抜粋
- ジュネーブ条約では、捕虜に感覚遮断を施すことが非人道的行為とされている。感覚遮断による洗脳の試みは、過去に数々の独裁体制下で行われてきている。(P.128) -
ここまで一気見した。2の下巻がここで終わるとは。ブルムクヴィスト急いで、早く。サランデルとの再会に涙出る。1巻では一緒にいた2人が、2巻では一切会わず、2巻の最後でやっと。
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前巻でリスベットの過去についての情報が、断片的にしか記載されていませんでした。
そのため物語が進むにつれてスベットの過去が明らかになり、同時に事件の全容も明かされていく展開は圧巻でした。 -
この本はスウェーデンであることに媚ていない。
北欧らしい風景描写も季節感もなく、ストックホルムであろうとニューヨークであろうと、舞台にたいした違いはない。
ところが物語自体はそうはいかない。
北欧他国や対岸のバルト三国、ロシアとの関係、ヨーロッパ情勢の影響、様々な差別や偏見、移民政策と貧困など、スウェーデンの置かれた状況が見え隠れしている。
第一作は「ナチスの亡霊」
第二作は「ソビエト連邦と冷戦の遺物」
さすが、下巻の勢いは世界的ベストセラーの価値で、ほとんどリスベット・サランデルの「ファミリーヒストリー」!
どうやら、物語は続くようで、積読中の「ミレニアム3」も早めに読んどくべきかも……。 -
圧巻。ただひたすら圧倒的。上下巻1000ページ、ひとときも飽きさせることなく、ただ物語を追い続けたくなるという素晴らしさ。もちろんそれを期待して読み始める訳だけど、更に上を行くなんて、生半可なことじゃない。下巻の残り1/3くらいになって、ようやく真相が明かされてくるんだけど、そこからの展開も更にスリリング。比較的プッツリ終わるんだけど、解説によると、次作は純粋にこの続きになるらしい。これはもう、立て続けに読みたくもなるというもの。今度は1と2の間みたいに長くは空けず、なるべく近いうちに着手しよう。