死の泉 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
3.81
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本棚登録 : 364
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152081148

作品紹介・あらすじ

第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材と騙りとを孕んだ、絢爛たる物語文学の極み。

感想・レビュー・書評

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  • ドイツ民族の純血性の確保と人口増加を目的に設立されたSS(ナチス親衛隊)の機関<レーべンスボルン(生命の泉協会)>。その施設に身をおく母親と子どもたちが、喧騒と狂気の世界に翻弄されていく〝この世の地獄〟が描かれた重厚、絢爛たる物語。アウシュビッツのメンゲレ医師(死の選別人)をライバルと誇示するバイエルン州・レ-ベンスボルンの所長(クラウス)の生体実験、ヒトラ-別荘地のベルヒテスガーデンと地下岩塩坑道、古城に眠る略奪名画、ナチスの狂気が子供たちにもたらした不条理・・・深い疵の毒に浸されたような読後感。

  • これでもかのナチネタ大盛りマシマシで面白かった。巻末の参考文献も興味深い。

  • レーベンスボルンで、カストラートで、マッドサイエンティストなお話。
    また、知らない世界を知っちゃたなという感じ。
    最後の最後になるまで全く違和感なかったのに、ラストに明かされた真実には驚きました。
    全てがクラウス一人に関わったせいで起きてるのが逆にすごい。マッドサイエンティスト怖い…

  • 二つの扉とあとがきとは一体何案ですかを思いつづ読んだら… 皆川先生の物語の構成力に私の最大限の敬意を!

  • 若い未婚の母と狂気の医者、
    己を奪われた幼い少年達、
    天使の歌声、美しい双子、
    作られた美

    第二次世界大戦中、そして戦後のドイツを舞台に繰り広げられる重厚な物語。最後に見えてくる衝撃の真実。

    戦禍の中で絡まりあった糸が、戦後、混沌とした世界の中で繋がっていく様は秀逸で、あっという間に惹きつけられてしまいました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      皆川博子のドロドロ感が好きです。私のお薦めは「聖餐城」かな。。。
      皆川博子のドロドロ感が好きです。私のお薦めは「聖餐城」かな。。。
      2012/04/02
  • 読後放心状態からなかなか立ち直れない。衝撃的な展開で後半読みながら息ができなかったし、後書きでさらに鳥肌が止まらなかった。フランツがやるせなさすぎる、、救いがなさすぎて、、、
    あの悪夢のような世界観から抜け出したいのに抜け出せなくて他の本がまだ読めない。やはり皆川博子は天才。

  • 久々に再読しましたが、今回もこの世界に絡め取られました。面白かったです。
    ギュンター・フォン・フュルステンベルク著、野上晶訳の「死の泉」なのですが、あとがきまで作り込んであって最後まで翻弄されます。
    第二次大戦中のドイツ、ナチズムと選民思想の酷さと、クラウスをはじめとする研究者たちの狂った人体実験…人体を結合する事で生き永らえるなんて。「我が血は、汝が血。汝が血は、我が血。我が肉は、汝が肉。汝が肉は、我が肉。」…
    カストラートは歌声を聴いたことが無いので気になります。
    真実にも驚かされました。フランツ、エーリヒ、ミヒャエル…どこまでも翻弄された生でした。彼らのその後が幸せなものでありますようにと思いますが、ひとりはきっと…そして、あとがきでまた心配になりました。
    崩壊が美しいラストシーンです。
    皆川作品は昏く重厚な世界観に圧倒されます。わたしの言葉では全く足りません。。

  • 初皆川博子氏。第2次大戦時、
    戦後のドイツを舞台とした耽美で幻想的でもあり、
    人間の業・哀しみ慈しみを描いた壮大な物語。
    本当にドイツ作家の翻訳本のようで騙される。
    久々に、全てが美しいと感じながら読み終えた。
    畸形も人々の醜い本質も汚物のような出来事も。
    皆川博子氏の他の作品も早く読みたい、酔いしれたい。
    魅惑溢れる世界観に囚われてみたい。

  • 第二次世界大戦中、実在したナチの施設〈レーベンスボルン〉で育てられたフランツとエーリヒはポーランドで合唱隊だった為、ドクター・クラウス・ヴィッセルマンに気に入られ、養子に。入院中だったマルガレーテは妻となり、私生児ミヒャエルと共に家族となる。
    が、クラウスの狂気は止まらず…

    こちらはナチスのやばいマッドサイエンティストへの復讐の話。
    実はエーリヒは、ミヒャエルは……、クラウスの本当の息子は……、
    そしてあとがきにかえて、で書かれている最後、本当の真実は……?

    面白かったです。二段組400頁超の長編ですが、ばりばり読み終わっちゃいました。読みやすい。
    クラウスはまあ常に狂ってるんですが、欲しいものは全部容赦なく手に入れていく系なんですが、ギューターを弟と言い出して軟禁する所が私的ツボでした。
    ゲルトとヘルムートかませ切ねえ

    どんな形であれ、子どもを搾取するので戦争は絶対悪である。

  • 素晴らしすぎます。なんという狂気、偏愛…。途中で疑問だった文章も、最後に全て納得できました。ああ、フランツが何故あそこまで、クラウスに憎悪を募らせたのかも…。それにしても、マルガレ―テは、本当に魅力的な女性だったのでしょう。ラストは…悲しいですが、一緒に逝けて二人は幸せだったのでしょうか。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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