そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088642

感想・レビュー・書評

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  • 量子力学を発展させた理論物理学者の栄光と挫折を描いた作品。

    とくにHeisenbergによる不確定原理(本書では観測による不確定性との混乱を避けるために「非決定性」や「決定不可能性」と呼んでいる)を受け入れるべきか、決定論を維持するか・・・・
    当時の物理学者が量子力学をどのように発展させたのかがうまく伝わる。

    Heisenbergによる不確定原理やSchrödinger方程式の解である波動関数の振幅の2乗は粒子の存在確率(Born解釈)を与えるということは、今や理系の大学なら教養程度で学習する内容であるが、この本を読むと、その解釈の方法に関して当時の物理学者がどれほど頭を悩ませたかがよくわかる。そしてEinsteinが量子論を受け入れられなかったことも。

    Newtonの「もし私が他の人よりも遠くを見ているとしたら、それは巨人の肩の上に立っているからだ」という言葉がピッタリだと思う。

  • 2008

    ボーアに始まる量子力学が、シュレディンガーやハイゼンベルクによって大成され、物理学の柱の一つとなるまでを描いたもの。
    物理の知識がないと理解しにくい部分が多いかもしれないが、人間関係も含めた展開で大いに楽しめた。

  • 「そして世界に不確定性がもたらされた」

    著者 デイヴィッド・リンドリー
    訳者 阪本芳久
    出版 早川書房

    p248より引用
    “科学的心理の力は強大であっても、万能ではない。”

    量子力学とその重大理論・不確定性原理が生まれるまでと、
    生まれてからの歴史に関する一冊。
    科学者達の奮闘と苦悩、
    人間関係が歴史の流れと共に書かれています。

    上記の引用は、
    不確定性原理から導かれる結論の一つだとおもいます。
    観測することによって、
    対象が影響を受けるという事を初めて聞いた時は、
    目から鱗が落ちる思いでした。
    科学というものは、
    もっとはっきりとした物であると思っていた為ですが、
    何事にも限界はあるみたいだなぁと思いました。
    一度読んだだけでは、
    正直人物名を覚えきることも出来ませんでした。
    じっくりと時間を掛けて読める方に。
    ーーーーー

  • 量子力学が生まれ、確立していくまでの過程で出てきたキラ星がごとく輝く科学者たちのヒューマンヒストリーを綴った一冊。特に原題の副題("Uncertainty - Einstein, Heisenberg, Bohr, and the Struggle for the Soul of Science")にある通り、ソルヴェー会議での熱い議論を中心にしたアインシュタイン、ハイゼンベルグ、ボーアの3人を中心とした中盤で描かれる論争戦は、量子力学がほぼ確固とした理論として受け入れられた現在から見ると滑稽なところがあるのも含めて、人間的でかつ印象的である。それにしても、この当時の人は、よく手紙を書いていたんだなと思う。また、こうやって後の世で私的書簡が公開されるのも不思議。今の世ならEメールやSNSなので、もっと話が早かったのかもしれないですね。

    なぜ今更、量子力学なの?というテーマに関する疑問はあるが、サイモン・シンなどが開拓した、特定の有名な科学的テーマを巡った人間模様をきちんとした科学知識の背景を押えて書くという、サイエンスライティングの一分野として広がっていけばよいと思う。

    前提知識の過多に影響されるので、好き嫌いはあるかと思うが、私としてはとても楽しんで読めた本。

    タイトルが原題と大きく違っているが、キャッチーで味のあるもので個人的には好き。でも、やはりハイゼンベルグだけでなく、アインシュタインとボーアも同じくらい主役級なので副題に含めてほしかったな。

  • 個人的に、わかりやすくておもしろかった。
    ハイゼンベルグとシュレディンガー方面両方から量子力学の成り立ちを読めるし。

  • 2008年2月ごろ。市立図書館で。
    20世紀初頭、物理学のスーパースタァたち(科学史)を淡々と綴った本。
    フェルミ推定の芋づる読みのつもりでしたが、何故この本が検索に引っかかったんでしょうか。
    読む方も読む方ですが。

  • 不確定性原理をめぐる本。理論の説明や解釈よりも、当時の物理学者、ボーアやシュレディンガー、アインシュタインらの言動の描写がメインハイゼンベルクによる量子力学の概念はパウリに「ぼくに生きる喜びと希望を与えてくれた」と言わせたが、アインシュタインは「(量子論は)大しくじりだ」と否定し、最後まで認めなかったという。理解することは予測することであるという因果律を明らかにすることこそが科学であるという立場から、確率に支配された量子力学はとても受け入れられなかったのだろう。最後に触れられているように、古典物理学ではどんな出来事であれ、それに先立つ出来事が原因となる必要があるため、宇宙が生まれた理由については語りえない、というのはまさにその通りで、ビッグバン理論に量子力学がからんでくる背景が少し理解できたように思う。ボーアの相補性物事の見方には複数あり、互いに補完しあう相補的な見方がある。生物は、物理学的には多数の分子がつながりあった集団とも、意志や目的によって機能している統一体ともとらえられる。が、同時に二つの見方をすることはできない。ボーアはある講演で「目的という概念は、力学的解析には無縁のものであるにもかかわらず、生物学ではある種の適応性がある」、つまり目的というものは分子レベルでは全く意味がないし、このように観察のレベルが異なれば異なった所見、場合によっては矛盾するような所見も現れる。■私としては原子の世界では決定論を放棄したいとおもう(ボルン)

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