夜の闇の中へ (MYSTERIOUS PRESS BOOKS)

  • THE MYSTERIOUS PRESS
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152033581

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  • 人生に目的が無い・・マデリンは父の形見の拳銃で自殺を図るが思いとどまり机に拳銃を置いた。が、拳銃は暴発し開け放たれた窓から向かいの歩道にいた若い女性に当たった。マデリンはかけつけるがマデリンの腕の中でその女性は息を引き取る。警察がくれば訳を話すつもりが警察は来なかった。やがてラジオニュースでその女性はスタアという名で、通りすがりの車からの弾丸で死んだと報道された。マデリンはそのスタアの生前を探り始める。

    スタアのアパートに行き、母に会うと、スタアも絶望していたらしいことが分かる。メモには、あの女に仕返しをする、あの男を殺す、とあった。マデリンはそのスタアの思いをかわりに果たそうとする。

    「黒衣の花嫁」を思わせるストーリー。冒頭の暴発事件は突飛だし、復讐相手を探しだせるのもすごい偶然の作用。ウールリッチの世界だ。

    解説によると、死後、自伝を含む4作のタイプ原稿が見つかり、本作は出だしが気に入らずその部分を捨ててしまったようだとあった。ローレンス・ブロックによって補綴された部分はきちんと明記されている。それによれば補綴された部分は全体の1割くらいで残った部分に改変は加えられていないとのこと。

    これによれば最初の銃の暴発はローレンスのもので、マデリンがスタアの借りていた部屋に行くところからが遺作原稿。そこからでも誤って女性を死なせ、その遺志の通り死んだ女性の仇をとって、という設定は書かれている。銃の暴発など「喪服のランデブー」みたいな空からビンが当たって死ぬ、などを思わせる。

    ただ最後の4ページは追加になっていて、そこが、前に進むか、下向きの暗い結末か、の違いにはなり、解説のフランシス・M・ネヴィンズJrも小池真理子も、下向きの方がウールリッチらしいかな、と言っているが、小池氏はさらに、しかし万人の共感を呼ぶドラマティックなものにしたかったかもしれない、とも言っている。

    短編でも「私が死んだ夜」と「私の死」は少し違った別物に仕立ててあるから、結末A,B、と自分で想像してもいいいかもしれない。

    ヴィックを訪ねるところで別人のV・ヘリックを訪ねると、ヘリックは第二次世界大戦で「タワラ」という太平洋上の島に行っていた。そこで「大洋に突きだした小さな地獄。なぜジャップがそこを欲しがったのか、なぜおれたちがやつらからそこを奪取しなきゃならなかったのか、いまだにわからんよ」というセリフがあった。


    これでウールリッチの長編19作は読み終わった。


    1987発表 遺稿をローレンス・ブロックが補綴して発行
    1994.11.15発行 図書館

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