ムハマド・ユヌス自伝: 貧困なき世界をめざす銀行家

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152081896

作品紹介・あらすじ

貧しい人々に無担保でわずかな金を融資し、それを元手として小さなビジネスを開始させ、経済的に自立させる-ユヌスが編み出したこの手法は「マイクロクレジット」と呼ばれ、今やアメリカやフランスをはじめ世界約60カ国で実践され、大きな成果をあげている。ユヌスは語る。「貧困は、私たちが生きている間に地上からなくすことができる」と。本書は、その活動に対して世界中から注目と賞賛を集めるノーベル平和賞の有力候補が、自らの半生と信念を語った初の自伝である。

感想・レビュー・書評

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  • 2006年ノーベル平和賞を受賞した銀行家の自伝。

    貧困に苦しんでいる人々に無償援助するのではなく、
    無担保少額融資することで自立させ、世界中の貧困層を救った。

    内容は濃く、分厚い本ですが、文体が読みやすく、
    著者の独自のユーモアが随所にちりばめられてあるので、一気に読めます。

    おすすめです。

  • 今日一気に読み上げました。
    いつか読もうと思ってた本です。

    「単純な答えを複雑なものにしているのは私たちの傲慢さだけ」
    今ある制度を前提に考えることが習慣になってしまってる自分にとってはガツンとくる言葉でした。
    借入も収入認定する生活保護とは相容れないなと思ったのですがその発想が単純なことを複雑にしてるんやなと
    自立のために借入してるなら公に認められる借入と考えたら良いんですよね
    マイクロクレジットは日本にもあり得るのかなと思いました。

    「貧困とは人間の心と身体を麻痺させてしまう病気」
    自分が貧困のループにはまり込んでしまうとそこから逃れることを諦めたり生活保護で安心してしまうとそこから出れなくなったり
    麻痺するっで本質やなと思います。

    「私たちが貧しい人々すべてを対象とせず個人の質によって選別しているのは不公平だと批判する人もいる」
    マイクロクレジットの特徴は誰にでも貸すのではなくて借り手を選別するというところやなと思います。
    本気が見えないと貸さない。
    ここは困窮の理由を問わない生活保護とは違うところです。

    正直なところ生活保護制度は自立という人のやる気を見せる場面で本当に役だってるのか疑問のある制度です。
    やっぱり僕はベーシックインカムの方に分があるように思います。

  • もうそろそろ読み終わるが、本書は単純な貧困問題だけでなく、社会システムのあり方、個々人の人間の幸せとは、そして自分の人生自身についても深く考えざるをえない傑作だ。

    決して施しではない。施しはむしろマイナス。ローンという自己責任で完結するからこそ生まれるもの。

    生きる環境を整える、そしてローンの債務者に生きる意欲や自信をつけさせ、そして生きる希望と幸せを債務者自身が実感し、見出していく姿。

    自分の力で生きることが、世の中の役に立っている、誰かの役に立っていることに直結している。お客様からお金をもらうということはそういうことだ。お客様がお金を払って自分が用意したモノ・サービスを受けるということは、お金を払うだけの価値をお客様が見出したからこそ。

    つまり人(お客様でも雇用主からでもいい)からお金をもらうということはそういうもの。人間が幸せになるとは、人の役に立ち、それが実感できることではないか。自分が生きる社会の中で自分の存在価値が実感できることだと私は思う。

    本書を読みながら、マイクロクレジットの広がりをみると(発展途上国も先進国も)、これは人類共通の価値観なのかもしれないと、自分が半世紀近く生きてきて初めて知った。

    2段書きで読む量は大量ですが、マイクロクレジットに興味がなくても、是非読むに値する本だと思います。

  • グラミン銀行の創始者で有名なムハマド ユヌス氏 の自伝。
    銀行なのにノーベル平和賞を取れるグラミン銀行を立ち上げただけでも凄いのに、バングラデシュの独立のため亡命政権の立役者の一人だったりと予想を超える華麗すぎる経歴の方でした。

    自伝の中で底辺で生活している人たちへの無償の援助は無駄である。なぜなら援助している人の満足だけでもらった人が一日生き延びる効果しか無いという点では説得力のある実例を何度も出していた。日本でもいろいろ話題になるODAについても国を長い列車に例えてODAが先頭部分で引っ張っても国の上位の人たちへの直接支援になってしまい底辺の人の部分には計測可能な形で効果が出てこない点を疑問として挙げていました。

    グラミン銀行(マイクロファイナンス)の仕組みについては自伝より詳しい本がたくさん出ているようなので気にいった箇所をメモ。経済投資する先の相手を明確にする(底辺から何%のひとまでに投資する)。予想リターンを明確にする(所得の伸びの目標を何%にするか)。この辺は個人の目標設定と共通する項目も多いが、経済投資では支援したい人より情報を持っている上位の層が潤ってしまう。

    グラミン銀行の仕組みを理論的に高めただけではバングラデシュ全域だけでなく世界中にグラミンの仕組みを広げることは難しい。ユヌス氏が行った政治的な駆け引きの記述も多くあった。レベルが高すぎて参考にならない気もするが、譲っていいこと行けないことについての説明も丁寧に書かれていた。

    この本を見るとグラミン銀行(マイクロファイナンス)が魔法のツールでこれをやっとけばOKという気持ちにってしまったので読み終わった後、騙されては行けないと課題があるのかネットで簡単に調べてもさすがに魔法のツールではないが高金利とか多重債務などの運用的な問題くらいで現在でも貧困緩和と事業収益の両方を追求する理想的なワークフローとして認識されているようだ。

  • ■公式よりもコンセプトが重要。
    事業も同じかも。そういう前振りだったのか。グラミンによる貧困撲滅の話に終始していて、方法論はほとんど語られていなかったかも。
    ■行動力
    コンセプトの話と被るかもだが、やるべきことを決めてやり方は後で考えるという行動指針が一貫している。バングラデシュ独立前の支援団体を作るときもこの行動指針だった。
    世界銀行職員やコンサルタントへの批判もこの行動指針から発生していると考えると筋が通る。動きもせんと本で読んだだけの理論ばっかり振りかざしやがって、、、みたいな。
    ■客との接点
    効率の話ではなく、とにかく向き合う。ビジネスとして成立するかどこまで考えてたか不明だが、とにかく客にあっていたっぽい。
    ■事業アイデアはシンプルに
    難しく考える必要は一切ない。花屋で花を売る、美味しいソースを作って売る、ただそれだけ。やれ!的な。経済学者の誤りとして、労働を雇用者視点でしか考えていないという指摘が面白かった。日本人だけの話かと思っていたが、少なくとも90年代後半のバングラデシュでも同じ状態だったらしい、

  • グラミン銀行を創設し、貧困無き世界を目指した企業家、そしてバンカーの自伝。大人数家族に生まれ、母が精神病で病む中、家族で協力し、そして父のリードもあって貧しくも豊かに暮らしていた幼少期。1971年にバングラディッシュが独立戦争に勝利、荒廃した国となって何とか独立したバングラを再建しようと誓っていた。
    コーランの教えで女性は一人で外出できない。グラミン銀行は女性をターゲットにした。また、信頼を軸にすることで、クレジットをとる=相手を信用できるという構図で融資システムを組んだことも特筆すべきポイントだろう。銀行がやってきたことの逆をやったという言葉がそれを物語る。顧客が銀行のオフィスに来る、グラミンは顧客の元へいく。貸借対照表と損益計算書で信用力を分析する銀行と、どこまで貧しいかを説明するだけのグラミン。働くことを始めてみる、その後押しを、ちょっとだけの融資でやっていく。誇り高きバンカーの夢。

  • ”<一言>
    ---
    T:
    P:
    O:
    ---
    <読書メモ>”

  • この人はビジネスマンなのだと思う。

  • 「2050年、貧困が見られる場所は<貧困博物館>だけになる」

    先月バングラデシュ人で初めてノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏の言葉。彼は貧困なき世界を目指して、貧困者向けに無担保融資を行うグラミン銀行を創設した。

    この本は彼の自伝だが、それは=グラミン銀行の歴史でもある。
    グラミン銀行がどのような経緯で作られ、どのような道を辿ってきたのかがエピソードを交えて書かれているのでとてもわかりやすく、現実味がある。

    ユヌス氏が経済学の理論に夢中になり、大学教授をしていた1974年、バングラデシュは大飢饉に見舞われた。あらゆる経済問題を解決してくれるものだと信じていたエレガントな経済理論と目の前で餓死していく人々のギャップに虚しさを感じたという。

    彼は、世界の開発援助機関と仕事をしているが、それらの援助機関に対してもはっきりと不満を述べる。
    彼の言い分、実際にあった援助業界の裏話を読み、援助機関・開発コンサルタントとそして政府によって紙面上で決定される開発プロジェクトがいかに無駄であるかということを説得させられてしまった。

    彼の視点は援助機関というマクロなレベルにとどまってはいない。人として、生活していく上でのミクロな視点も忘れていない。
    それは、開発途上国物に行って物乞いに取り囲まれたことがある人は必ず直面する、「物乞いの人々・子どもたちにお金を渡すかどうか」という葛藤。

    お金をあげることで彼らの依存性を高めてしまうことになるし、労働意欲、自活意欲を奪い去ってしまうことになるとあたしは考える。
    でも、「この10タカでこの人たちが一食を食べられるなら・・・10タカくらい・・・」とも思う。

    ユヌス氏も常にこの葛藤を抱えていると述べている。
    でも、彼はお金をあげることはしないそう。
    それは、「私たちはお金をあげることで現実の問題から私たち自身を遠ざけているだけ」というのが彼の考えだから。
    私たちにとってはほんのわずかな額をあげることで、善い行いをしたと思っていい気分になるのは、本当は問題を解決しようとする代わりにお金を放りなげて歩き去ってしまっていることで、何の解決にもつながらない。

    ユヌス氏はこれまでの理論でガチガチに固められた経済学にこだわる経済学者とは違う。マイクロクレジットという銀行システムを通して、目の前の貧困を削減することに挑戦する実務家だ。

    マイクロクレジットが実際に貧困削減にどのくらい効果的なのかは議論の余地があるところだが、彼の信念・方向性を支持したい。

    貧困博物館の1日でも早いオープンを望む。

  • 大学新入生に薦める101冊の本 新版 (岩波書店/2009) で気になった本。

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ムハマド・ユヌスの作品

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