水辺で起きた大進化

  • 早川書房
4.23
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152082596

作品紹介・あらすじ

かつて水辺では、"魚が海から陸へあがる"という進化史上の一大事件が起き、さらに陸にあがった生物のなかから、クジラのように水中生活へと戻っていくものが出現している。この2つの"大進化"がなぜ、どのようにして起こったのかという謎が、進化生物学者たちを長年にわたって悩ませてきた。しかし、近年の分子生物学などにおける長足の進歩が、状況を一新した。魚のひれが指のついた手へと変わっていった経緯や、クジラが何から進化したのかという類縁関係が最先端の研究によって解明され、驚くべき真相が明かされるにいたったのだ。気鋭の科学ジャーナリストが、進化学草創期のエピソードから、今日の研究現場の臨場感あふれるレポートまで、興味のつきないトピックをまじえて綴る、水辺をめぐる変身物語。古生物の在りし日の姿を再現したイラストも多数収録。

感想・レビュー・書評

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  • 魚はいかにして鰓呼吸を手に入れ、肺魚はどう鰓呼吸と肺呼吸を使い分け、そして陸棲生物はどう肺呼吸を進化させたのか。イルカやクジラはなぜ再び水中へ戻り、失った『ヒレ』を得たのか。
    進化の中でも、特に不思議なこれらの謎を解明する系統図作成への研究が本書のテーマです。

    リチャード・オーエン卿などによる化石による研究が多くの誤解を招いてきた歴史と、アラン・チューリングの多大な貢献による新たな分子生物学の潮流。イルカの体の機構には驚かされます。

    進化の歴史のダイナミックさを実感するうえでは、今まで読んだ中でも一番かもしれません。また何度も読み返してみたい、と思います。

  • At the Water’s Edge:
    Macroevolution and the Transformation of Life ―
    http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/117224.html

  • 本のタイトルの通り、水辺で起きた生物の進化にフォーカスを当てた一冊。つまり、魚が上陸して両生類に変身した進化と陸上生活に適応した哺乳類が再び水中に戻りクジラに変身したのかを扱っている。

    後半のクジラの進化に関しては本書の発行当時(2000年)でもはっきりとしたことは言えず、それから10年経った今でもその進化についてはわかっていないところが多いんじゃないかな。

    ただ、一旦クジラの形になってからあの巨大な体を持つようになったのかは本書を読めば理解できると思う。

  • アメリカ人フリー科学ジャーナリスト、カール・ジンマーによる進化を巡る科学エッセイ。

    生物の進化が辿ったあるひとつの道筋、すなわち魚類から陸上脊椎動物へと進化し、海から陸へと上がっていった過程と、その陸上脊椎動物が海棲哺乳類として再び海へと帰っていった過程を再現しながら、最新の学説を紹介していく。

    科学者へのインタビュー(たいていは化石の発掘にまつわるエピソード)と進化に関するトピックスが混在するスタイルをとっているため、慣れるまではいささか読みづらい。
    本著が処女作であるというから、長編科学エッセイを書き下ろすことに不慣れであったかもしれない。

    日本では、進化論は学校で教えられるものなので、魚のひれが陸上動物の四肢に対応していることは常識だろう。
    だが、「どうやって」ヒレが脚になったか、あるいは最初に脚を持った動物は「何」だったのか、謎に包まれていることは多い。

    印象的なのは肉鰭をもった魚類が、その時点では陸上や波打ち際でなく、ラグーンに生息していたらしいことだ。
    また、ダーウィンが考えたように、うきぶくろが肺に直接進化したのではないらしいということも興味深い。

    もちろん、ここで彼が最新の学説として紹介するものが「正解」ではないかもしれない。
    進化を巡る科学者たちの戦いは今もなお続いているのである。


    文中、スティーヴン・ジェイ・グールドの名が幾度か登場する。
    私が進化論や古生物学に興味を持ったのは、彼の著作『ダーウィン以来』がきっかけであった。
    読みやすく、かつ生物(いまも生きているものも、もう絶滅してしまったものも含めて)に対する愛情深い科学エッセイは、何度読んでも面白い。
    グールドは2002年にがんのため亡くなった。
    その著作は生物学と古生物学および進化論を、埃の被った知の骨董品から、大衆に馴染みのある知的な楽しみの一つへと「進化」させた。

    本著作者ジンマーはまだ40代、グールドのような読み応えのある科学エッセイを、これからも提供してくれることを期待している。

  • 序章 生命のねじれ
    第1章 失われた化石を求めて
    第2章 無限の空気中へ
    第3章 手の作り方
    第4章 ダーウィンの苗木
    第5章 海に躍る
    第6章 クジラの方程式
    第7章 テチス海のほとり
    第8章 歩行から遊泳へ
    第9章 出航
    第10章 大進化の道

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著者プロフィール

アメリカを代表するサイエンスライター、『ニューヨーク・タイムズ』紙の科学コラムニスト。
著書はスティーヴン・ジェイ・グールド賞をはじめ、数々の賞を受賞している。新型コロナウイルスの世界的流行について報道する『ニューヨーク・タイムズ』紙のチームに加わり、その記事は2021年のピュリッツァー賞(公益部門)を受賞した。イェール大学分子生物物理学・生化学科の客員教授も務めている。彼の知るかぎり、条虫の種と小惑星の両方にその名がついたただひとりの著作家でもある。
『カラー図解 進化の教科書』(共著、講談社)、『進化 生命のたどる道』(岩波書店)、『ウイルス・プラネット』(飛鳥新社)など著書多数。

「2023年 『「生きている」とはどういうことか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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