- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152090751
作品紹介・あらすじ
青い目で、天使のような顔をしたアラブ系の少年ユネス。彼は、身を寄せる伯父に降りかかった災厄のために、果樹園が立ち並ぶ美しい村リオ・サラドに移り住んだ。初めは新しい土地に馴染めなかったが、やがて、かけがえのない親友を得て、青春の日々を謳歌する。しかし、優美な少女エミリーの出現と高まる戦争の足音が、ユネスと友人たちの絆を引き裂く-歴史の闇に埋もれたアルジェリア戦争を背景にして、少年の成長と愛を流麗な筆致で描き上げる、フランスのベストセラー長篇。
感想・レビュー・書評
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アルジェリアのアラブ系少年が重んじたのはヨーロッパ系の友人達だった。独立戦争の渦中では猜疑心や孤立感に苛まれ怒りは毅然とした言語となり魂が漲る。心理描写が思考させる。エミリーは涙で消し前を見た。愛と自我が歴史を変える。
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アルジェリアに関する小説を初めて読んだ。もし今の時代のようにリアルタイムでアルジェリア戦争が報道されていたら、この出来事をどう捉えていたのだろう。
虐げられる土着の人々と、植民地として開拓し特権を謳歌していた人々。その立場が一変し、アイデンティティを取り戻し独立に沸き立つ者と、土地と特権を失った者へ。現在なら国際社会はどの立場の人に肩入れするのだろうか。
主人公は基本的に何もしないという静観を選択し、悲劇に酔ってる私小説的なスタンスは正直好みでは無い。しかし大多数の人々は目覚ましい行動を起こさない現実を考えると、こういう主人公の言動や思考のほうがリアルなのだろう。
その一方、女性の登場人物からの目線だと、違った景色が見える。主人公や男達が感じる以上に残酷さに直面し、かつ精神的に数段は成熟してるはずだ。
機会があれば、「訳者あとがき」に記載されていたアルジェリア関連の映画や書籍に接してみたい。 -
「カブールの燕」「テロル」が素晴らしかったので期待し過ぎたのか、これはちょっと期待外れ。たしかに最後の一章が感動的であるためにはたくさんの伏線が必要で、そのためにはこの長い前半も必要なのだとは思うけれど...ヤスミナ・カドラの作品の中では薦めないかな。
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アルジェリアの近代史を背景とした大河ドラマのような作品で文章も美しく読みごたえがある。イスラム系住民とヨーロッパ系住民との関係、貧富の差(特に貧困の描写が真に迫る)、内戦、興味が尽きなかった。但し「赤い髪の女」と続いて、昔の恋を一生引きずり続ける男性の話だった(苦笑)この未練がましさに違和感がないんだろうか、どうでしょう特に男性読者の皆さん。しかも相手が絶世の美少女でみんな一目惚れ、本人は青い目の美少年とは、小説にルッキズムというつっこみをしてもしょうがないが、できすぎではあった。
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とてもいい訳でストーリーも飽きさせない。ただ、ちょっと予定調和過ぎかなとも思った。良い意味でも悪い意味でも小説的。ヤシンの『ネジュマ』の超わかりやすい現代版ともいうべきか。
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『社会というものは、若い世代がどれほど血気盛んかでその価値が決まり、若者たちの生きのよさと横柄さが社会を新しくいていく、とのことだった』
煎じ詰めれば確かに愛の物語と呼んでもおかしくはない。色々に張り巡らされた状況設定をきれいに取り除いてしまった後に残るのは、ロミオとジュリエットのような解り易いドラマであると言っていいだろう。しかし、この小説の描く時代と土地のことは背景として読み飛ばしてしまうことができる筈がない。
異邦人、ということばがむくむくと頭の中に湧いてくる。幾つかの異なる歌のフレーズも浮かぶ。そんな歌の言葉やカミュの小説のことを思い返すまでもなく、異邦人は差別する側の意識にも当然存在するけれど、むしろ差別される側の意識に根付くものだと思う。そのことがこの小説の中ではますます強調されている。「選べ!」と言われて積極的なモラトリアムを選んでしまう結果、選択を強いられた場所からは異邦人となる。モラトリアムからは生涯抜け出せない。
誰もが多かれ少なかれ異邦人的思いに捕らわれることはあると思う。例えば新しい学校やクラスの一員となる時。その時に感じる強制的な過去からの切り離しと新しい社会への組み込み、受動的な感じ。それは叫びだすほどではないけれど大いなる違和感ではある。たとえ元からの知り合いが居たとしても、その時に感じているのは孤独感であると思う。まして転校となると、自分も経験があるけれど、入学のようにある程度誰もが同じように異邦人的である状況とは異なり、既に出来上がってしまった社会へ好むと好まざるにかかわらず入り込んで行かなければならず、しんどいものだ。そのしんどさの予感と不安感が自らを異邦人化してゆく負のエネルギーとなる。
その時に感じている孤独感、異邦人的感覚というものは、結局のところ「受け入れられていない」との思いに(たとえそれが自分自身の思い込みに過ぎなくとも)根差すものであると思う。この小説は、その外へ気圧されるような思い、そのことを強く意識する小説だと思う。そしてそれが一つの社会からだけでなく、白か黒かというような二色に分かれている社会の両方から強制される思いであったとすると、その苦悩について想像するだけで身もだえする思いに駆られる。主人公が理性的であろうと葛藤すればするほどに、その苦悩が読む者の側にも自身のこととして忍び込んでくる。
しかしそれが故にこの小説は魅力的でもある。最近、米国の移民二世・三世の書くものが面白いと思っていたのだけれど、この小説を読んでしまうと、それらの作家の描く日常の悩みなども所詮はぜいたくな悩みと呼んでしまうことのできるものに過ぎないのか、とも思えてしまう。愛の物語の部分は、ひょっとしたらなくてもよかったのかも知れない、とも思ってしまう。
異邦人。自分の来し方を思わず振り返ってしまう。帰去来とも言うけれど、本当に自分の帰る場所はあるのか、エトランゼ。 -
[ 内容 ]
青い目で、天使のような顔をしたアラブ系の少年ユネス。
彼は、身を寄せる伯父に降りかかった災厄のために、果樹園が立ち並ぶ美しい村リオ・サラドに移り住んだ。
初めは新しい土地に馴染めなかったが、やがて、かけがえのない親友を得て、青春の日々を謳歌する。
しかし、優美な少女エミリーの出現と高まる戦争の足音が、ユネスと友人たちの絆を引き裂く―歴史の闇に埋もれたアルジェリア戦争を背景にして、少年の成長と愛を流麗な筆致で描き上げる、フランスのベストセラー長篇。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
一気に読める小説としてのおもしろさがたっぷり。アルジェリアの独立戦争に対する知識が自分にあれば、もっと深く味わえたはずなのに残念。それでも、ジョナスは苦悩し、絶望の縁を歩いたけれど、どこか決定的に何かとだれかと向き合うことを避けて来たように思う。彼があとにした「貧困」やジェルルを通して目の当たりにした「差別」をどう感じて生きてきたんだろうと思ったりする。あ~、でもカドラ氏のほかの作品も読みたくなった。
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初めて読む著者で、なんとなくジャケ買いの本だったのですが、大正解でした!
フランス語で書かれていますが、著者の母国であるアルジェリアを舞台に、「天使のような顔立ち」の主人公ユネスの生涯を描いた本。
アルジェリアといったらアフリカにある国・・・くらいしかイメージがなかったので、戦争や貧困が重い影を落としている部分、地中海の太陽の恵みと人生を楽しむ人々、人種や宗教が混ざり合う様子など、新鮮で引き込まれました。
物語もとても丁寧に描かれていて、家族とのつながり、一番大事にした友情、恋、戦争など主人公の成長と共にたっぷりと味わえました。
そしてなんといっても、イサベルがかっこよかった!
彼女のおかげで主人公が何度救われたことか。ヒロインではないけれど、実はとっても重要な役割だったと思います。
読み終えた後に、しばらく余韻に浸りたくなる物語でした。
あとがきに、こんな素晴らしい小説家と同じ時代にいて、次の作品を待てることは幸せだと書かれていましたが(うろ覚え)本当にそう感じました。
次の世代にも誇れる、素晴らしい傑作だと思います。 -
たなぞう「たまたろう」さんの感想(「テロル」)から初めて知った、作家ヤスミナ・カドラ氏。
その後、「テロル」「カブールの燕たち」と読了。
思いがけない詩的な表現と、現実を著す重く苦しい表現の落差にはまる。そして、氏の新作がこの作品。
*** 以下、Amazon「BOOK」データベースより ***
青い目で、天使のような顔をしたアラブ系の少年ユネス。
彼は、身を寄せる伯父に降りかかった災厄のために、果樹園が立ち並ぶ美しい村リオ・サラドに移り住んだ。
初めは新しい土地に馴染めなかったが、やがて、かけがえのない親友を得て、青春の日々を謳歌する。
しかし、優美な少女エミリーの出現と高まる戦争の足音が、ユネスと友人たちの絆を引き裂く―
歴史の闇に埋もれたアルジェリア戦争を背景にして、少年の成長と愛を流麗な筆致で描き上げる、フランスのベストセラー長篇。
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前作の全体を覆う重苦しさとは違い、少年から青年、果ては全てが過ぎた老年に至るまでの成長の物語となる。
想像を絶する、辛い幼年時代。家族が、なぜバラバラにならなければならないのか・・・
そして、アルジェリアという国。
読後、世界地図で位置の確認をしてみた。背景を予習してから読むべきだった。