儚い光 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

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制作 : Anne Michaels  黒原 敏行 
  • 早川書房 (2000年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152083067

儚い光 (ハヤカワ・ノヴェルズ)の感想・レビュー・書評

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  • 安易に感動したなどという言葉で、胸に渦巻くこの思いを片付けてしまってよいのだろうか。しかしともかく、読んでよかったと思わせてくれる本だった。詩的で豊穣な文体が読者である私達をも物語の中へと誘い込み、最後の頁へ向け物語は収束し、解放されてゆく。誰かが死んだことは、その存在が消えることではない。私達がその人を憶えている限り、その人は確かに各人の記憶の中で生き続けるのだ。私の思いはこれに尽きる。そして読後に残るのはこの世界を縁取る、言葉への希望だ。これこそが物語の可能性なのだろう。私はそう信じたい。

  • 翻訳者の方が、素晴らしいと思います。文章が詩的で美しいです。また、時間をかけて、ゆっくりと読み返してみたいです。

  • ---時は盲目の導き手である---

    本書、アン・マイクルズの『儚い光』の書き出しである。

    先に、作者のことを書いてしまうと、作者のアン・マイクルズは、かなりキャリアのある詩人である。
    本書は、アン・マイクルズの初の長編小説となる。

    この本はやはり詩人の書いた書物である。日本語に翻訳されてもこの小説に綴られている言葉は美しく詩的だ。

    ナチの侵略により、両親は殺され、姉は行方不明になった7歳のユダヤ人少年ヤーコプは、奇跡的に助かり、ポーランドで遺跡の発掘をしていたギリシア人の地質学者アトスに助けられる。

    アトスは自分の暮らすギリシアの小島にヤーコプを連れ帰り、小さな胸に大きな傷を持つヤーコプに惜しみない愛情をかけて育ててゆく。

    この小説は一部と二部にわかれている。

    一部は、ホロコーストの記憶を払拭できず、在りし日の姉や家族の姿や悪夢に悩まされながらも、アトスに包まれ、学びながら、幼いが優しい知的な青年に成長してゆく過程。

    二部は、事故で亡くなったヤーコプの詩を愛する若者が語り手となる。
    ヤーコプがアトスと過ごしたギリシアの家を尋ねて手記を発見し、彼の記憶は若者に引き継がれる。

    この本には、悲しみやせつなさや優しさが充満しており、ページをめくるたびに、それらの感情が心に染渡ってくるような気がする。

    ナチに蹂躙されたポーランドの冷たく暗い灰色の風景。
    海に囲まれ空に近い丘で暮らしたギリシアの小島。
    青年時代を過ごし、友を得、アトスを失い、一度目の結婚をしたカナダ。
    そしてふたたびギリシアへ。

    冒頭の ---時は盲目の導き手である--- には続きがある。

    ---時は盲目の導き手である・・・・・。
    死者のもとにとどまることは、彼らを打ち捨てておくことだ・・・・・。
    このようにして人は解かれてしまうのだ・・・・・名前を呼ぶまえに口を閉ざしてしまう愛によって・・・・・。
    彼女の髪がつくる洞窟のなかで・・・・・。---

    映像を見ているような小説である。儚く美しく悲しい。

  • 詩的。
    ラストに向かって心が解放されて行く気がする。

  • 人間の残酷さと優しさの両面併せ持つ本。流麗な文体。

  • とにかく文章がきれいな本。作者はカナダの詩人さんです。
    訳者の力もあってのことですが、心象描写を自然現象に例えて語るあたりの上手さに脱帽しています。
    話としてはナチの迫害を逃れ、ギリシア人の科学者に救われて育てられる少年の話です。
    淡々と語られる喪失感が胸を打ちます。

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