マークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
3.85
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本棚登録 : 1502
感想 : 208
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152035530

感想・レビュー・書評

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  • 硬質で、細かい文章と重厚な展開すべてがきちんとまとまっていた。夢中で読んだ。警察内部の軋轢や、犯人の思い。ところどころでいらっとさせられるけれど、それもそれで。メインの登場人物たちが男くさくて、それもまたこの雰囲気にプラスされていて、いい。ちょっと胸やけもしたけれど、たぶんそれもこの本の魅力なのでしょう。
    最後あたりの犯人の行動には、心を打つものがあった。純粋すぎたんだろうなあ、きっと。生きてきた中でのはじめての希望。なんだかすごく胸が苦しくなった。最終的に、ひとごろしでもなんだか憎めない犯人だったなあ。いっちゃん悪いのはあっちなんだと思う。でも、いろんな要因が絡み合ってこの展開を生み出したっていうこともある。最後に犯人は光を見れたのかなあ。いっしょに見たいひととは見れなかったとか、さびしすぎる。
    今度は1日かけて一気に読破しようと思える作品だった。じゃないと、おもしろさが伝わってこないと思うんだ。

    (441P)

  • 昔の松本清張やら横溝正史の時代に比べたら、今は犯人や刑事の精神に重きが置かれるのだと思う。その結果、水沢があのような造形になるのだが。とにかく、熱量と緻密っぽさで一気に読ませてくれる名作

  • 私は改稿された文庫版より単行本の方が好き
    単行本では水沢の真知子への想いの深さが拙い言葉の端々や行動から感じられ、より悲しみと苦痛が心を覆う

    マークス(水沢裕之)は最期安らかに逝ったのかな
    雪山の頂で亡くなっていたマークスの死があまりに悲しく切なかった
    佐野の最後の叫びは読者の叫びでもあった

    緻密で濃厚な警察小説の傑作と言われる本作は、泥臭い人間の業と山への畏怖と険しくも神々しい描写の対比が圧巻だった


    余談だが合田の義兄の加納は合田に身内以上の愛情を持ってるよね
    ブロマンス的な
    合田も無意識下では同じように感じているのではないかなぁ
    「照柿」では合田と加納のその後が読めるので楽しみ

  • 久しぶりの高村薫作品。この人はずっと読んでいたのだが、何故かこのあたりから読まなくなってしまった。
    この人の緻密で計算された文章が、ちょっと苦手だったのかもしれない。

    これを読み終わってまっさきに思い出したのは、警察小説の名作「87分署シリーズ」だ。
    あちらはアイソラという架空の都市を舞台にしているが、その実際の舞台がニューヨークという世界一の都市であることは明白だ。
    そしてアイソラで日々、犯罪者と戦っているのが、87分署の面々だ。市警の殺人課刑事との縄張り争いなども描かれているが、それよりも刑事ひとりひとりの人間を描き、犯罪者の心を描いている、名シリーズだ。
    それに、とてもよく似ていると思った。


    東京という、日本一の都市を舞台にした刑事たちと犯罪者との物語。合田という男を主人公にピックアップしているが、合田だけでなく他の刑事たちの人となりもさりげなく見事に描ききっている。かっこいいヒーローはいない。そこにいるのは、汗にまみれ、泥臭い普通の男たちだ。

    むしろ、奇妙なまでの透明感を持って描かれている「マークス」のほうが、ヒーロー的なかっこよさを持っている。
    時代背景もあり、病的で悲惨な人生を背負っている彼は、子供のような純粋さと残忍さを兼ね備えている。そんな彼の全てを受け入れ、彼を癒し守る存在が、真知子という看護婦だ。彼女は、ヒロインがひとりも存在しないこの物語の中で、天使のような優しさをもって描かれている。
    彼女がいなかったら、この物語はどうしようもなく救いようがない物語になっていただろうし、マークスの魅力も半減していただろう。
    「マークス」という名前の真相、「マークスの山」というタイトルに込められた意味がわかる、ラストシーンへ向けては、重厚な文章であるにもかかわらず、疾走感に溢れている。
    ラストシーンは、真っ白な光と、静謐なまでの山の荘厳な姿が描かれている。その山に、マークスは何を求めていたのだろう。それを考えると、胸が苦しくなる。
    そして彼の思いを受け止めた合田の決意がいい。さらにその合田の決意を、懐深く受け止める、合田の義兄もまたいい。男を描くというのは、こういうことをいうのだろう。

    ちなみに、この人は最初に出たものから、文庫に収録される時に大幅に変更するというので有名。なんだったか、犯人が変わっているのがあるという噂だ。
    これも、読み終わった後に文庫版を手にして、ちょっと読んでみたが、かなり変わっていて笑ってしまった。
    ラストシーンは、断然、こちらのハードカバー版のほうが、いい。

  •  なぜか一作品も読んでないのに好きな作家さんになるという予感、そして実際未読の単行本2冊をお気に入り作品ばかりの棚に並べていましたが、勘はやっぱり当たるのです。

    読み終えるのにけっこう時間がかかりました。

    読み応えがあり過ぎてついていくのに必死でした。というか正確には完全にはついていけてなかったと思います。情報量も多く、読み流していい文章も一文もありません。

    凄いでも足らず満足でも足りません。もの凄い作品であり大満足です。読解力、想像力、集中力をもっとつけてから高村作品にまたチャレンジしたいと思います。

    あぁ本当に気持ちよく頭が疲れました~充実充実の日々をありがとうございました。

    昨年、文庫版が発売された「レディー・ジョーカー」上中下巻

    買って損はない!と、高村作品は「マークスの山」しかまだ読んでない私が無責任に保証します!

  • 昔のいわゆる刑事(デカ)、カッコいいね。

  • 圧倒

  • 内容
    昭和51年南アルプスで播かれた犯罪の種は16年後、東京で連続殺人として開花した―精神に〈暗い山〉を抱える殺人者マークスが跳ぶ。元組員、高級官僚、そしてまた…。謎の凶器で惨殺される被害者。バラバラの被害者を結ぶ糸は?マークスが握る秘密とは?捜査妨害の圧力に抗しながら、冷血の殺人者を追いつめる警視庁捜査第一課七係合田刑事らの活躍を圧倒的にリアルに描き切る本格的警察小説の誕生。

    マークスの理不尽さとラストの美しさが忘れられない。

  • 同じ大学出身のエリート5人が昔、山で犯した罪をネタに、両親を自殺で失った少年が脅迫していくストーリー。

    犯人は最初から確定しているが、複雑な登場人物の模式図が緻密に解き明かされていく。
    人物の描写は緻密で、かなり濃厚なストーリーとなっている。

    スピード感はないが、じわじわと謎が解けていくおもしろさがある。

    読後感は少々疲れたが、なかなか好きな作家さんだ。

  • 髙村さんの文章は硬いとよく聞いてたのでいつも読むのに躊躇してたけど、なんとかやっと読むことができました。じっくりと前半を読み進めれば、後半から一気に話の展開に引き込まれページが止まらなくなりました。最後の場面はとっても印象に残ります。

    色々気になる部分があるので文庫版の方も読むべきなのかな?両方読んで補完するものなのか。機会があったら文庫の方も読んでみたいです。

著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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