予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091666

作品紹介・あらすじ

これまでの経済学では、人は合理的に行動するものと考えられてきた。だが、本当にそうだろうか。本当はおなじ味でも、雰囲気のいいカフェのコーヒーにはファストフード店のコーヒーより高いお金を払っていないだろうか?また、上等の靴下が必要だったのに、一足ぶんおまけされていた安物の靴下を買ってしまったことは?そう、人は不合理な行動をとるものなのだ。経済行動に大きく影響しているにもかかわらず、これまで無視され誤解されてきた、人の不合理さを研究するのが、行動経済学という新しい分野である。ユニークで愉快な実験によって、人がどのように不合理な行動をとるのかを系統的に予想することが可能になっている。また、「おとり」の選択肢や、価格のプラセボ効果、アンカリングなど、人の理性を惑わす要素を理解するとき、ビジネスや投資、政治の世界でも、驚くほどのチャンスがもたらされるのだ。行動経済学研究の第一人者がわたしたちを動かすものの正体をおもしろく解説し、話題になったベストセラー行動経済学入門に、新たに2章を書き下ろし、刊行後の反響を受けた考察を追加した増補版。

感想・レビュー・書評

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  • 人間の行動は不合理にあふれていて、しかもその不合理には規則性がある…。

    デジタル大辞泉によると「不合理」の意味は、「道理・理屈に合っていないこと。筋の通らないこと。また、そのさま。」だそうです。

    この本は不合理な人間の行動を、実験から証明したものです。
    15におよぶ各章であきらかにされる不合理な規則性は、とても興味深いテーマばかり。
    不合理なのに規則性があるなんて、おもしろいですよね。

    わたしはこの本を読みきるのに、ほぼ2週間かかりました。
    なぜかというと、各章とも語り口は軽やかなのに内容がとても濃く、1章読み終えるごとに、長編小説冊読み終えるくらいのエネルギーを使っていたからです。

    読み終えたあとも、自分の身近にこれと似たエピソードはなかったかなと考えてしまうため、とても頭の力を使いました。
    そのため1日1~2章ずつ読むのが限界で、結果、1冊読み終えるのに2週間かかってしまったわけです。

    不合理な行動は、人にプラスもマイナスも、もたらします。
    しかしこの不合理性が備わっていることこそが人と機械のちがいそのものです。

    「予想どおりに不合理」を読んでいると、人生をおもしろく生きるためのエッセンスは、不合理性を自覚して生きることのなかに隠されているのではないか…と思えてきます。

    2週間かけてこの本を読みきることは、一見効率が悪く、とても不合理な行動に見えます。
    けれど、人に備わっている不合理な法則を知って生きることで、不合理な選択をかわせたり、不合理性を逆手にとっておもしろがることもできるはずです。

    15章で筆者はこのように述べています。
    「たとえ不合理があたりまえのことであっても、だからどうしようもないというわけではない、ということだ。いつどこで間違った決断をする恐れがあるかを理解しておけば、もっと慎重になって、決断を見なおすように努力することもできるし、科学技術を使ってこの生まれながらの弱点を克服することもできる。」(411ページ)

    人間の行動の不合理性に目を向けることは、弱点をさらされているような気持ちになり、目を背けたくなるかもしれません。
    けれど、人間は機械のように合理的には生きられないのもまた事実です。

    そして人間の不合理な規則性をなくすことができないのならば、不合理性を知っておくことは、生きる上でとても大切なことです。

    不合理なのにおもしろい。
    それが人間という生き物なのかもしれません。

  • タイトル通り、いやな予想した通り、人は不合理、不条理な行動を選択してしまう、というお話。
    どこかの本で読んだことのある例題が多々あったけど、それは逆で、ここに載っていたものがわかりやすいために他で引用されていたのね。
    内容が分かった反面、モヤモヤする結果だな。。
    306冊目読了。

  • 私たちは自分の行動や意志を自分でコントロール出来ていると信じている。でも実際は簡単に不合理な行動をとってしまう。
    この本でとりあげられている様々な例は悔しいが自分にも覚えがあった。自分含め人間にはそういう側面があると認めることで、世界の見方が少し変わると思った。
    この本の中では数々の実験がとりあげられているがどの結果も非常に興味深く、これによって行動経済学に対しての興味も大きくなった。

    2023.07.30 読了

  • 我々は常に合理的に行動しようと心がけている。しかし本書(行動経済学)によれば、知らず知らずのうちに、多くの不合理な行動を行っている。本書では全て実験から得られた、それらの原理を非常にわかりやすく解説している。
    これらの原理は、マーケティングなどにも活用されていて、我々はコントロールされてしまっているのである。
    全ての原理を意識してコントロールされないようにすることは難しいが、そういう原理が働いていることを意識するだけでも意味のあることだと思う。

    本書で扱っている原理。
    ・常に比較する(比較しにくいものは無視する)
    ・三択では真ん中を選ぶ
    ・恣意の一貫性(最初の価格が「恣意」的でも一度意識に定着すると、アンカーとしてその価格を基準に比較する)
    ・自分の決断が合理的だと正当化する
    ・出費の痛み(自分のものを手放すときの不快さ)のため「無料」の力はすごい
    ・社会規範(モラルで判断すると市場規範(お金で判断する)
    ・社会規範の中に金銭が加わると市場規範に従ってしまう
    ・性的な興奮状態では適切な判断が出来なくなる
    ・自分の所有物を過大評価する
    ・予測した通りに感じ取る(高級レストランでは何でも美味しく感じる)
    ・価格と効果は比例関係(効果な薬ほどよく効く=プラセボ効果)
    ・みんなが信用し協力すれば社会全体の価値は最大化するが、短期的には信用を裏切ることで個人が利益を得られてしまい、不信が連鎖してしまう。
    ・チャンスがあれば不正をしてしまうが、誘惑の直前に宣誓や規則など正直さを思い出させると不正を止める。
    ・人は選択する際に他人の選んだものに影響されてしまう

  • 2021年1月14日再読
    「無料には気をつけよう」というのが2回読んだ一番の感想です。タダほど高いものはない。

    <忘備録のようなまとめ>

    「私の考えでは、わたしたちは不合理なだけでなく、
    「予想どおりに不合理」だ。つまり不合理性は
    いつも同じように起こり、何度も繰り返される。(P19)

    1章
    相対性の真相
    ・松竹梅なら竹が売れるので、松を設定しておこう。
    ・夜遊びには自分より少しだけ魅力に欠ける
    友人(おとり)を連れて行こう。
    ・相対性の色メガネはその環境に限定的かも
    しれないので後から幻滅しないように。

    2章
    需要と供給の誤謬
    ・「人に何かを欲しがらせるには、それが簡単には
    手に入らないようにすればいい。」(P55)トム・ソーヤーより
    ・スタバはなぜ成功したか
    ・自分の決断が胸の奥底で望んでいるものから
    来ている場合、その決断が合理的に見えるように
    仕立てたくなる。

    3章
    ゼロコストのコスト
    ・無料!であることに感動して実際よりずっと
    価値あるものと思ってしまうのは、人間が失うことを
    本質的に恐れるからではないか。

    4章
    社会規範のコスト
    ・善意の行動に給与を出すと人はその行動に熱心ではなくなる。
    ・社会規範は一度でも市場規範に負けると、まず
    もどってこない。(P126)

    5章
    無料のクッキーの魔力
    ・クッキーを無料で提供すると、提供された側は
    全員にいきわたるように気を使うが、有料になると
    気を使わなくなる。

    6章
    性的興奮の影響

    7章
    先延ばしの問題と自制心
    ・自制心で先延ばしを止めようとするより
    人に期限を決めてもらうときちんと守ることが
    易しくなる。
    ・決意表明をすることは有効である。
    ・Eメールチェックのし過ぎはNG。

    8章
    高価な所有意識
    ・自分の所有物を過大評価してしまう傾向は、
    人の基本的な傾向であり、自分自身に関係のあるもの
    すべてにほれこみ、過度に楽観的になってしまうという、もっと全般的な性向を反映している。(P344)

    9章
    扉をあけておく
    ・私たちは、(選択の)扉をあけておきたいと
    いう不合理な衝動を抱えている。

    10章
    予測の効果
    ・人を映画に誘うとき、とても評判のいい
    映画だと言いそえれば、相手をいっそう楽しませる
    ことができる。(P378)
    ・自分の観点にとらわれているなら、ほとんどの
    争いは中立的な第三者に約束事や規則を決めて
    もらう必要がある。
    ・音楽を楽しむには環境による期待が大事。

    11章
    価格の力
    ・近年になるまで、ほとんどの薬はプラセボだった。
    ・価格と品質の関係について気にするのをやめると
    効果が少ないと決めてかかる可能性がはるかに少ない。

    12章
    不信の輪
    ・一度むしばまれた信用を再建するのはむずかしいと
    いうことだ。(P347)

    13章、14章
    わたしたちの品性について その1、その2
    ・人々はチャンスがあればごまかしをするが、
    けっしてめいっぱいごまかすわけではない。(P370)

    15章
    ビールと無料のランチ
    ・わたしたちはいんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である、ということだろう。(P410)
    ・不合理があたりまえのことであっても、まちがった決断をする恐れがあるかを理解しておけば、もっと慎重になって、決断を見なおすようにに努力できるし、科学技術を使ってこの弱点を克服できる。

  • ・人に何かを欲しがらせるには、それが簡単には手にはいらないようにすればいい
    ・社会的な関係と市場的な関係の二股はかけられない。あいまいな好感度は避けビジネスだと割りきる
    ・従業員と社会的関係を築くには、1000ドルの現金よりも1000ドルのプレゼント
    ・憎悪をこめたメールでやり返す前に、草稿フォルダーに2、3日入れて頭を冷やす
    ・自分の好きなものと、嫌いだけれど自分にとってよいものとを組み合わせ、欲望と成果を結びつける工夫をする
    ・<風と共に去りぬ>のレットのセリフ。「正直言って、おれには関係ない」
    ・べつの生活やちがうタイプの友人に移っていった人たちにクリスマスカードを送るのはやめよう
    ・どちらでもいいことで決断に迷うときは、これを簡単な決断だと考える
    ・雰囲気や期待が喜びに大きく影響する。モナ・リザの微笑みが美しく謎めいているのは、そう教えられたから
    ・人のごまかしをやめさせるには、十戒ような規範を読ませたり、ちょっとした文面に署名させる

  • 行動経済学で最も面白い本を一冊と言われれば間違いなくこの本。行動経済学の理論体系を誰でも分かりやすい読み物としてまとめている。アリエリーの研究者としての目のつけどころは実に面白い。

  • 目から鱗が落ちるとはまさにこの本を読んだ感想を的確に表した言葉である。少なくとも自分にとっては。
    朗読を聞くことにお金を払う意識ともらう意識が恣意的に作り出せることや、ものの値段に対する感覚がいとも簡単に操作されてしまうことなど、人がいかに論理的ではない生き物かということが、実験結果とその考察により説得力を持って書かれている。
    図書館で借りて読んだけど、買ってしまいたい!

  • 人間の行動の不合理性が、実験や論拠に裏付けされて証明されていく論法は気持ちがよいし、身近な事例が列挙されるので堅苦しくなくてよい。経済学の至上とする合理性が市場経済という世界での行動をベースとしている一方で、、本書の「行動経済学」では人間の社会規範ベースの世界における別のロジックに由来する行動の解明は面白かった。その二つの世界を介在する人間の行動の非合理的な要素を掘り下げることは人生のTipsになるのかもしれない。

  • 画像はないが、実験が多くしかも大学のキャンパスを中心としたものである。したがって、学生が卒論でじっけんするための十分な方法を提供する。しかも結果が面白い。心理学の教科書としても使える。

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