夜中に犬に起こった奇妙な事件

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制作 : 森 ヒカリ  Mark Haddon  小尾 芙佐 
  • 早川書房 (2007年2月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152087959

夜中に犬に起こった奇妙な事件の感想・レビュー・書評

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  • 主人公のクリストファーは、人の表情が読めず、コミュニケーションやふれ合いはとても苦手ですが、科学や数学が得意。

    ある日の夜中、隣の家のプードル・ウエリントンがフォークで刺されて死んでいるを発見します。
    自分に犯行の疑いがかかってしまったため、シャーロック・ホームズ好きの彼は捜査を始めます。

    町中にあふれる情報の波をかき分け、電車に乗ることも決死の大冒険。直面する様々な出来事に戸惑いながらも、それらを乗り越え少しずつ成長していくクリストファー少年。

    捜査を進めるうちに意外な真実が明らかになります。後半は家族の物語になります。

    彼の目を通して語られる、何気ない街の風景は、新鮮で美しく感じられます。
    そんな彼がつづるこの物語は独特の雰囲気が漂っています。合間に語る数学や物理学の話がとても面白いです。素数の話だったり、銀河系の話だったり。

    いきなり2章から始まることに面食らうかもしれませんが、その理由はぜひ読んで確かめてください。

    図書館スタッフ(学園前):てば

  • 僕に情がないのか?読み方が悪かったのか?
    帯で大げさに書き連ねてあるほど、感動はなかった。

    まるで主人公のクリストファーのように、淡々と読み進めていったよ。

    アスペルガー、もしくは高次自閉症の思考を追体験しているみたいで、それはそれで興味深かったけどね。
    ここに感動がうまれる理屈は、主人公と読者との間にある感情のズレがキーポイントなんだろう。

    状況を詳細に記述するクリストファーの小説と、それを覗き見ている読者との間にある様々な事件に関する感情のズレだ。

    本来なら、泣くかもしれない、ショックを受けるかもしれない、悲劇のヒーローに自分を落とすかも知れない。
    そんな、『正常な感情』の反応を起こさない彼の代わりに、我々が泣くっていう道理だ。

    ただ、僕はそうはならなかった。
    どちらかといえば、もっとクリストファー側にいて読んだ気がする。
    だから、彼がまた日常を過ごすように、僕も淡々と日常に戻れたのかもしれない。

  • 高機能自閉症または、アスペルガー症候群の特性を持つ15歳の男の子が、自分の体験や内面を、ミステリーを書くという目的で現した形となっている。
    起こる出来事は、かなりショッキングではあるが、主人公のクリストファーが、頭を整理し、自分なりにトラブルを避け、安心出来るよう努力しているのが良くわかる。

  • 舞台を先に見ました。原作もとてもおもしろかった。児童書作家の作者が初めて大人向けに書いたものだけれど、出版社が子供・大人どちらにも向けて出版しようと提案したそう。たしかに幅広い年齢層が楽しめる本。ヴァージニア・ウルフ「波」からの引用があるけれどとても深くて何度も考えてしまう。

  • ナショナルシアターを見たいけれどいけなさそうなので再読。
    小学生くらいの頃に読んだがその時とは全く違う捉え方だったと思う。

  • 面白い!!ものごとはこんな風に捉えることもできるのか、と自分の見ている世界が広がる気がした。
    アスペルガーの少年クリストファーが書いたミステリ小説、という設定で、視点や感情の動きはあくまで書き手であるクリストファーの感性で物語が進んでいきます。しかし本編には主人公が自閉症だとはひとこともかかれていません。けれどもこういう性質の子はどこにでもいて、彼らと共に生きていくというのはこういうことなんだなと思う。
    舞台がイギリスだからなのか、この書き手だからなのか分かりませんが、クリストファーの言動に対する周りの人たちの反応が優しいというかなんというか。干渉はしないけど見守る。それは、自分とは関わりのないこととして遠目に(あるいは冷ややかに)見るのとは全然違う。日本にはどうしても後者が多いような気がする。わざわざ“彼は自閉である”なんてことは知らなくても、こうやってそっと見守ってあげればいいだけなのに。こういう彼らの特質を知ることが本当に大切。そして家族や周りの人よりもだれよりも、本人が本当に大変な思いをしているんだということがよく分かる。
    それにしても、多くの「定型発達」の人々の見ている世界が、いかに不条理で非効率的であることか!(私自身が限りなくグレーに近い性質だから共感出来るのかもしれませんが…)

    ※翻訳小説ですが、ここにカテゴライズしときます。

  • 自分の知らなかった世界、「彼に見えている世界」を主観的な視点かつ客観的な分析で活写。クリストファーの母親もこの本読めばよかったんじゃないの(矛盾)。父親にも問題はあるけど、それでも彼らの愛がこの先少し報われるといいな。

  • 『それぞれのアルファベットに1から26までの数値をあてはめてみる(a=1、b=2というように)。そして頭の中でその数字を足していくと、それは素数になるのがわかる。JESUS CHRIST(151)とか、SCOOBY DO(113)とか、SHERLOCK HOLMES(163)とか、DOCTOR WATSON(167)とか』-『47』

    「博士の愛した数式」か、「アルジャーノンに花束を」か。それは外からは通常伺い知ることのできない、複雑で、知的な世界の描写。小川洋子は、表情や一般的な行動としては表われてこないその内面の心情を、数式を通して世界に伝えようとしている様を、第三者の気付きという視点から描いた。一方ダニエル・キイスが描いたのは、特殊な事情によってその内側に閉ざされた世界が外側に広がってくる物語。

    マーク・ハッドンは、「アルジャーノン」の設定と同じように内側からの視点で描く。外の世界から自分に係わってくる人を(そしてそこで起こる困難を)描くことで、その狭間の大きさを描いている、とも言えるかも知れない。しかしどちらの側から描くにしても、その間にも確かな繋がりが存在し得るということを描く点は、この本でも共鳴していること。よしんば、その繋がりが同時進行の矢印が向き合ったようなの繋がりではなくて、一見互いに一方通行のように見えてその実お互いを支え合うような矢印の循環のような繋がりであったとしても。

    考えてみると、そんな風に閉ざされた知的活動の世界を、全く別のものと思ってしまうことがそもそも間違った問いの立て方であるかも知れない。普通に会話を交わすことができていると思っている人々の間にも、そのような理解の断絶はあるだろう。むしろ一見存在していると思える断絶を越えようとする努力があるからこそ、理解の補完が起こるのだとも思える。言葉の無力さを思う。

    ペットのネズミ。その描写を読む限り、それはハムスターであるように思えるけれど(果たして原文では何という言葉になっているのだろう)、その言葉の響きからは、マウスやラットというイメージが喚起され、実験用、という修辞がたちまち結びつく。そこまで連想が繋がれば、アルジャーノン、のことを思い出すのは、ほぼ必然となる。もちろん、読後感は全く異なるのだけれども、そんな風にダニエル・キイスとの比較は案外そこかしこで喚起される。

    但しダニエル・キイスが描いたのは、振り返って考えれば、二つの世界のギャップを科学の力によって、ある意味物質的に無理やり繋げてみせようとする物語。一方マーク・ハッドンはそのギャップを精神的な働きかけによって繋いでみせる。その物語のあり方は小川洋子の描いた世界とほぼ同じものであると思う。

    しかし二つの作品がほぼ同じ世界観で成り立っているといっても、イギリスを舞台としたこの物語は、石畳や人工物に囲まれた世界の中で起こる物語で、自然との繋がりがほとんどないという印象が残る。唯一人間が制御できないもの自然のモチーフがペットである動物なのだ。しかし小川洋子の物語には土のにおい、草のにおい、植物のにおいがする。そればかりか、野球という確率でしか捉えることのできない人間の営みも人間の制御できないものとして登場する。その違いが実は、同じような物語でありながら、「夜中に犬に起こった奇妙な事件」に対して、どこか「作り物」というような印象を生む原因となっているような気がする。但し、それは日本人的視点に絡みつく印象であるとも思ってはいるのだけれども。

    『しかし煙は煙突から大気のなかに出ていくはずだ。だからときどきぼくは空を見あげて、あそこにはお母さんの分子があるのだと思う。アフリカや南極の雲のなかにあるのだと、あるいはブラジルの熱帯雨林の雨や、どこかの雲になって降っているかも知れないと思う』-『61』

  • 児童文学の書き手だというのでほんわかあったかなやつなのかなと思ったら
    わりと重めの話だったので驚いた。

    主人公である自閉症の男の子が自分の意思で外の世界に出て行く場面、必死さがにじんでる感じが好き。

    外国小説を普段読まないんですが読みやすかった!

  • 自閉症の男の子が、向かいの家の庭で殺された犬の謎を追う、ミステリー&成長物語。

    彼は謎を解くうちに、自分に関係のある秘密に辿り着いていく。ショッキングな出来事もあるけれど、彼は自分のやり方で乗り越えていく。

    自閉症の人が、考えていることや、なぜ私たちには理解できない行動をするのかということがわかるように描かれていて、読んで見解が広がった。私たちにとって、彼らの突拍子も無いと思われる行動にも理由があること、それがわかるだけで、お互いのためになるのではないかと感じた。

    物語としても面白く、主人公の謎の解き方は私には到底できないくらい整然としていて素晴らしい。

    人の感情がわからないから、顔のマークで表現したり理解したりする主人公の始めのシーンが伏線?になっていて、読後がとても心地よかった。

    中高生から大人まで。

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