アルジャーノンに花束を 改訂版

  • 早川書房
4.06
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152033932

作品紹介・あらすじ

32歳になっても、幼児の知能しかないチャーリイ・ゴードンの人生は、罵詈雑言と嘲笑に満ちていた。昼間はパン屋でこき使われ、夜は精薄者センターで頭の痛くなる勉強の毎日。そんなある日、彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の偉い先生が、頭をよくしてくれるというのだ。願ってもないこの申し出に飛びついたチャーリイを待っていた連日の苛酷な検査。検査の競争相手は、アルジャーノンと呼ばれる白ネズミだ。脳外科手術で超知能をもつようになったアルジャーノンに、チャーリイは奇妙な親近感を抱きはじめる。やがて、脳外科手術を受けたチャーリイに新しい世界が開かれた。だが、その世界は、何も知らなかった以前の状態より決してすばらしいとは言えなかった。今や超知能をもつ天才に変貌したチャーリイにも解決しがたいさまざまな問題が待ちうけていたのだ。友情と愛情、悲しみと憎しみ、性、科学とヒューマニズム、人生の哀歓を、繊細な感性で描きだす感動の1966年度ネビュラ賞長篇部門受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 経過報告というチャーリーの日記で、物語は進行する。

    主人公のチャーリー・ゴードンは、32歳になるが幼児程度の知能しかなかった。
    昼はパン屋で働き、夜は精薄者センターで勉強に励む。優しいチャーリーは、知能を馬鹿にされても笑われても、陽気に生きていた。
    そんなチャーリーに、偉い大学の教授が、頭を良くする手術の話を持ちかける。
    願ってもないチャンスにチャーリーは飛びつき、手術を受けた。そして彼は天才的な頭脳手に入れることができたのだった。

    ——————-


    チャーリーは頭が良くなることで、周りからかわれることがなくなった。
    賢くなるにつれて、彼らの会話を稚拙に感じるようになる。
    必然的に周囲との溝は深まり、分かり合える友人を失った彼は、強い孤独を感じるようになった。


    チャーリーは悩む。賢くなることをあれほど熱望していたのに、賢くなる前の方が自分は幸せだった。

    そして天才は知った。
    急速に吸収した知能がある一定の基準を超えたとき、それ以上の速さで脳は退化していく。
    この実験の最期に待ち受ける運命を、チャーリーは全て受け入れるほかなかった。


    ——————-


    彼の脳が退化していくにつれ、幼い知能のチャーリー・ゴードンのに戻っていくのが悲しい。
    最後のレポートは、これから自分を待ち受ける運命を、悟り綴った彼の気持ちが書かれている。

    なんとも切ない結末に胸が痛い。
    だが一本の映画のような、この小説の内容の濃さと充足感は、ほかの小説では決して味わえないものだった思う。

  • 余韻と色々考えさせられる本でした。
    元々、小学生の時に父がこの本泣けるから良いぞと勧められ読んでみましたがよく意味が飲み込めないまま読んでました苦笑
    最近SNSでちょっと話題になってたのて、再び読んでみたのですが、主人公の生き様がこうゆう事だったのかと知り、色んな感情が溢れました……途中で読み進めるのが辛くなる時がありました、特に回想シーン。。
    知らなければ良かった事沢山あるし、絶望に感じたり、嘲笑されたり、卑下される事もうんざりだし、もう過去の自分に戻りたくないと思う時もあるけれど、たった1人、2人、自分を支えてくれる人がいる、面倒見てくれる優しい人もいる、というところが救いなのかなと思いました。
    もっと色んな人に知って欲しい本です。

  • 自分にとって忘れられない一冊になりました。
    残酷で切なく読んでいて苦しくなる部分もありましたが、チャーリィに救われたような気がします。
    慈しみの心とは自身の苦しみを糧にしても、育まれるのかもしれません。
    心の奥底に彼のような優しさを持てるように生きていきたいと思いました。
    この先の人生で、きっと何度もこの作品の事を振り返るでしょう。

    「アルジャーノンに花束を」

    この本に出会えて本当に良かったです。

  • 高校時代、友達から借りて、途中から涙が止まらなくなって
    ページにぽたぽた涙を落とすまいと、不自然な姿勢で読み続け
    腕が筋肉痛になった、忘れられない本。

    ひらがなばかりで、しかも誤字脱字だらけの文章が
    どんどん洗練された文体になっていく前半が
    目の前の霧がすうっと晴れるように、
    あらゆるものから知識を吸収していく喜びにあふれているだけに、
    驚異的に高まったIQで自分の脳が急激に退化していくことを知ってからの
    ぽつぽつと誤字が増え始め、難しい言い回しも減って
    たどたどしいひらがなの短文に戻っていく、その過程が哀しい。。。

    知能が高くなることが本当に人間にとって幸福なのか
    医学はどこまで人間の脳に踏み込んでも許されるのか
    泣きながら考えさせられた1冊です。

    • まろんさん
      おお!涙と鼻水の同志よ!(←今日2回目)

      中学の頃におこづかいで買って読破したなんてすごい!さすがだなぁ!

      私も、映画観ました。
      私の場...
      おお!涙と鼻水の同志よ!(←今日2回目)

      中学の頃におこづかいで買って読破したなんてすごい!さすがだなぁ!

      私も、映画観ました。
      私の場合は本が先で、それから映画だったので、観る前は
      「どうしてタイトルが『アルジャーノンに花束を』じゃないんだろ~?いいタイトルなのに!」とひとりでぷりぷりしてましたが
      映画は、チャーリイの心の成長と恋を軸に描かれてたので、観たあと、泣きながら
      「タイトルにケチつけてごめんなさい~」と、心の中で謝りました。

      今でも、「海外の作品でおすすめの本は?」と訊かれると、真っ先にこの本を薦めます!
      2012/05/14
  • 想像以上におもしろかった。
    泣きそうになる。

  • 1年も経たない間のお話だけど、
    この主人公にとったらあまりにも短すぎる違った自分。
    あれで良かったのか、どうなのか・・・

    32歳になっても幼児の知能しかないチャーリーは、
    大学の研究の為に脳の手術を受ける。
    同じように手を加えられたネズミのアルジャーノンと一緒に、
    検査を受ける毎日。
    手術は成功してチャーリーは天才に変貌していく・・・
    急に難しい本でも理解出来るようになるし、
    いろんな国の言葉も理解出来るようになる。
    大学教授より優秀になっていってしまう・・・
    頭は良くなっても精神的なものはついて行けず、
    いつの間にか1人ぼっちに・・・
    女性を愛する事も覚えるが、重大な事に気付く。
    「人為的に誘発された知能は、その増大量に比例する速度で低下する」
    あっという間に優秀になった彼は、
    その記憶を忘れたくないと願いながら、
    日々昔の状態に戻っていってしまう。

    最後の数日間の記録は泣けます。

  • #日本SF読者クラブ 読んだことがなくても、名前ぐらいは知っている人が多いだろう。名作だからなあ。

  • 昔、翻訳書をサッと読んだ時は、それほど心に残りませんでした。それが、翻訳書を参考にしつつ原書を訳しながらじっくりと読んだ時に、主人公の心情が初めて心に迫ってきて、とてつもない物語だということがわかりました。小尾芙佐さんの翻訳も改めて素晴らしいものだと思いました。

    物語は経過報告という形で綴られる主人公の日記形式。
    知的障害のあるチャーリーに施された実験により、チャーリーは天才的な頭脳の持ち主となるが、同じ実験を受けたネズミのアルジャーノンにより、自分の行く末を予期することになる。

    パン屋に勤めていた時のチャーリーと天才になった後のチャーリー。
    どちらが幸せだったのか、という問いに答えるのは難しいかもしれません。
    パン屋に勤めていた頃は、同僚にバカにされていましたが、彼らを友達と言っていたチャーリー。
    それが、知能が高くなるにつれて、だんだんといろいろなことが理解できるようになり、苦しみも増えていきます。
    そして孤高の天才となってしまったチャーリー。

    最後はとても感動的でした。
    人間の知性や感情について、いろいろなことを考えさせられる本でした。

  • あらすじがあまりにしんどそう+実写ドラマのCMからメロドラマの印象がついていたことから今まで読んでいなかったのだけど、ふと気が向いて読んだ。
    甘ったるいお涙ものでは全くなく、感傷に溺れずに書かれた物語だった。
    それだけに、ラスト一行で胸の中で破裂するものが大きい。
    これはもう…!
    読み終わるとタイトルだけで胸が詰まる。
    気が向いて良かったなぁ…読んで良かった。

  • 読み終わった後は胸が締めつけられました。
    誰のせいでもなく知的障害者として生まれたチャーリーは純粋で人に愛されたくて、バカにされていることも気付かない。とても切なく思いました。
    家族の苦悩や追い詰められて行く様がリアルなことも、知能が高くなりすぎたことで人に劣等感を与えて孤独になっていくことも、読み手にとって終始辛い気持ちのまま物語が進みます。
    結末がわかっている以上、短い平和な時間も心に影を落とし、自ら旅立つまでの張り詰めた緊張感は夢中になります。
    知能や人格の変化をチャーリーの経過報告を通して巧みに表していているところが見事です。
    パン屋の仲間が最後にはチャーリーを守った場面に感動しました。 

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