ふたりの証拠 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房
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本棚登録 : 484
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152077295

作品紹介・あらすじ

戦争は終わった。だが、見るも美しい青年に成長した主人公の闘いはこれからだった…。前作を凌ぐ驚天動地の続篇、ついに登場。

感想・レビュー・書評

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  • 「悪童日記」の続編。ふたごの「ぼくら」の別離後、おばあちゃんの家に戻ったリュカ十五歳〜二十二、三歳の物語。

    すっかりさびれてしまった町。一人きりになったリュカがどう生きたか。町の人々との交流が描かれる。リュカは、いずれ帰ってくるはずのクラウスのために日記を書き続けている。悪童日記同様、ラストは意外な展開で幕を閉じる。

    三部作のなかで一番感情移入できた。
    当たり前のように思っていた自己同一性の証明、実在の証拠はもろくてあやふやなものなのかもしれない。

  • アゴタのフランス語は彼女が後から習得したもので母語ではないから、このような無機的な文体になるのかと。
    しかし「ブツ切れ」の記憶、戦争という顔のない恐怖、色彩を欠いた乾いた世界を表すのに、この文体をとる他になにが成功するのだろう。これは『悪童日記』から引き継がれた特徴。


    『悪童日記』と違うのは、あれが双頭の一人による、世界についての独白といえるのに対し、『ふたりの証拠』では、二人であろうと一人であろうとだれも存在しておらず、もしくは存在するとしてもある影法師で、それが何人かの登場人物に付き纏って、それぞれの人物の性や苦悩を浮き彫りにするという点。


    『悪童日記』の双子、その片割れであるリュカが主人公である『ふたりの証拠』。前者が「実在」、後者が「虚構」をの形をとることにより、戦争のリアリティを突きつける。
    「書く」行為についての言及もそこかしこにある。書く=生の痕跡、と。

    「何も書かなければ、人は無為に生きたことになる」。

  • 「悪童日記」よりもこちらの方がまだ、登場人物に感情移入できて一気に読めた。
    今回も最後の1ページで、えっどういうこと⁉︎って次を読まずにいられなくなるのは流石だと思った。

  • 少なくとも3回目、もしかすると4回目の再読かもしれない。

    最後の方の展開はけっこう急だけど、期待を裏切らずとてもいい。

  • 相変わらず、説明の一切ない無駄のない文章。
    人物の心理描写は全くないのに、それぞれがすごく語るから何となく伝わるものがある。
    それにしても最終章。謎すぎて一刻も早く続きが読みたい。
    第一作を読んだときは、こんな後味の悪い本は他にはないと思ったから、次作までにインターバルをとらないと立ち直れそうになかったのに。
    すごい名作に出会ってしまった。完結まで付き合うしかない。
    ほぼ一日で一気読み。こんな本にはなかなかお目にかかれない。

  • 再読、確か三度目。
    何度読んでも新鮮。
    終わったはずの戦争の影は消えることなく町に残り、その中で縫い合わされていくキルトのようなエピソードの集合体から目が離せない。
    ラストは圧巻。

  • アゴタ・クリストフ追悼読書の1。悪童日記の​続編。

    表裏一体だった双子が別れ別れになって、一人の人間として認識され、固有名で呼ばれる。一人になったからなのか、生活に余裕ができたからなのか、他者のための行為もちらほら見えるけど、それが本当に他人のためか、それとも自分のためか、どちらなのかはっきりしない。人間らしい感情も。

    だから、7章まではいろいろな自分なりの納得が積み重なってきたのに、最後の最後でとんでもない謎の中に投げ込まれてしまった。。気になる。めちゃめちゃ気になる。「大きな帳面」が彼らの存在の「証拠」ではないとしたら、そこに隠れている「嘘」ってなに・・・?

    更に​続編「第三の嘘」に続く。

  • 悪童物語続編。書き口は多少変わってるけど。双子健在。そんな風に立ち振舞えたらかっこいい。けどそんな本人は寂しくて死にそうになってる。深い。重たい背景が重た過ぎず、アゴタクリストフ万歳!数時間で一気に読みました。

  • 『悪童日記』の続編。袂を分かったふたりのその後について。

  • 3.84/461
    悪童日記 三部作の二作目(「悪童日記」→「ふたりの証拠」→「第三の嘘」)

    内容(「BOOK」データベースより)
    『戦争は終わった。だが、見るも美しい青年に成長した主人公の闘いはこれからだった…。前作を凌ぐ驚天動地の続篇、ついに登場。』

    冒頭
    『祖母の家に戻ると、リュカ(LUCAS)は、庭木戸のそばの木蔭に寝そべった。彼は待っているのだ。一台の軍用ジープが、国境警備兵の詰所の前に止まる。兵士たちが降り、カムフラージュ用の幌に包んだ人体を、地面に下ろす。伍長が詰所から出てきて、身ぶりで指示すると、兵士たちが幌を取り払う。伍長が、ピューと口笛を吹く。』


    原書名:『La Preuve』(英語版:『The Proof』)
    著者:アゴタ・クリストフ (Ágota Kristóf)
    訳者:堀 茂樹
    出版社 ‏: ‎早川書房
    単行本 ‏: ‎238ページ
    ISBN : ‎9784152077295

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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