二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (562ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151795015

作品紹介・あらすじ

映画化決定! 上川隆也主演「二流小説家―シリアリスト―」 全国東映系で6月公開!

残忍な手口で四人の女性を殺害したとして死刑判決を受けたダリアン・クレイから、しがない小説家のハリーに手紙が届く。死刑執行を目前にしたダリアンが事件の全貌を語る本の執筆を依頼してきたのだ。世間を震撼させた殺人鬼の告白本! ベストセラー間違いなし! だが刑務所に面会に赴いたハリーは思いもかけぬ条件を突きつけられる……
『ミステリが読みたい!』をはじめ三大ベストテンの第一位を完全制覇した超話題作

感想・レビュー・書評

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  • ハリー・ブロックはポルノ、バンパイアもの、SFものなど筆名を使い分けて「発表」している自称「二流小説家」。そんなある日4人の女性を殺害した死刑囚ダリアンから、事件の全貌を語るので本を執筆してくれと依頼がくる。刑務所に赴くとある条件を言われる。ダリアンには女性ファンがいてファンレターがくるといい、その女性と会ってダリアンとその女性を主人公にした物語を書いてくれ、というのだ。少し逡巡したあと承諾。さっそく仕事にとりかかるが・・

    なにか前段が長い。事件としてはダリアンがやった殺人、そしてハリーが仕事を請け負ったからみの殺人。殺人現場は残虐。文体はハリーの独白調。訳文からはハリーのやさしいというかそんな性格がにじみ出る文体。ミステリーとしてではなく、きっと題名の通り「二流小説家」ハリーの遭遇した経験物語として読めばいいのかも。いやミステリー、探偵小説といっても基本は登場人物の遭遇した物語なのか。


    2010発表
    2013.1.25発行 図書館
    (単行本は2011.3に出版)

  • 異なるペンネームでポルノ雑誌のライター、SF小説、ヴァンパイア小説を手がけている中年の作家が主人公。キャラ設定は軟弱だが、中身はハードボイルド、サスペンス、謎解ミステリー要素がしっかり。更に作中には、主人公の数々の小説が挿入されているので散漫に読むと楽しめないかも。逆に集中するととんでもなく面白い。
    またアメリカンジョークや往年のミステリー談義等もあり、この辺は読者を選ぶ内容かもしれない。

  • 本書の中で起こった、あるいは起こる事件は、
    とても残酷で目を覆うばかりに陰惨なものです。
    犯人の狂気、被害者遺族の心情が絡む
    やりきれない物語になるところを、
    二流の作家を主人公に据えることで、
    エンターテイメント小説として
    楽しめる工夫がなされています。
    虚構の中よりも現実の方が謎に満ちているということ、
    そして、すべての命は
    ひと粒の雫に過ぎないということが、
    想像によって創作された
    架空の物語の中で語られていて、
    とても興味を惹かれました。
    最後まで中だるみすることのないサスペンス。
    これが処女作だなんて凄いですね。



    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 割とページ数が多く、かなり残虐な事件だったが、重くならずさらりと読めた。
    こんな事件を扱った本とは思えない気分だが、楽しかった。事件を悪ふざけやギャグにしたわけではないのだが、面白かったなと読後に思った。

    死刑執行後、それぞれ苦い表情を浮かべながらプラカード等を片付ける死刑反対派のデモ隊たち。しかしながら、その誰一人として執行された犯人を悼んではいないことにふと気付くハリー。このエピソードがとても頭に残った。人権派と呼ばれる人たちに対して漠然と感じてた疑問は正にこういうところだと思った。

  • 「二流小説家」
    ゴードンの処女作でエドガー賞処女長編賞候補作。


    日本では翻訳ミステリー大賞候補を皮切りに、「このミステリーがすごい! 」(宝島社)、「ミステリが読みたい! 」(早川書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(文藝春秋)の全てで1位にランクインした話題作。本国よりも日本で火が付いたパターン。


    しがない作家のハリー・ブロックは、他人の顔や偽りの名を借りて数多くの小説を出版してきた。SF、ミステリ、ヴァンパイア、ポルノ。とは言え売行きはぱっとしない。そんなある日、死刑囚のダリアン・グレイから手紙が届く。十二年前に四人の女を惨殺した殺人鬼だ。グレイはポルノ記事を書いているハリー(ペンネーム:トム・スタンクス)の文体のファンであり、事件の全てを語る告白本の執筆を依頼したいと言う。しかし、条件付きで。


    その条件とは、グレイのファンに会い、彼女達とハリーの情交をポルノ小説として書き上げて欲しいというもの。ハリーは悩みながらもグレイのファン達にインタビューを開始するが、その彼女達が次々に殺される事件が発生する。


    と言うのが大まかなあらすじ。最大の読みどころはグレイのファン達が被害者となった連続殺人事件の真相であり、この事件をきっかけに浮上したグレイは本当に犯人なのか?という十二年前の事件の真相である。ミステリとしての謎解きやどんでん返しは、物語の本筋を担う役目を十分に果たしている。


    この読みどころに並ぶのが、ハリーのキャラクターのパンチ力と変貌ぶり。まずキャラクターは、一言で言うと女性に頭が上がらない愛すべきしがない中年男。小説家と並行して家庭教師をしているのだが、その教え子であるクレア(女子高生)にあれよあれよと主導権を握られ、いつのまにか彼女の宿題代行をやることになり、更にはクレアはビジネスパートナーになってしまう。この振り回され感は、小遣いを上げてくれと妻に言えない旦那の様だ。しかし、相手は女子高生。びしっとしろよ!と。


    それ以外には元恋人ジェインとの恋をなかなか忘れられず、彼女の仲間と会った際には、ムキになってグレイの告白本を書くと言い切ったり、グレイのファン達とのインタビューではあまりの押しにビビってしまったり、自分の小説を絶賛するテレサに正体を明かしたくなったりするハリーには自虐、子供らしさ、誠実さが感じられる。また、ユーモラス、自虐プラスαで、を発揮する所もある。実に愛すべきキャラクターである。


    後者は、恋模様と別れが絡んでいる。ジェインとの別れから始まり、ダニエラとの出会い。別れはクレアとのものだ。女性に頭が上がらない男から勇敢な男の姿へと変貌していくハリーだったが、恋模様と別れによって哀愁漂う姿を見せる様になる。しかし、最後には次を見据えた男らしいハリーがそこにいるのだ。グレイとの出会いを通じて様々な経験をしたハリーは、テレサの最後の掛け声に応えて小説を書き続けるのだろう。


    ミステリとしてもおススメだが、愛すべきハリーを知ると言う点でもおススメ。

  • 欧米の翻訳モノなんて何年振りに読んだかな(爆)。
    あ、こないだ『王様はロックンローラー』読んだけど、あれは童話だったし。

    翻訳モノは表現が回りくどくて読みにくい、と刷り込まれてしまってたんだけど
    それについては今作で払拭できたかも。文章自体は読みやすかった。
    回りくどいのは訳の所為じゃなくて海外ミステリの特徴なのか。
    この話も本題に入るまでの前振りが長くて読むのが大変だった。
    ダリアンから依頼を受けたあと辺りから一気に展開が速くなる。
    それに加えてその辺りから2重3重のマトリョーシカ的構造になってくるので
    読み進みながらワクワクしてた。
    事件解決のヒントは話のあちこちに転がってたらしいんだけど全く気付かず(爆)。
    大抵の場合、転がってるヒントを見逃したときは悔しくてたまらないものだが
    今回ハリーの手によって謎解きがされたときには拍手喝采(笑)。
    事件が解決したように見えてもまだ入れ子状態で
    更に新しい事実が出てくるし、最後の数行がまた思わせぶりだしってんで
    楽しめたんだけど読み終わったらもうへとへと。

    全体的な描写はグロいしエロい。
    ダリアンをはじめ、いろんな意味でイっちゃってるキャラクターが多々いる一方で
    主人公のくせにヘタレキャラのハリー、
    年齢に似合わぬしたたかさと歳相応の無邪気さを併せ持つクレア、
    ハリーに尾行を気づかれちゃうちょっと抜けたFBI捜査官のテレンス、
    花屋のモーリス、DJのRX738…といった具合に
    なかなか味のあるキャラクターも多く出てくることで
    サスペンスと緩い部分の絶妙なバランスが生まれたんじゃないかと思う。

    本筋からすると恐らく必要のなかった、ハリーの別名義で書かれた作品のパートも
    個人的には面白く読めた。
    特にシビリンのヴァンパイアの話と、パングストロームの惑星ゾーグの話。
    これはこれで抜粋ではなくて全部の話を読んでみたかった。

    日本に置き換えて映画化されるそうだが大丈夫なのか???(爆)
    上川隆也さんだったらハリーのヘタレさ加減も巧く演じてくれそうだけど
    他のキャラクターが全く想像つかない。
    『ストロベリーナイト』のような雰囲気になりそうな予感はするのだが。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「上川隆也さんだったら」
      なかなか読む気にならない、映画を観てから考える。確かに上川隆也は芸達者だから期待している。
      「上川隆也さんだったら」
      なかなか読む気にならない、映画を観てから考える。確かに上川隆也は芸達者だから期待している。
      2013/05/02
  • 小説家版「羊たちの沈黙」になるのかと思いきや、どストレートなミステリー。
    それぞれのキャラクターが好み。
    主人公に絡んでくるのは美女ばかり、そこはハードボイル風。

    このキャラクター達の物語を読んでみたい、というほど楽しい読書でした。

    大満足。

  • 初デヴィッド・ゴードン 犯人の意外性とか話の面白さとかより端々に書かれている表現の方が強く刺さってくる。

    冒頭主人公は、元カノから別れを切り出されるとき「最後に詩を書いたのはいつだった?」ときかれる。 これは、何かを作りたくて心の何処かで野心を飼いながら、日々の忙しさに紛れさせてしまう人たちに刺さるのではないだろうか。 小技が綺麗に効いている一冊

  • うーーーーん。ハリーの”作品”が何篇も出てくる意味がイマイチ分からなかった。もうちょっとそぎ落としてシンプルな作りにした方が普通に面白いと思っちゃったのは感性古いのかしらん?

  • 面白くはあったのだけど、作中作は無関係なのね…。
    ラストもちょっと、取ってつけたように感じた。

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