- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091635
作品紹介・あらすじ
ホットプルームの活性化による海底隆起で、多くの陸地が水没した25世紀。未曾有の危機と混乱を乗り越えた人類は、再び繁栄を謳歌していた。陸上民は残された土地と海上都市で高度な情報社会を維持し、海上民は海洋域で「魚舟」と呼ばれる生物船を駆り生活する。陸の国家連合と海上社会との確執が次第に深まる中、日本政府の外交官・青澄誠司は、アジア海域での政府と海上民との対立を解消すべく、海上民の女性長・ツキソメと会談する。両者はお互いの立場を理解し合うが、政府官僚同士の諍いや各国家連合の思惑が、障壁となってふたりの前に立ち塞がる。同じ頃、「国際環境研究連合」はこの星が再度人類に与える過酷な試練の予兆を掴み、極秘計画を発案した-。最新の地球惑星科学をベースに、地球と人類の運命を真正面から描く、黙示録的海洋SF巨篇。
感想・レビュー・書評
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華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)
https://twitter.com/vivahorn/status/1715221812572012675
華竜の宮(下) (ハヤカワ文庫JA)
https://twitter.com/vivahorn/status/1760206476751372540
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最高 世界観、キャラクター、緻密な設定
とんでもない小説
この世界観だけで白飯3杯はいける
二次創作への展開とか、短編集の展開とか、どんどんいける
これが好きな人は『深海yrr 』とかゲーム『サブノーティカ』とかも好きと思う
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世界観が完璧すぎる!!
多くの陸地が失われた25世紀のお話。
陸上民と海上民と別れて生きている人間たち。
海上民は、魚船と共に暮らしている。
陸と海の民の確執、陸の組織たちの思惑、陰謀が事細かく表現されていて、まるでその世界にいるようだった。
海上民と魚船の結びつきがとても深く、音でやりとりする様子などは、とても幻想的だった。
タイファンと月牙の関係も素敵すぎる。同じ時に生まれた、海上民と、魚船。双子のような関係なのか。
また、と青澄と、マキの関係も単に機械と人間ではなく、青澄の心によりそうパートナーとして、深い結びつきを感じた。
青澄の外交官としての矜持は、感動してしまった。希望を感じる読後だった。 -
政治
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『感想』
〇交渉という暴力ではなく、人間に与えられた知性を使って物事を解決していこうという青澄そして師匠の間宮の信念は素晴らしいと思った。そしてそれは相手がそう思っていなかろうが関係ない。それができる人がもっと増えたなら世界はもっとよくなるだろう。
〇しかし力を手に入れられる人は、権力闘争にどんな手を使ってでも勝ってきた人だったりする。だからといって自分もそうなる必要はない。自分が正しいと思うことをできる人が、本当に力を持っている人なのかな。
〇環境を人間に合わせるのではなく、人間を環境に合わせるよう改造する。この先それが当たり前になることがあるのだろうか。それはもはや人間と呼んでいいのだろうか。
〇海水上昇により人が住める土地が沈んでいくことは現実としてあり得る。でもその後の海で生きるための改造を施された海上民のような存在は生まれるだろうか。ここから現実的な恐ろしさを感じない自分と関係のない世界を自分が旅することとなった。
〇特に小説は文章から想像力を膨らませて自分なりの映像を作り出すことが楽しいのだと思っているが、具現化できない言葉が多いところが大変だった。例えば魚舟と獣舟。魚だと思えばよいのか、舟に生命があると思えばよいのか。
『フレーズ』
・腐敗した権力・腐敗した社会という言い方は間違っているのだとリーは言った。腐敗こそが人間の本質、どうやっても切り捨てられない要素だと。権力を得るから腐敗するのではなく、権力は、人間の腐敗した部分を見せやすくしているに過ぎない。(p.174)
・人間は劇薬と同じだ。その人物が置かれている立場によって、毒にも薬にもなるという意味だ。当人の本質が善か悪かなんて、まったく関係がない。ある立場の中でどう振る舞うか、他人がそれをどう見るか――その違いだけだ。(p.203)
・基本的な知性の構造が同じなら、論理でなんとかできる部分のほうが大きいからだ。価値観の違いなど、些細な差に過ぎないんだよ。(p.339)
・交渉というのは、価値観の異なる他者との対話だ。だから、ときにはまったく解決がつかない場合もある。どこまでいっても、平行線にしか見えないことも……。けれども、それに対して知恵を絞り、言葉を絞り、体力を振り絞って、両者が進むべき道を模索しなさい。その行為は、人間が最も知的である瞬間なんだよ。たとえその場で、どれほど乱暴な、どれほど感情的な言葉が飛び交ったとしても、最後まで決してあきらめるな。間接的な効かせ方とはいえ、言葉は、暴力を止められることもある。それを忘れてはいけない。(P.340) -
陸地の大半が水没した25世紀。人工都市に住む陸上民と、遺伝子改変で海に適応した海上民との確執が次第に深まる最中、再び人類にとって過酷な試練が近づいていた。海洋SF巨篇。
久しぶりにSF作品を読んだ気がする。おもしろかった。人口都市や遺伝子改変など、現実に近づきつつあると感じられる。人類の生存がかかった状況でも、他の生き物を愛おしく思う気持ちがなくなったら、人間性を失うことになるということをあらためて思う。
アシスタント知性体の存在、というか思考?が興味深かった。
人間の雑多な思考、その多くはただのノイズだが、それを音楽のように聴いている。音程は外れ、リズムは乱れ、しっちゃかめっちゃかで、どうしようもない。人はそれこそを感情と呼び、人間性と呼び、疎ましく感じながらも、愛おしく思うんじゃないのかい。いくら分析しても答えが出ない、理解できない、そういうものが人間の中にあることに強い興味を持っている。だから勝手にやめないで欲しい。一度演奏を始めたからには、最後まで弾ききって欲しい。という。
パートナーである人間にとって、影(シャドウ)に近い存在
体を持たない彼らにとって、記憶こそが身体である
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ホットプルームの活性化により、水面は250m近く上昇。多くの陸地が水没し、人類は未曽有の危機にさらされた。数多の混乱を乗り越えた25世紀、陸上民と海上民の住む世界が、この物語の舞台だった。
骨太なSFで、読み始めてすぐ心が震える程幸せで仕方がなかった。読み進める手が止まらず、一気に読んでしまった。
物語は案外重く、生きる姿勢だとか、職業人としての矜持だとか、価値観の違う者同士が平和に生きることについてだとか、考えさせられる。
ちょうど、ロシアとウクライナのことが何度か頭をよぎった。
―≪基本的な知性の構造が同じなら、論理でなんとかできる部分のほうが大きいからだ。価値観の違いなど、些細な差に過ぎないんだよ≫
―≪交渉というのは、価値観の異なる他者との対話だ。だから、ときにはまったく解決がつかない場合もある。どこまでいっても、平行線にしか見えないことも・・・。けれども、それに対して知恵を絞り、言葉を絞り、体力を振り絞って、両者が進むべき道を模索しなさい。その行為は、人間が最も知的である瞬間なんだよ。たとえその場で、どれほど乱暴な、どれほど感情的な言葉が飛び交ったとしいても、最後まであきらめるな。間接的な効かせ方とはいえ、言葉は、暴力を泊められることもある。それを忘れてはいけない≫
読み進めていくとわかるけれど、無情で非情な出来事が山のように出てくる。
―「腐敗こそが人間の本質、どうやっても切り捨てられない要素だと。権力を得るから腐敗するのではなく、権力は、人間の腐敗した部分を見せやすくしているに過ぎない」
人間の醜い部分もありありと見せてくる。背筋が冷たくなるようなこともあった。
それでも、どこかに救いがあるんじゃないかと、そう信じて読み進めるしかなかった。ネタバレになってしまうといけないから、内容についてはこれ以上書かない。
価値観の違う者同士が共に暮らせる、希望の灯を持った社会に、私たちもいつかたどり着けるといいし、そのために自分に何ができるんだろうか、そんなことを考えながら読み終えました。 -
SF作品としては中々に重厚な設定で,地球惑星科学から地政学,交渉術まで幅広い知識を総動員したものとなっている。500ページ超の上下2段組という量を読み切るだけの,バランス感覚としての筆力にも優れる。
エンターテイメントとしての質は高いことは前提で,-1点したのはcriticalの欠如への疑問による。SDGsみたいで。 -
ダメだった。合わなかった。
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思惑が重なると上手く回らないのが常なのですね。