特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

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制作 : 吉田奈保子 
  • 早川書房 (2012年10月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (578ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151794513

特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕の感想・レビュー・書評

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  •  週刊ブック・レビューに参加していた中江有里が、児玉清『ひたすら面白い小説が読みたくて』の紹介をしている番組を、先週見た。紹介された本は児玉清の文庫解説を集めて編纂した本なのだが、中江有里は、本は解説から読むという。解説を読んで買ったり読んだりするかどうかを決めることは多い、と言っていた。ぼくも実は同じ傾向があり、決め打ちの作家は別として、書店で手にとった本の巻末解説などには必ずと言っていいほど眼をやり、それによって読む本を選択することは多い。こんなことを書いているのも、実は本文庫化された特捜部Qシリーズの一作目についてだが、池上冬樹氏の解説が素晴らしいのである。こんな解説を書かれたら、矢も盾もたまらずに読みたくなってしまう人は多いのじゃないか?

     特に警察小説としては、87分署に比肩するほどオススメしたくなるシリーズらしいと書かれてしまえば、かの87分署読破者のぼくとしては、また警察小説と聞いただけで喉から手が出るほど欲しくなるぼくとしては、もうそれらは殺し文句に近いのである。こんな解説ずるい、よな。

     さて、果たして、本書は、解説の池上氏のおっしゃっている通り、素晴らしい警察シリーズであることを予感させる、記念すべき第一冊であった。こんな小説は誰も書かないというのが、何しろぼくの第一印象である。デンマークの警察署を舞台にしているからとか、この国の慣習や法律に馴染みのない部分があるからとかそういうことではなく、この作者によるオリジナルな奇想の部分がこの印象の大半なのである。

     例えば、この作品は、陰と陽によって構成されている。陰の方は事件の核心部に関する描写である。身動きのできない場所で監禁されてしまった上院議員ミレーデの身に起こった恐ろしく不当で最悪の犯罪。冷酷な監禁犯たちは密閉された監禁室の気圧を少しずつ上げてゆき、殺さずに何年も何年もの時を待つ。暗闇から解放したり、また暗闇に戻したり。食事を出したり、止めたり。犯人たちの思惑がわからない分、ミレーデも読者も不安であり、状況は絶望的である。

     さて、陽の部分は、特捜部Qの創設される状況、そこにあてがわれる部下はゼロ。責任者であり捜査官であるカール・マークは、とんだサボり親父でありながら、ある銃撃事件を境に殉職したり全身付随になった仲間たちへの負い目を抱え、生きている。事件以来仲間たちから疎まれ、警察組織に関しても斜に構えた見方しかできなくなったカールのもとへ助手として現れたのは謎のシリア人アサド。未解決事件を追跡してゆく特捜班Qは、刑事一名、素人助手一名の弱小窓際部署であり、彼らの部屋は地下室の隙間でしかなかったのである。

     三階にある殺人捜査課と、全身不随のハーディの待つ病室と、地下室の特捜部Q即ちカール・マーク独りと、せいぜいモップを抱えたアサドという変な助手。それらのどれもが事件捜査に少しずつ関わり、殺人捜査課以外が目立った活躍や確信に迫るヒントの想像場所でもあったりするところが、やわな警察権力の構造に反旗を翻した立ち位置を作家視点として伺わせるあたりが、魅力的であり、ダメ判定されたキャラクターたちこそが活躍するというエンターテインメント構造としては王道をゆく辺りが読者の喝采を招くのも当然の結果であると言える。

     そして陰の方は、さらに深い過去、上院議員ミレーデの家族に起こった不幸な交通事故というところまで遡る。それぞれの時制での状況活写が実に上手く、乗せられてしまうこの奇妙なリズムは、本シリーズの成功を約束する構成要素の一部と言ってもいいだろう。奇跡的なぎりぎりの大団円をこの連中は迎えることができるのか? 手に汗握る圧巻の警察小説の未来に幸いあれ!

  • 10月-8。4.0点。
    事件で撃たれ、同僚一人死亡、一人下半身麻痺の主人公。
    未解決事件捜査班特捜部Qを新規立ち上げ。
    謎のシリア人が相棒。掲示では無く事務担当。

    面白い。すごい。
    現代と、檻に囚われた女性のシーンが交互に。
    地道な捜査で段々と真相へ。
    結末も非常に良い。

  • 面白かった。
    刑事ものとしても、社会的なものとしても、人間ドラマとしても。
    事件の闇が深いほど、登場人物達の思いが光る。
    生きていることは楽なことではない。
    でも、時にとても尊いものである。
    それを自然に感じさせてくれるラストに胸があつくなった。
    登場人物がとにかく魅力的。
    彼らの今後がとにかく気になります。
    シリーズ追いかけます。

  • 事件の真相は途中でなんとなく分かったけど面白かった!叩き上げの刑事だったカールが閑職に追い込まれる経緯も興味深いし、シリア人アシスタントのアサドがオフィスでサモサ焼いてるところも最高でしたwww やっぱりバディものはいいですね!

  • 「おみやさん」「コールドケース」の北欧版。迷宮事件を解決する刑事小説シリーズ第1作

    北欧は 女性の強さが目立つ。優秀なベテラン刑事が難事件を解決する というより、被害者の女性の精神的 強さや 生命への執着心に 男性刑事が ひっぱられて、事件が 解決されていく感じ

    監禁された女性の言葉「泣きたかった。しかし、外にいる悪魔たちに泣き声を聞かれたら、降参だと思われてしまう。諦めるつもりはない。そんなことするものか」

  • 未解決事件を再捜査するために発足した特捜部Q。機能することは期待されず、予算と政治のために発足した部署で、責任者は主人公カール警部補。
    今回の事件は、5年前に発生したフェリー上からの行方不明事件。船上からの入水自殺ということで片づけられていたが、実は誘拐・拉致されていた。現在の特捜部Qの捜査と、5年前の状況が並行して語られ、徐々に5年前の事件が現在の捜査に追いついてくる。

    果たして間に合うのか・・・。

    現在の捜査が5年前の事件を追いかけているのか、5年前の事件が現在の捜査を追いかけているのか、展開は鬼ごっこのようだ。途中で犯人の目星はつくが、緊迫感は途切れない。

    新聞書評で、シリーズ5作目の『特捜部Q知りすぎたマルコ』が紹介されていたが、助手アサド、第2作目で登場するローサ女史の来歴もシリーズ・ストーリーの一つなので、シリーズ第1作『檻の中の女』から読むべき、特捜部Qシリーズだ。

  • プロローグですぐ「アレックス」を思い出した。しかし状況はアレックスよりも悲惨で読んでいて重苦しかった。が思っていた以上に面白く一気読み。骨太でキャラもしっかりした筋立てで 読み応えのある本だった。登場人物が話す言葉、感じ方も状況説明も実に現実的。端折ることなく でもしつこくなくさらりと書かれている。普通触れられる事のない しかし現実的に考えたら「●●はどうしたんだろう」と疑問に思う事もさらりと挟まれているので 余計にリアルに感じられて引き込まれたのかもしれない。次をすぐに読みたいと思わせる本だった。

  • デンマーク コペンハーゲン警察で、特捜部Qを率いる刑事マール。彼は、前に担当した事件で2人の同僚とともに犯罪者に襲われ、ひとりだけ現役に復帰している。

    特捜部Qの唯一の下働き兼相棒アサドは、シリア系難民だけど並みの難民じゃない怪しいところ満載の元気もの。

    そして、特捜部Qシリーズ第一作の最大の被害者である民主党副党首ミレーデは才色兼備で鉄の意志を持ち、次期党首を伺う。

    これら登場人物のそれぞれが、非常に強いキャラクターを持ち、また、彼らの周りを固める助演陣が更に物語をいろいろな方向に引きずり回していく。
    この混乱のなかから、ひとりの人物の姿が浮かび上がってくると、ばらばらに展開された筋が、どんどん一つの目標に向かって嵌っていく。
    でも、そのままでは物語は終わらない。
    最期のギリギリまで、読者を引きずり回す。

    タイトルの通り、檻の中に閉じ込められた女、そして出てくる描写は、かなり凄惨。
    しかし、その凄惨さに生々しさがないのは、北欧の色か?
    そして、最後の最後に救われるひとこと。

    非常に面白い警察シリーズで、すでに6冊も刊行されているようなので、読んでいくのが楽しみです。

  • 北欧ミステリ。主役が分かりやすいヒーローではなく、やさぐれた訳ありくせ者の中年のおじさん。そしてワトソン役として存在感を出しているのがシリア系のアサド。今後のシリーズでアサドの過去や経歴も明らかになっていくようでし楽しみ。事件捜査中に銃撃に遭い、三人のうち一人死亡、一人が重傷で寝たきりとなる体験をして燃え尽きPTSDを負ったカールを持て余した上司が、政治家が突如作った「特捜部Q」という未解決事件を担当する特別部署のトップに任命、カールはしぶしぶながらも元来持っている正義感と刑事の素質、観察眼をもって難事件の見落とされ忘れられた手がかりを丁寧に追いかけ、真相に迫ってゆきます。シリアスな内容ながら、謎の異邦人アサドがいい味を出していて、ところどころふっと息抜きも出来ます。事件は陰惨でしたが、読み物としてはととても面白かったです。

  • デンマーク版「ケイゾク」。
    グイグイ読ませるし、社会派に重みを置きすぎて本格要素の少ない海外ものの中では十分ミステリといって良い。7.5

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特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕の作品紹介

捜査への情熱をすっかり失っていたコペンハーゲン警察のはみ出し刑事カール・マークは新設部署の統率を命じられた。とはいってもオフィスは窓もない地下室、部下はシリア系の変人アサドの一人だけだったが。未解決の重大事件を専門に扱う「特捜部Q」は、こうして誕生した。まずは自殺と片付けられていた女性議員失踪事件の再調査に着手したが、次々と驚きの新事実が明らかに!デンマーク発の警察小説シリーズ第一弾。

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