赤い糸

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著者 : 蘇部健一
  • 早川書房 (2009年11月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152090843

赤い糸の感想・レビュー・書評

  •  2009年の日本ミステリー界に(一部で)衝撃をもたらした「事件」がある。
     『六枚のとんかつ』でメフィスト賞を受賞、直後から「アホバカ・トリック」「トホホミステリ」など空前の賛否を巻き起こした鬼才・蘇部健一が、ミステリーの老舗・早川書房から単行本を出版したのである。しかも堂々の書下ろしだ。
     それがこの『赤い糸』。なんというか映画化もされ同時期にヒットしたケータイ小説と同じという微妙に空気読めてない感じのタイトルも、「もしかして女子高生とかが間違って手に取るのを期待しているのでは…?」と余計な事を邪推させて良い。
     そして内容はまさかというかやっぱりというか、運命の出会いをテーマにした純愛小説なのである。

     修学旅行の夜、少女は左手の小指に違和感を感じ眠りから目を覚ます。彼女の小指を引っ張ったのは赤い糸。果たして誰が、何のためにこんな事を…? 少女はその先に繋がっている誰かを求め、糸をたどってゆくのだが…。(「赤い糸をたどって」)

     この本は短編集の体裁をとっており、「赤い糸を~」の他に「運命の人、綾瀬幸太郎」「出逢わなかったふたり」「落ちこぼれの天使」「ふたりは生まれたときから、運命の赤い糸で結ばれていた」の計5編を収録している。
     蘇部流のすごくベタベタなラブストーリーが展開されるが、最初の方ではそれぞれ独立した短編のように思わせる。しかし三編目あたりからそれぞれの作品が微妙につながっている事に気づくだろう。
     やがて作者の意図が明確になり始めた時、最後の一編で驚きのオチが待ち受けている。

     蘇部健一の恋愛小説、と聞くと、熱心な蘇部ファンであれば『恋時雨』(講談社YA!ENTERTAINMENT)を思い出すかも知れない。これは『届かぬ想い』(講談社文庫)の作中作を実際に出版するという意欲的な企画であったが、あまりにもしょうもないギャグの応酬や、突っ込み所満載の設定など、いかにも蘇部節全開の恋愛小説であった。
     『赤い糸』も同じく、なんだか狙ってるのか天然なのかよくわからないけどとりあえず大真面目に恋愛小説をやっている。まあ『恋時雨』はあからさまにふざけ過ぎな所があったけど、『赤い糸』はまだ割と真剣にやっているようである。

     なにしろちょっと意表をつかれた部分もある。おお、こうくるか、とちょっとドキドキするような場面もあった。しかしまあそこは蘇部作品である。ワンパターンな会話シーンや、雑な構成など、やはりトホホな感じなのである。必要以上に下世話なシーンがあったり、なんだか卑屈で自嘲気味な著者の姿が垣間見れたりするのも蘇部作品らしい。
     そして驚きの「オチ」が待ち受けていることからもわかるように、今回も一応ミステリー小説としての側面を持っている。
     まあ様々な伏線がパズルのピースのようにハマっていくラストはちょっと爽快でもある。

     もちろん、「イラストで驚かせる」という蘇部健一得意の手法も健在。今回も羽住都のきれいなイラストで読者の意表を突いてくる。この驚きを半減させないためにも、読み終える前にパラパラめくってはいけない。ちゃんと前のページにイラストが透けて見えないように工夫までされているのだから。

     しかし早川書房初の蘇部作品なのに、その扱いはなんだかおざなりな気が。なにしろカバーの著者紹介は<第3回メフィスト賞を受賞してデビュー。著作に『恋時雨』などがある>だけ。
     「トホホミステリ」のことも『六枚のとんかつ』のこともこれまでの経歴は一切触れられていない。解説もなし。帯の文章は「普通の」恋愛小説のようなありきたりなコピーのみ。もしかして早川書房、本当に女子高生とか蘇部健一を知らないような層にマジで爆弾を投げ込もうとしているのだろうか?ちょっと邪悪だぜ、早川書房。

     しかしまあそれはそれで衝撃的な読書体験ではある。ケータイ小説かなんかみたいな美しい純愛小説だと思って手に取った小説が蘇部作品とあれば、きっとその人の読書歴の将来は有望だろうな。

     何はともあれ、赤い糸を通して運命の2人が「出逢うまでを描く」という取り組みは面白い。読者にとって「出逢いそうな2人がなかなか出逢わない」というストーリーは実はメタフィクション的な楽しみ方ができるものだと思う。この手法を逆手にとった作品で、1998年のアメリカ映画『ワンダーランド駅で』という映画もあった。出来は全然違うけど。
     また「ちょっとしたきっかけが運命を変える」「誰かが誰かの人生に実は大きく関わっている」というコンセプトも、まるでP・T・アンダーソンが監督した1999年の群像映画『マグノリア』のようではないか。これも出来は全然違うけど。

     早川書房からの刊行でミステリー界にすっかり自らのポジションを確立してしまった蘇部健一。今後も目が離せないようだ。

  • 「赤い糸」の短編集かと思えば・・・

    ホロリとさせられたりして自分的には
    よかったです。

    最後のお話で「ほぉー」ってキモチにさせられて

    「読めば必ず幸せな気持ちになれる恋物語。」って書いてあっただけのことはあると思った1冊。

  • う~む。評価が難しい。
    それぞれは、作者らしいバカミスっぽいんだけど、最後にそれらをまとめて、幸せな感じになっている。。。
    でも、なんだかなあ。。。

  • どうして新刊が出たら手に取り読んでしまうのだろうか。特に人に勧めようとは思わないのに。この作者の作品にはどこかに(あるいは、あからさまに)、かつて「バカな男子」だった人向けの部分がある。この本も例外ではない。
     ところどころで、どきどきしながらページをめくろう。

  • それぞれ独立した短編集ではあるのですが、最後の一篇を読むと、すべてがつながります。それまでのストーリーは、いかにも小説だよなという雰囲気を漂わせながら、オチのところではリアルなと言いますか、単純なハッピーエンドにはしない結末になっています。個人的には堕ちこぼれの天使が運命の赤い糸で結ばれた二人のためにいろいろ奮闘するもことごとく失敗に終わる話が愉しく、また最後の一篇がやはりホロってさせられました。

  • あの「六とん」と同じ人...だよね? なかなか恋愛ものとしても
    良く出来たストーリーで、上手く行く恋愛もそうでない恋愛も
    それぞれ楽しく読めますねー。赤い糸...運命の人っているのかな?
    誰もが一度は考えたことあるだろうし、上手くいった人も、失敗
    した人も未だ何処かにいるかも...て思ってるよね...きっと。

    で、流石「六とん」それだけじゃ終わらない!!
    しっかり全編を通してミステリに仕上げてくれています。
    その着地もしっかり恋愛ものとして完結させてるし!!
    うーん...ニクい(笑)。
    出来たら「六とん」を知らない女子たちに詠まれて欲しい作品です!

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赤い糸の作品紹介

修学旅行先で、真夜中に目を覚ました少女は、左手の小指に巻かれた赤い糸に気づき、その糸をたどっていくが…(「赤い糸をたどって」)。百発百中の占い師から「あなたは将来、この人と結婚する」と言われた彼女は、顔も知らぬその男性に逢いに行こうと決意する(「運命の人、綾瀬幸太郎」)。まるで運命としか言いようのない、いくつもの奇蹟が織り成す、読めば必ず幸せな気持ちになれる恋物語。

赤い糸はこんな本です

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