グラン・ヴァカンス (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション 廃園の天使 1)
- 早川書房 (2002年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152084439
作品紹介・あらすじ
ネットワークのどこかに存在する、仮想リゾート"数値海岸"の一区画"夏の区界"。南欧の港町を模したそこでは、人間の訪問が途絶えてから1000年ものあいだ、取り残されたAIたちが、同じ夏の一日をくりかえしていた。だが、「永遠に続く夏休み」は突如として終焉のときを迎える。謎のプログラム"蜘蛛"の大群が、街のすべてを無化しはじめたのである。こうして、わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦がはじまる-仮想と現実の闘争を描く『廃園の天使』3部作、衝撃の開幕篇。
感想・レビュー・書評
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「零號琴」で衝撃を受けて、飛浩隆氏の作品を遡って読み始めましたが、そういえばこちらの「廃園の天使」三部作の第一部を読んでなかったことを思い出し、読んでみました。全編通じて耽美で残虐で、あまりに文学的な世界観に圧倒され、これが長編デビュー作とはあらためて驚愕です。作品中の空気感というか質感がまとわりつくような表現は、SFこそが現代の純文学だという思いをあらためて感じました。現在連載中だという第三部の刊行が待ち遠しいです。
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2022年2月20日スタート
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SFマガジンのシリーズ最新作連載を読んで、これはすごい!と慌てて1作目を読んだ。
AI的スプラッターホラー。
身体がない分、残酷さと苦痛、視覚的な美しさが際立つ。
超強いアンヌが最高に好み。私の中のアンヌは前半でリフレインしている。 -
AIの忘れられた世界の崩壊と新たなる展望の予兆.空間も時間も複雑に絡まりあって,過去が未来に未来が過去にたやすく置き換わる.記憶の塗り替えや改竄がゲームのようで,登場しない人間と天使の存在の意味がまだ明らかにされていない.蜘蛛やランゴーニなる4人のAIとの闘いの後中途半端に投げ出されたこの物語は,残虐でありながら硝視体の透明感もあってとても美しい.
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圧倒的な世界崩壊を淡々と見せつけられた感じ。強烈な読書体験だった。
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ザ・格調高いSFという感じで、好きな方は大満足できるのではと。
人間のゲストが訪れることがなくなって、AIだけが1000年もの時間を送っていた夏の街を模した仮想リゾートを謎のプログラムが襲うという筋書きなのですが、構成が緻密で唸らされました。
謎が多いので全ては明かされないのかなと思ったけれど、(次巻に続くところはさておき)伏線を結構しっかり回収し、かつ丁寧に種明かしの説明をしている印象でなんだか意外に親切だなぁと感じました。
序盤の夏の美しい情景描写と中盤以降の絶望感やグロテスクな描写のコントラストが圧巻。
少々登場人物が多く、キャラがイマイチ認識できてない中で会話が交わされて誰のセリフかちょい混乱しましたが、総じて文章は読みやすかったです。 -
SF。VR。アクション。
あとがき通り、清新で残酷で美しい。
想像が追いつかない場面も多々あったが、とても魅力的な世界観だった。 -
<永遠の夏休み>と題された仮想リゾートのAIたち…でまったりした始まりからは想像つかない後半。早く読みたいのと読みたくないのとでぞわりとした。人間の嗜虐性と悪趣味を満たすための苦痛に満ちた区界…あとがきに「残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」とあるけど全くその通り。次作も読みましょう…