夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

  • 570人登録
  • 3.71評価
    • (39)
    • (98)
    • (74)
    • (10)
    • (3)
  • 90レビュー
制作 : 土屋政雄 
  • 早川書房 (2009年6月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152090393

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • カズオ・イシグロでは珍しい短編集。
    副題通り、それぞれに音楽をテーマとし、夕暮れがモチーフになっています。
    ヨーロッパの片隅で、男と女の出来事が…
    奇妙な出会いや、どこかもの憂げなムードも共通しています。
    ほろ苦くも切ない、芳醇な味わい。

    ヴェネチアのサンマルコ広場でギターを弾いている男が、母が大ファンだった往年の歌手を見つけ、興奮して話しかけます。
    その歌手は奇妙な依頼をしてきて、ギター弾きはいぶかしく思いつつも、彼の妻のために演奏をするのですが。
    この夫婦はやり直そうとしているのか、別れようとしているのか、それとも…?と引き込まれます。
    独特な風合いが濃厚な手応え。

    音楽家を目指してチャンスを待つ若者が、民宿の仕事をしつつ悩む話や、才能がありすぎる?音楽家が誇り高さから先生につけず、進む道を迷う話など。
    全体として、意表をついた視点の面白さと、なかなかない苦みとユーモアで、うわ~まいったな!という。
    作者が若い頃はミュージシャンを目指して何年も過ごし、挫折した経験があることを考えると、この濃厚さも納得。
    いや、違う道もあるんですよ!…でもね…
    登場人物の命運にもまた、感慨がありますね。

    この本を読んだのはだいぶ前で…
    なんか言葉が出てこなくて。
    「わたしを離さないで」もあの長さにしては恐ろしく読むのに時間かかったし。私にとってはそういう(どういう?)作家さんです。

    私がカズオ・イシグロを読み始めたのは、映画化された「日の名残り」を見てから。
    イギリスの大邸宅を取り仕切る執事が主人公で、アンソニー・ホプキンスが堂に入った演技をしていました。仕事に忠実なあまり、信頼する女中頭との恋を逃してしまうほろ苦さも。
    初期の「女たちの遠い夏」(「遠い山なみの光」と改題したそうですが)は、戦後の混乱期に母に愛されなかった娘が、大人になって自分の娘と上手くいかないという話でちょっと暗いので~誰にでもオススメというわけにはいきませんけど。
    もちろん筆力は十分、感じられました。

    「わたしを離さないで」がなんといっても印象的で、精緻でもの哀しく、あたたかさと清らかさがあって、大好きです。

  • 切なくもどこかロマンチックな香り漂う5つの小話。「音楽と夕暮れをめぐる5つの物語」という副題にあるように、どの小話も音楽が物語を彩り、黄昏時のような切なさが漂っている。ある人生のある一部分を切り取ったような物語ゆえ、解りやすいようなオチや教訓などは用意されていない。作中で表された苦味、焦り、高揚感、戸惑いは、人生の中でだれもがどこかで感じたことのあるような感情。だから懐かしいノスタルジックな気持ちになるのかもしれない。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】「老歌手」ベネチアの広場でバンド演奏をしている流しのギターリストが、憧れの大物歌手と出会い、あるサプライズへの協力を依頼される。だが妻に歌を送るというロマンチックな計画に反して、夫の表情は暗い。夫婦の愛の終わらせ方に苦味を感じる。「降っても晴れても」ロンドンに住む20年来の友人夫婦の危機に接することになった、フリーターの中年男性の戸惑い。いまひとつ面白みが解らなかった。「モールバンヒルズ」イギリスの片田舎のカフェを手伝う学生ミュージシャンの青年と、カフェを訪れた音楽家夫婦とのふれあい。傍目には仲良く見える夫婦だが楽天家の夫と神経質な妻の観点の違いは妙に現実味を帯びている。「夜想曲」天才的な中年サックス奏者が心機一転、整形手術を受ける。偶然隣部屋になった女性芸能人と関わることになるドタバタ。どこかで目にした名前だと思ったら1話目の登場人物が再登場している。初めとキャラが若干違う気もするが…。「チェリスト」若きチェリストが音楽の大家の個人レッスンを受ける奇妙な話。素直な青年が女性の手ほどきを受け影響されていく変化が綴られている。なんとも微妙な味わいだ。

  • 読みながら途中で笑っていました。あんまり楽しくて。楽しいだけじゃない、もの哀しさも、こういうしがらみ分かる〜、っていうのもあったけど、短編のせいか気軽に読めました。二編目、楽しかったです。

  • 著者初の短編集だけれど、さすがの上手さ。
    品のいいユーモアと皮肉、人生のシビアさと美しさ。
    それらを縦軸に、音楽と世界の様々な風景を横軸に綺麗に織られている。
    これまでに読んだ彼の長編のように、読み終えた後で胸骨の中で反響し続けるような衝撃は薄いけれど、読んでしばらく経っても情景を鮮やかに思い起こせる。
    最初の短編の女性が再登場していることに、解説を読んで初めて気づいたのが悔しい…読んでいる時に自分で気づきたかった!

  • 「夜想曲」という話がおもしろかった。コメディっぽいドタバタや、登場人物の出合う場所とその風貌や、二人のやりとりがたのしい。映画になりそうだ、そうなったら観てみたいけれど・・・無理かな。

  • 久々の純文学にホッとした気分。イシグロには今どきのライトノベルにはない文学的な品性がある。各短編にオチがないように思うのは、チェーホフ的な人生の一瞬を切り取ってみせたような書き方だから。イシグロは好きな作家で、この作品も評価はしているのだが、短編としては、私はモームやモーパッサン的なドラマ性やオチがあるほうが好きなので、個人的にはちょっと物足りない。

  • すばらしくおもしろい短編集だった。

    ひとすじなわではいかない、
    ハッピーエンドでもなく。
    かといって、よく海外の短編にあるような
    わたしの頭では理解のできない
    意味不明の投げ出し方でもなく。

    バランスの良さが、とても好みでした。

  • 翻訳なのに違和感がなくすいすい読めた。
    途中、シュールすぎて笑ってしまうシーンもちらほら…

    「メグ・ライアンのチェスセットって何だ。駒が全部メグなのか」
    笑ったwww

  • それぞれのある数日を切り取ったような、
    それでいて夢の話でもあるような不思議な魅力に
    あふれた本。
    「日の名残り」の原作者。

  • 短編集。
    “Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall”
    作中で取り上げられている音楽を聴きながら読んだ。

    「老歌手(Crooner)」ベネチア。愛し合いながら別れを決心した老歌手と彼のファンだった母を持つギタリストの出会い。チェット・ベイカー《惚れっぽい私》
    https://www.youtube.com/watch?v=trZfJwj5iYo
    始まりは真実の愛で無かったとしても、暮らしていく中で愛が生まれたにも関わらず、自分が歌手として下ちていることを自覚し別れることにするのは、失うくらいならその前に離れるということか?始まりを信用できないと、相手も自分も信じられないものかもしれない。5作の中では一番好みだった。

    「降っても晴れても(Come Rain or Come Shine)」ロンドン。友人チャーリーとエミリ夫婦の元を訪れたが二人の関係は上手くいっていない。(サラ・ボーンやチェット・ベイカーがエミリの好み、ジュリー・ロンドンやペギー・リーがぼくの好み)サラ・ボーン《ラバーマン》《パリの四月》
    友人たちがあまりにひどくて、感情移入しにくいが、主人公のドタバタはちょっとおかしい。

    「モールバンヒルズ(Malvern Hills)」
    オーディションを受けても受け入れられず、モールバンヒルズの姉の元で夏を過ごすギタリスト。

    「夜想曲(Nocturne)」
    才能を持ちながら売れない顔の悪いサックス奏者。別の男と再婚したい妻と男の申し出で整形をすることになり、術後入院中のホテルで同じく整形を受けた女と交流する。この女は1話のギタリストの元妻。
    男の自分の才能を信じる気持ちと、そのために整形をしたことへの葛藤、自己評価のプライドと否定の間の揺れ動きにも、またもてはやされ芸能界で生きながらも、自分には才能が無いことを自覚する女の男の才能への嫉妬も共感でき、また読んでいて面白く「老歌手」と同じく好みの作品。

    「チェリスト(Cellists)」
    リサイタルを開けてもチケットが売れずキャンセルとなる程度の腕を持つ若いチェリストが、音楽の才能はある(?)が演奏はできない女と出会いチェロの指導を受けるが、女は自分を追ってきた裕福な男と結婚するという。数年後にその地に戻ったチェリストは最終的には音楽の世界で身をたてられなかったようで苦い結末だった。

全90件中 1 - 10件を表示

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語のその他の作品

カズオ・イシグロの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語に関連する談話室の質問

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語を本棚に登録しているひと

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語の作品紹介

ベネチアのサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅を描いた「老歌手」。芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階でセレブリティと共に過ごした数夜の顛末をユーモラスに回想する「夜想曲」を含む、書き下ろしの連作五篇を収録。人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。

ツイートする