グリフォンズ・ガーデン

著者 :
  • 早川書房
3.73
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本棚登録 : 45
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152035127

作品紹介・あらすじ

東京の大学で修士課程を終え、研究所に招かれて札幌にやってきた青年。彼が勤務する知能工学研究所は深い森のなかにあり、庭に何体ものグリフォンの彫刻があることからグリフォンズ・ガーデンと呼ばれている。そこにはその存在を公表されていないバイオ・コンピュータがあった。彼とともに東京を離れて札幌の大学院に進学した美しい恋人、彼女と暮らす札幌市内の2LDK、古い建物のなかの図書館…。「あなたの世界は完結しているのね」研究所の仲間に言われたひとことがきっかけになって、彼はそのバイオ・コンピュータのなかにひとつの世界を構築することを思いつく。そしてふた組の恋人たちの物語がはじまる…。

感想・レビュー・書評

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  •  羽田をたって寝入っていた。まもなく千歳空港に着陸する。窓際にすわっている由美子が、わりとすぐに寝息をたてていたわ。「ゆめを見ていた。天然色の夢だったよ」
    「どんなゆめ?」
    「どこかの博物館で、部屋全体が巨大な脳細胞の模型になっていて、そのなかにフーコーの振り子があるんだ。ドーム状の天井はプラネタリウムになっている」(中略)「ずっと現実だと思っていた」。

     ゆめのなかで会ったことも見たこともないひとに出会ったことがある?しかも、名前まで決まっている。ひどく現実的なんだ。過去においてインプットされていない記憶なんだ。
    由美子「わたしって、ゆめのなかで人の顔を見たことってないわ。これは誰々の映像だっていう情報があたえられるだけで、顔がでてきたことがないような気がする」
    ぼく「いや、違うと思うな、未来においてインプットされた記憶だ」
    由美子「未来とすでに並列することは、アリストテレスの原理の中の原理に反するわ」
    「未来と記憶だって、並列できない」

     機内から外に出ると、北国の春先の冷たい風にではなく、僕は震えていた。―イントロダクション

     本書には、目次がありません。構成は、佐藤究さんの「ANK」のような感じで、ジャンルは、脳サイエンスミステリーなんでしょうか?主人公は「ぼく」と二人の女性
     ぼくは、札幌のコンピュータ・サイエンスの研究機関(新世代コンピュータ技術開発機構(ICOT)がつくった研究施設)に研究員としてまねかれた。

     門番にいた女性は藤野奈緒助教授、「グリフォンズ・ガーデンにようこそ」と声をかけてきた。「ひとりで札幌に?」
     結婚はまだしていない「彼女はドクターコースですから」「言語学です。ぼくより、ずっと優秀ですけれど」研究施設には、グリフォンの石像がいたる所に設置されている。

     彼女と暮らす札幌市内の⒉ⅬⅮK 美しい恋人。彼はそのバイオコンピュータのなかにひとつの世界を構築することを思いつく。
     作品は、参考文献が多く著者の苦労が窺えます。落ちの面白さは、えっ!と思い読み直しました。
     読書は楽しい。

  • 2019.12.18
    読み始めてみたが、内容がからだに合わなさそうなので中途退場。
    未必のマクベスはおもしろかったんだけどなー。
    一生であと何冊読めるのかわからないのに興味が持てないものにしがみつくのはやめましてん

  • 最初と最後でぐるっとする仕掛け,結局のところ分かった様でわからないままだが,二組の恋人たちのクレバーな会話が,同じ様で違っていて,それが繰り返されているのか入れ子なのかあるいはパラレルなのか,,いろいろと考えるのが楽しかった.

  • 図書館で。
    未必のマクベスが面白かったので借りてみました。この人の書かれる主人公は皆こんな感じなのかなぁ?なんか主体性があるような無いような感じで自己主張が強くなくてタバコのみ。そして主人公にベタ惚れしている恋人がいる。

    胡蝶の夢というか、卵が先か鶏が先か、というようなお話だなぁと思いました。もしくはアリスの夢見ている王様(だったかな?)の話か。似たようなモチーフを思い悩む人は多いんだろうなぁ。そこに有機PCというのをねじ込んできたのは面白い。けど23進とかは正直よくわからなかった…

    なんとなく、ですが並行世界があるとしても自分という設定の人間は似たような選択をするのかなぁと思うと面白いなぁ。これも又実験小説みたいなお話だな、なんて思いながら読みました。

  • 著者が一橋大学商学部経済学科在学中に書いたゼミの卒業論文の一部という一風変わった出自に興味があって読んでみた。コンピュータの研究機関に赴任することになり、恋人を伴って北海道にやってきた「ぼく」。研究機関「グリフォンズ・ガーデン」においてバイオ素子を使ったコンピュータで作り上げた、もう1つの世界の「ぼく」と恋人。二組のカップルが紡ぎだす世界が交互に書かれる。それぞれの会話で語られる科学、コンピュータ、数字の会話は時に科学的であり、哲学的でもあり、分からないながらも不思議と魅力的で引き込まれる。2人の「ぼく」が見つめた「世界」。SF的な結末も、意外な一捻りがあって、予想以上に面白かった。

  • 新作が話題なので、先にこちらを読みたくなって図書館で借りてきました。

  • SFマガジンの2015年12月号の短篇「有機素子板の中」を読んで面白かったので、早瀬耕さんの本書を読みたくなった。読んで驚いたのが、これが卒論だということ。コンピュータに関する論文?ということだそう。退屈な文章の比喩にも使われる“論文”であるが、本書は人を楽しませる論文である。いや、小説である。内容はコンピュータの少し難しい概念が出てくる。私はコンピュータには詳しいので用語を理解できる分だけさらに楽しめた。コンピュータに詳しくない人は内容の理解に苦しむかもしれない。それでも、恐れることはない。リアルな世界とバーチャルな世界が並行して物語が進んでいることさえ分かれば楽しめるだろう。

    リアルとバーチャルで意識などがどのように生まれるのかなどを考えさせられる。そもそも自分の意識は自分のものなのだろうかと。本書を楽しんでいる自分は本書を与えられたのだろうか、自分の意思で読んでいるのだろうか、だんだん頭の中がどろどろになっていく感じがたまらない。人工知能のブームが来ている今(2016年)だからこそ、読んでおきたい作品である。なお、作品中に登場する音楽が懐かしい。個人的に好きなのはネーナとバングルスだ。執筆時に流行った楽曲が、リアリティーを添えている。

  • 某メディアの書評欄に、22年ぶりの新刊(2作目)が紹介されていた早瀬耕。 その22年前のデビュー作は読者を選ぶ。そんな気がした。 ということは、読破できた自分は選ばれたのだ、と自賛。フッフッフッ。 舞台は札幌の研究機関。北大と森林公園をミックスしたような。 札幌の電話番号として01138・・・・・・。 ん?これ、隣の市では?

  • 今読んだら感想が変わってしまいそうなんだけれど……コンピューターの話はわからないなりにすごくおもしろかったです。ふたつの世界で進行するふたりの物語、スターウォーズの話題、見たいものしか見ない話とか、小さなエピソードも印象的だったし、雰囲気もとても好きで、当時すごく感銘を受けた本。

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