- Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152083425
作品紹介・あらすじ
1900年代初めに謎の失踪を遂げた両親を探し求めて、探偵は混沌と喧騒の街、上海を再訪する。現代イギリス最高峰といわれる作家が失われた過去と記憶をスリリングに描く至高の物語。
感想・レビュー・書評
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読み慣れるまで時間がかかりました。
主人公は、幼い時に上海に住んでいたのですが、両親がいなくなり、イギリスへ戻ります。
イギリスで大人になった主人公は、再び上海へ。両親を探しに戻ってきます。
あの時の両親に一体何があったのか?
場面が上海に移ると、一気に面白くなってきました。
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やはりイシグロ作品は面白いですね♪ この作品では混沌の上海で両親が相次いで消え失せてしまいロンドンで長じて念願の著名な探偵となったクリス ハンクスの言わば心の旅路の独白です。たぶんこの作品も翻訳家泣かせの箇所が少なく無かったことだろうけど上手く和訳してありますね。両親失踪の謎解きを絡めながら戦時の上海の混沌した様子も炙り出していて興味深かった。
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ノーベル文学賞の発表があったのが、ちょうど読んでいた期間だったので、ナイスタイミング!と小躍りした(笑)。
今作も面白かった…。
物語の動きも大きいので他の作品以上に読みやすく、どんどん進めるのだけど、引っかかって飲み込めないところがポロポロある。
何が想像で何が現実だったのかはわからない。
私も、子供の頃に失った、届かなかったものを、意識の表面では忘れていたとしても、道理も理屈もへし折る強さで、どこかで求め続けているのかも知れないという切なさと空恐ろしさを覚えた。
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カズオ・イシグロが書く一人称(文学の世界では"Unreliable Narrator"という手法だそうだ。)は読者をもやもやさせる。このもやもやが絶妙なストレスとなって、読者のページを繰る手を先へ先へと進めるのだ。
この作品について特筆すべきは構成だ。主人公・クリストファー・バンクスが「話す」形式をとっているが、実に巧妙な無秩序が綴られる。そして冒頭にある日付までもが、カズオ・イシグロの罠だと気付くのだ。 -
アヘン戦争に関わる小説を読んでみたく、検索したら出てきたので読んでみた。
あまりアヘン戦争自体は関わってこないが(というか、自分の調べ方が悪かったのか)、色々と冒険する雰囲気でハラハラ楽しめた。 -
イシグロ的不条理世界が忍び込むところが秀逸。戦前租界。
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第一次大戦前の上海疎開で育ったバンクスが、両親の失踪後イギリスで成長して探偵となり、日中戦争が勃発した時期に上海に渡って、両親を探す。疎開での友だちアキラ、成功した男を渡り歩くミス・ヘミングズ、バンクスが引き取った孤児ジェニファーなど、一癖も二癖もあるキャラたちが混乱したようにも見えるバンクスの記憶を彩っていく。
真実は認識によって変わる。描写はキャラ視点のもの。つまり読者の側の再構成を要請する。
これが初イシグロ。すっきりと割り切れないキャラたちの割り切れなさを、執拗に描写するその描写力が印象的。それと1937年上海の様子。疎開の外部性、貧困地区の油煙っぽさ、アヘンの浸透ぶり、共産党や蒋介石の人々との隔絶性などが、際立っている。