- Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152085887
作品紹介・あらすじ
22世紀末、遺伝子管理局が統括する12基の知性機械によって繁栄していた人類文明は、とあるウイルスの蔓延によって滅びた。そして西暦2643年、ラテンアメリカ-変異体と化した人間たちと種々雑多な組織が蠢く汚濁の地にあって、自治都市エスペランサは唯一、古えの科学技術を保持していた。その実験体にして、知性機械サンティアゴに接続する生体端末の末裔アンヘルは、混沌の世界を平定すべくレコンキスタ軍を組織、不老長生のメトセラにして護衛の少年ホアキンらとともに、サンティアゴの到来が近づくグヤナ攻略を画策していた。いっぽう民衆たちのあいだでは、サンティアゴを神の降臨と捉える参詣団が形成され、その中心には守護者として崇められる青年JDと、謎の少女カルラの姿があった。アンヘルは、ある思惑を秘めて二人との接触を切望するが…。精緻にして残虐なるSF的イメージと、異形の者たちが織りなす愛憎と退廃のオペラ-沖方丁、小川一水につづく新鋭の叙事詩大作。
感想・レビュー・書評
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49:生体端末とメトセラの永遠に繰り返す「音楽」、それにJDとカルラという異分子を加えた変奏、閉じた円環からの誕生。そんなことを思った。設定がややこしくて物語も長くて難しかったけど、ラストシーンはきっちり辿り着くべきところに辿り着いたんだな、という印象。
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とにかく長い。
27世紀、遺伝子操作と放射能で異形の者の暮らす地となったラテンアメリカが舞台となっている。
知的機械サンティアゴ(巨大コンピュータ〉の生きた端末で何度も死んでは生まれ変わるアンヘル、不老長寿の血筋でアンヘルの護り手のホアキン、超人的な戦闘能力を持つ謎の旅人(おたずね者)JDとその娘(?)金髪碧眼の美少女カルラ等、一言ではまとめきれない濃すぎる人物たちの物語が並行して展開され、また遥か過去の話もささりこんできて複雑にからみあう。
後半で収束して何とか把握できるようになるまでひたすら耐えて読み進むしかない。しかし耐えるだけの価値はあります!虚無くて熱い愛憎劇。
脳内のイメージをここまで練り上げるにはどんなにエネルギーがいることか。
これがデビュー作ということで更に驚きです。
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異形の未来。「アンヘル」像は類型からからくも免れている。男性が母なるものを書くのってどんな気持ちなんだろう。アニメ的なものから外れていくことがこれからのライトノベル系の道だと思うのだけど、ピアソラやオペラがうまく効果をあげているといってもいいんじゃないだろうか。あとがきで「佐藤亜紀」さんの名前を見て、なんとなく腑におちた気がしたのは、いりくんだ感情と悩める青年のイメージと欧州的な雰囲気があったからかしらね。血塗れなのに儚い人々の話でした。