アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

  • 早川書房
3.77
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152090034

作品紹介・あらすじ

時は、21世紀の初頭。マンフレッド・マックスは、行く先々で見知らぬ誰かにオリジナルなアイデアを無償で提供し、富を授けていく恵与経済の実践者。彼のヘッドアップ・ディスプレイの片隅では、複数の接続チャネルが常時、情報洪水を投げかけている。ある日、マンフレッドは立ち寄ったアムステルダムで、予期せぬ接触を受けた。元KGBのAIが亡命の支援を要請しているが、どうやらその正体は学名パヌリルス・インテルルプトゥス-ロブスターのアップロードらしい。人類圏が特異点を迎える前に隔絶された避難所へと泳ぎ去りたいというのだが…。この突飛な申し出に、マンフレッドの拡張大脳皮質が導き出した答えは…"特異点"を迎えた有り得べき21世紀を舞台に、人類の加速していく進化を、マックス家三代にわたる一大年代記として描いた新世代のサイバーパンク。2006年度ローカス賞SF長篇部門受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読むのにとても長い時間がかかってしまった。なんでかっていうと、この本の速度にとてもついていけなかったから。
    アッチェレランドの世界では爆発するように時間が過ぎてゆく。わかりやすいのはコンピュータモジュールの変遷で、たとえば最初の主人公マンフレッドの時代はGoogleグラス的な眼鏡によって世界中とのやりとりを行っていて、それは彼一人の特権だった。
    彼の娘アンバーの幼少期には、大脳に直接仮想空間へアクセスする機器(インプラント)が埋め込まれ、その頭部はインプラントの補助セットがおおっている。
    そして、その息子の時代には、そんな不格好な機器は存在しない。霧のようなナノマシンが都市をとりまいて、言葉どころか意識のひらめき一つで様々な指令を実行する。

    そういった凝ったガジェットにもそそられるけど、一番心が踊った冒険はいわゆる宇宙人との接触だった。銀河の果てに巨大なルーターがあり、そこにコピーした人格を情報として送り込むことで神のような異種知性の世界にコネクトできるという発想は、SFならではの屁理屈の産物で最高。そして異種知性の間では文明が通貨として使われているという下りは、もはや壮大すぎてついていけない。

    あとは、技術進歩における倫理的な問題を取り上げないのもよかった。マンフレッド一族の果ての時代では、仮想空間上の人格を現実世界の肉体へ移植するのをアップロードなんていう。コピー人格の人権なんか問題にすらならないし、仮想と現実の立場が完全に逆転してしまっている。
    結末はしりすぼみの味気ないものだったけれど、近い未来、ありえるかもしれない世界への飛躍を体感できた。いまがそうであるように、技術進歩の速度に私たちの哲学や倫理は追い付けない。そんな小気味よさが痛快だった。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】


    〈ギブスンの鮮烈×クラークの思弁〉英国SF新世代の旗手が描出する、〈特異点〉を越えた人類の姿!
    時は、21世紀の初頭。マンフレッド・マックスは、行く先々で見知らぬ誰かにオリジナルなアイデアを無償で提供し、富を授けていく恵与経済(アガルミクス)の実践者。彼のヘッドアップ・ディスプレイの片隅では、複数の接続チャネルが常時、情報洪水を投げかけている。ある日、マンフレッドは立ち寄ったアムステルダムで、予期せぬ接触を受けた。元KGBのAIが亡命の支援を要請しているが、どうやらその正体は学名パヌリルス・インテルルプトゥス――ロブスターのアップロードらしい。人類圏が〈特異点(シンギュラリティ)〉を迎える前に隔絶された避難所へと泳ぎ去りたいというのだが……。この突飛な申し出に、マンフレッドの拡張大脳皮質(メタコルテックス)が導き出した答えは……。〈特異点(シンギュラリティ)〉を迎えた有り得べき21世紀を舞台に、人類の加速していく進化を、マックス家三代にわたる一大年代記として描いた新世代のサイバーパンク。2006年度ローカス賞SF長篇部門受賞作。

  • 主人公のマンフレッド・マックスとその妻と子供と孫が活躍するサイバーパンク。意味が分からないと思うが、サイバーパンクらしく、造語や人格のバックアップやリストアで、子供が親の年齢を越えたり、子供が親のデータから作成されたり、読んでいて頭の中が混乱してくる。でも、サイバーパンクの代表作品である「ニューロマンサー」よりは読みやすい。ただし、本作品は長い。単行本で小さな文字が二段組でぎっしりとつまっている。読むのに時間がかかるだろうが、読む価値はある本である。とはいえ、コンピュータに詳しい人であればまだいいが、そうでない人は読むのに苦労する可能性が高いと思う。そこは頑張ってくださいとしか言いようがない。

    さて、本作品は技術的特異点(シンギュラリティ)を迎える物語である。現実世界でも人工知能(AI)の発達により、いつシンギュラリティがくるのか議論されている。この作品を読むと、現代では異常な世界のように思われるが、そんなに怖い世界が訪れるわけではなさそうだと感じた。まあ、自然知能が考えることなので、きちんとした根拠もなく、適当に感じているだけだが。

  • 難しい・・・でも難解な作品って読んでいてどっかで快感を感じる。意識が他人と融合してると思われる描写だったり、宇宙に話が広がったり時間を超えていくと思われる展開は(両方とも適当な感想)不思議な感覚になった。

  • シンギラリティSF.シンギラリティ後の異種知性の描写があるかと思ったら,文明の前でペドフィリアに捕まったり,知性に会いに行かなかったほうの視点で書かれたりと新規な描写はあまり無くて拍子抜け.まだカーニバルみたいな変な連中のいたシンギラリティ・スカイのほうが良かったかもしれないな.

    異星文明をルーターとかパケットとかネット用語で解説するのは笑えた.物理実験を「物理に対するサイドチャネル攻撃」と称するのもニヤニヤする.

  • ふえぇ…サイバーパンクでジャーゴン満載の500P超のハードSFは読書離れが著しいボクにはつらかったよぉ…/……まーこれしんどいです。三代記なので『赤朽葉家の伝説』みたいでしたが、後半になるにつれてどんどん加速していきます。逆にいうと、第一部乗り切るまでが非常に遠いです(僕も一回目はそれで挫折しました)。良質なSFだと思います。酒井昭伸氏はいつもいつもいい仕事をします。この訳を読むだけでも価値があるのでは?

  • 非常に手強い作品だった。一応読み終えたものの、濃いギーク・ネタにおぼれるばかりで、世界観やストーリーを掴みきれなかったのが悔しい。面白い作品なのはたしかなので、いつかまた読み返そうと思う。

  • 今ある経済活動、株や証券、貨幣価値は実態があるようで、実際の運用はデータ上の数値だけ。それを上手く扱うには、人工知能的なものでも上手く扱えそう。そんなのが実現してパワーをもったら・・・。でもなぁ、宇宙がインターネット技術を拡大した概念で存在するのはちょっと残念。もっとトンデモない世界で描いてほしかったな。

  • アホです(褒めてます)。

    とてつもなく壮大なホラ話です。
    本当なら、原文に当たるべき何だろうけど、ジャーゴンや造語があふれている(らしい)。

    でも、どうなろうと人は人なんだな。

  • 100613→100617読了
    またマイ聖書が増えてしまった。

  • 発売された直後に買い、読み始めるも、幾度となく中断し、はや、半年。

    情報という観点での進化、未来の地球というか人類の姿を描いている。
    おもしろいけど、いうなれば左脳的な話なので、すぐに疲れてしまう。だから、休んでは休んでは読んで、半年かかりました。

    アイネコというAI猫が登場します。これがなかなかいい。ほしい。いらない。ほしい

  • ハードカバー、上下 2 段組みの、500 ページ。
    大量のジャーゴンに圧倒されるサイバーパンク。
    日本語に翻訳する作業は、
    かなり困難であったと思われる。
    訳者は、あの「ハイペリオン」の酒井昭伸氏。

    物語の流れから自分が振り落とされない様に、
    絶えず注意が必要。
    実際に、何度も振り落とされた。
    読み終わってみると、
    3 代にわたる家族の物語なんだけれどね。

    2006 年 ローカス賞 SF 長篇部門受賞作品。

  • 続編も待ち遠しいですが、Merchant Princeシリーズの翻訳もお願いします(´・ω・`)

  •  やっと読み終わった。変わったタイトルの表題の意味は「どんどん加速する」。舞台は2010年代のWeb2.0が過激に発展した近未来。ナノテクノロジーを活用した演算素子の展開で惑星規模で物質がどんどん演算する素子に変えられて行く世界。ロブスターの神経系をネット上でシミュレートしエキスパート・システムとした初の「アップロード」体がロシア語訛りで亡命を要求してくる(最高!)し、脳腫瘍の研究者はやけになって自分を「アップロード」してしまう。思考素子の性能がグラムあたりのある値を超える特異点(シンギュラリティー)を迎えて変容してしまう直前の世界を3部構成で描く。第一部は2010年代、第2部は2040年代。アップロードたちがコーラの缶ほどの大きさの恒星船で謎の通信の探査に向かい宇宙規模でのインターネットに接続する!?第3部はシンギュラリティー後の太陽系。どんどん変化は加速され2070年代で惑星は次々に解体され太陽系2.0となってしまい、もはや人間のすみかは無い。土星まで住処を追われたヒトはどこへ逃れるのか! 現役プログラマーの著書らしく第1部が最も迫力がある。とにかくコンピューター用語やアイデアがぎっしり詰め込まれていて、めまいがするほど。いちいち想像してしまうからなかなか先に読み進めなくて、これまでになく時間がかかってしまった。レム先生を崇拝する僕としては第2部はいらない感じだったが、著者の作品の中では一番面白かった。テーマは第1部扉の「コンピューターがものを考えられるかと問うのは愚問だ。潜水艦が泳げるのかと問うのと、なんら変わらない」に集約される。人工知能についての微妙な感じも含めて著者の立ち位置がよく現れている。疲れたけど傑作。

  • 面白楽しく読めたのだけれど、第二部、第三部で人類が加速度的に進化していく様が描かれるのに比して、登場人物たちの魅力が減じていくのが残念。
    第一部のマンフレッド・マックスと彼を取り巻くあれやこれやが一番面白かった。
    本筋とは関係ないけれど、持ち主を認識してどこまでもくっついていくスーツケースとか、ひったくられると悲鳴をあげるバッグなんていうのも楽しい。
    それにしてもIT関係の用語にはまったく素養がないのを再認識。 

      Accelerando by Charles Stross

     

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