ぼくらのひみつ (想像力の文学)

著者 :
  • 早川書房
2.36
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本棚登録 : 279
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091284

作品紹介・あらすじ

こんなこと信じてもらえるだろうか。ぼくの時間は2001年10月12日金曜日の午前11時31分で止まってる。喫茶店でコーヒーを飲む、部屋に戻り昼寝をする、起き上がってぼーっとする、文章を書く、顔を洗う、町を歩く、これだけしてもずっと11時31分。そんなとき京野今日子と出逢ったから、ぼくのせいで彼女も11時31分にとどまることになってしまった。やがてぼくらは思い立って、ある計画を考えるのだけど…止まっているこの時から、ぼくらはゆっくり歩き出す。スローモーションの新・青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 時間停止もののSF小説。と見せかけた、何だろうこれは、変な小説。

    設定としては、主人公はなぜか自分だけ、2001年10月12日午前11時31分の世界に取り残され、何をしようが1分たりとも時間が進まない状況に身を置かれる。
    その状況は何とも特異で、外に出てみれば人々は普通に動いている、暮らしている。別に停止していない。
    でも主人公がいる空間だけ、時間は11:31で止まっている。

    しかもこの「シチュエーション」、なんだか緩くて、本来その時間より後にしか起こらないはずのことが平気で起きたり、11:32分発の電車に乗れてしまったりで、辻褄は合わない。(たぶん、最初から合わせるつもりはない)

    何だなんだ、と思いながら読み進めていくと、結論で初めて気づく。こいつぁSFの皮をかぶった心理小説(?)だったのか。

    主人公は時間が停止する前も、朝起きて漫然とバイトに行き、ご飯を食べて、帰って寝るだけ、という無気力な生活を送っていた。
    時間が停止した後も、泥棒したり悪戯したり、しょうもないことをして過ごす。それに飽きたらあとは本を読んで、ノートを書くだけ。

    行きずりのセックス中毒の変な女と同棲を始めても、これっぽっちも生活を変える気がない。せっかく旅立とうとしても気鬱になってぶっ倒れる。

    最後の最後、背中に張り付いていた麻袋は肥大化して「ぼく」を圧し殺し、そして新たな「ぼく」にとって代わる。
    新たな「ぼく」は行動派だ。想像力を駆使して行動に出る。

    物語はここで終わる。
    きっとこの後、時間は動き出すのだろう。
    人間、生まれ変わろうと思えばたった1分の決断で、古い自分を捨てて生まれ変われる。
    その為のチャンスを活かせない。運命の人をあてがわれても、一歩を踏み出せない、踏み出したあとの世界を想像できないものはみじめに死んでいく。
    そういうことなんだろうな、と一人得心して、それで良かったこととして読了した。

  • 設定は面白いのに、いろいろ放り出したまま終わった。つじつま合わせとか解決とかはなくていいけどあまりにも「なぜこうなるのかわからない」だけで進みすぎ。それを気にしなくてすむだけの魅力がなかった。

  • ゲテモノだった。表紙につられて読んでみたらとんでもない目に遭った。(もちろんこの本には、ペガサスも妖精もお花畑も登場しません。麻袋は出てきます。)

  • 絵本のような世界観に惹かれて借りてみた本。
    理解できそうでギリギリ理解できない話だった。そもそも語り部の「ぼく」が理解できないものを一読者が理解できるはずがなかった。
    「ぼく」の自分や世の中に対する疑問と悩みを「ぼく」、現実世界で前に進もうとする「ぼく」を「麻袋」が象徴しているのかな?と思った。
    途中までは馬鹿正直にエンドレスエイトよろしく2001年10月12日の午前11時31分を繰り返している男のSFモノと思って読んでいたけど、多分違う。空想か幻覚か深層心理。
    人間の有限な人生を無限に近い1分間との対比によって暗示し、終盤の今日子の「老いてるんだよ、あたしたち。」で決定的に表現している感じがした。それにしては「ぼく」と関わる人達の表現がリアルで、やっぱり違うのかな…と思ったり。
    時間を置いて読み直したらまた違う見方ができそう。

  • 図書館の返却棚にあり、題名と表紙に惹かれ、借りた。

    表紙は、色とりどりです。

    物語は、とても掴みづらかったです。
    主人公のぼくは、2001年10月12日金曜日の午前11時31分で止まっている。
    そして、彼の背中には謎の麻袋がある。

    時間軸の物語、難しい。
    よくわからないのだ。
    彼自身、時間が止まってからか、不特定多数の人と、
    時間を共に過ごしてなかったりして、
    一体どうなってるんだかあまり把握出来なかった。

    ただ、最後の数ページを読んでると、
    現実を考えると、病のような、
    ぼくだけが、時間が止まってる日々の中で、
    幻覚を持ちながら過ごしているのかなぁと思った。
    だからといって、
    ぼくが、時間から逃避したいほどの、
    過去のエピソードなどがないので、
    う〜ん、なんだったんだろう?

    その中で個人的に嬉かったのは、
    参考文献に、ヴァージニア・ウルフのオーランドーが出てきたことだ。
    去年憧れの、川久保玲さんが衣装を担当したことをきっかけに、
    とても気になった物語でした。
    読んでみたいな。

    今回、藤谷浩さんの作品を初めて読んだので、
    また別の作品を読んでみたいと思いました。

  • 2001年10月12日金曜日11時31分で時が止まってしまった「ぼく」の話。背中には正体不明の麻袋がくっついて離れない。誰かにこのおかしな状況を伝えようとノートを書き続けるが、麻袋が大きくなるにつれて書くことがどんどん意味不明になっていく。

    個人的には、時が止まってしまったから「ぼく」は意味のないことばかりしてしまうけど、時が止まっていなくても人は同じように意味のないことを繰り返しているのではないのかという警鐘だと受け取った。徐々に重くなる麻袋は老いを表現していて、1冊を通して人の人生を暗喩しているのではないかと感じた。

  • Twitterのあやふや文庫で、麻袋が背中から取れなくなった男の人の話、つって出てきてて、何か文学してて面白そうだなと思って図書館で借りてきました。
    最初は軽い口調で、時が止まっているんだ!みたいな感じで始まっててなんやこれは?と思ったけど、男の人がぐだぐだうじうじずっと何かを考えてる系の、めちゃくちゃ文学してたと思うんだけども、何でこんな語り口にしたん??ときどきそうなってないとことかあって、わざとなんかわからんけど落差がすごくてそれは違和感あった。
    話自体は面白かった。青春小説やな。

  • 48:これまた感想の書きにくい作品でした。一読して振り返れば、ああつまり、これはこういうことなのね、とわからなくもないのですが、読んでいる間は(特に後半のすごい見開きその1)大丈夫なの、終わるのこの話? と不安で仕方ありませんでした。麻袋が大きくなってきたあたりから、麻袋の正体がわかりかけてきて、すごい見開きその2で不安がさあっと晴れて。これがもし作者さんの意図したところだったら、すごい。でも、難しい。積極的にお勧めはしにくいけど、三崎亜記や古川日出男のような、「日常から少しだけ違う層にある日常」が平気な方はぜひ。

  • 不思議な世界です。長い休みのとき、時間がとまったような気がするときがある。ずーっと家に一人でいると、夜なんだか、昼なんだか。休みだったのか、夢なのか。思い立って外にいくと、自分以外のみんなが普通の時間を過ごしていて。自分だけが違う世界に生きているかのような、いや夢の中にいるかのような気がするときがある。そんなこと筆者もあったのかな。

  • ようやく読んだが、読み通すのがきつかった。

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)でデビュー。2014年、『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞。主な作品に『おがたQ、という女』(小学館)、『下北沢』(リトルモア/ポプラ文庫)、『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、『船に乗れ!』(ジャイブ/ポプラ文庫)、『我が異邦』(新潮社)、『燃えよ、あんず』(小学館)など多数。エッセイ集に『小説は君のためにある』(ちくまプリマ―新書)など。

「2021年 『睦家四姉妹図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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