- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152088086
感想・レビュー・書評
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大学病院に勤務する5年目の産婦人科医、柊(ひらぎ)奈智は患者思いの誠実な仕事ぶりで患者や同僚から信頼されていた。
ある夜勤の日、極度の睡眠不足など不測の事態が重なった中、胎児に危険が迫り、最も緊急度が高い帝王切開に踏み切った。
胎児は無事だったが、その後母親が死亡したことで遺族から訴えられる。
被告人として名指しされ、裁判で原告代理人から暴言を浴びせられた奈智は、徐々に精神を病んでいく…
著者が産婦人科の医師であり、内容がとてもリアルで、医療訴訟の多い産婦人科の現実、医師不足、夜勤の多さなど、切実な問題が描かれていた。
医師ももちろん人間で、初めから高い技術を持っているわけではなく、手術中に技量不足からミスをすることもある。
どの程度のミスを医療過誤とするのか、今のところ明確な基準はない。
ミスを完全に無くすことは不可能であり、医師はそれを一つ一つ反省しながら成長していくのだと思う。
だが、患者からしてみれば常に完璧であってほしいと望むのも当然だろう。
とても難しい問題だ。
医師と患者との信頼関係、きっとそこに解決の糸口があるのだと思う。
奈智先生のような患者思いの誠実な医師が増えていくこと、そして医療に関する様々な制度が医師の成長の助けになるよう改革されていくことを願ってやまない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現役の医師が書いた、産婦人科で働く人たちの小説。
患者と医師という関係性は、やはり信頼がなければな
と改めて思う。
しかしどんなに医師が手を尽くしてもダメな事も勿論あり、命に関わる仕事の何と難しいことか。
私自身2度出産を経験し、先生や助産師さんたちにどれだけお世話になった事か。
過酷な労働環境の中、心が折れてやる気を失ってしまう
医療関係者が出てくるのも頷ける。
命に関わる仕事に就いている人たちの心のケア、働く環境が少しでもいい方向へと進みます様に。 -
現在形の中に不意に完了形が混ざり、後からその状況を思い返している事が分かる。
患者さんが亡くなってしまった場面、医師が糾弾されPTSDになる場面などは泣いてしまった。
主に体力的な不安が大きいがやはり産婦に心引かれる。 -
医療ミステリの範疇なんだろうが、テーマは現実的で明確。著者の関連機関で主人公とイメージの被る執刀医に帝王切開を受けた妻を持つ身としては、かなり苦しい部分もあったが、著者のメッセージは痛いほど伝わった。
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いやあ、読み応えがある本でした。
著者の岡井先生、現役の産婦人科の教授です。
忙しい時間にこれだけの小説を書けるというのは、すごい才能だと思います。
大学病院の産婦人科、研修を終えて医局員となった女医奈智が多忙で疲労困憊のなかに行った緊急手術で事故がおこりました。
小説内では、産婦人科医がいかに多忙であり疲弊しているかということ、医療事故裁判のことなど、いかに医療現場がこまった状況にあるか描かれています。
http://ameblo.jp/nancli/entry-11746218035.html -
ハッピーエンド
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大学病院の産婦人科で5年目の中堅である医者、奈智を主人公に、産婦人科の日常、問題点、医療訴訟をとりあげた圧巻の小説。
著者が医者だけに、医療に関する説明が詳しく、医療関係の知識があまりない私は最初に少し戸惑ったが、その正確な記述に逆に一気にのめりこめた感じもある。
この小説を読んで、産科を取り巻く厳しい状況を初めてよく知ることができた。最近では、医者は儲かるというよりも、勤務状況の過酷さの方を聞くことのが多かったが、この本を読んで更にその認識が強くなった。 -
大学病院の産科医が主人公の医療ミステリ。
この手の小説ではなんといっても海堂尊なんだけど
この小説も舞台が大学病院なだけに似ているね。
岡井崇も現役の医師でこれが初めての小説とのことで
サクサクは読めたけど登場人物が海堂作品と比べたら薄っぺらな感じ。
勤務医の薄給での激務ぶりや産科医の実態などはリアルだけど
エンターメント性はいまひとつかな。
大学病院の先生たちはたいへんなんだなー
うちの辺りも産科の看板降ろしちゃってる医院も多いし
産科医不足って深刻なんだなー
っていうのはわかった。
医者が書く小説が訴えたいことってこの辺りになるんだろうな。 -
医師の視点で現場の不条理を社会に伝えようとした小説。医師が読むと胸がすくかもしれないが、それ以外の人にはいいわけがましくみえてしまうかもしれない。。。。。かな