予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

  • 早川書房
4.05
  • (111)
  • (188)
  • (68)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 1468
感想 : 146
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091666

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ■価格について、最初のアンカーの影響は大きい

    ■自己判断の合理性追求:自分の判断は理に適っていると思いたい心理

    ■無料!の魅力は、失うものが無いこと。
    無料!になると、悪い面を忘れ去り、提供されているものを実際よりずっと価値あるものと思ってしまう。
    無料!のものを選べば、目に見えて何かを失う心配はない。ところが、無料でないものを選ぶと、まずい選択をしたかもしれないという危険性が残る。

    ふたつの品物からひとつを選ぶ時、無料の方に過剰に反応してしまうことが少なくない。

    ゼロの概念は、時間にもあてはまる。
    ある活動に費やした時間は、ほかの買う同から奪われた時間だ。
    例:美術館の入場無料の日(入場料は大して高く無いのに、入場無料の日になると大混雑する)

    値段ゼロは単なる値引きではない。ゼロはまったく別の価格だ。
    2セントと1セントの違いは小さいが、1セントとゼロの違いは莫大だ。

    何かが無料!だと、誰でもちょっとばかり興奮し過ぎること、その結果、最善の利益をもたらす決定とは別の決定を下す場合があること


    ■なぜ楽しんでやっていたことが、報酬をもらったとたん楽しくなくなるのか

    社会規範が優勢な世界と市場規範が規則をつくる世界に同時に生きている。
    社会規範:社会的交流。友達同士の頼みごと、良かれと思って手伝ったこと、社交性・共同体の必要性
    市場規範:市場的交流。賃金、価格、賃貸料、利息、独立独歩・独創性・個人主義、対等利益・迅速な支払い

    市場規範が台頭するには、お金のことを口にするだけで(お金のやりとりがまったく無くても)十分である。しかし、市場規範はもちろん労力のみの問題では無い。

    社会的交流に市場規範を導入すると、社会規範を逸脱し、人間関係を損ねる。
    一度この失敗を犯すと、社会的な関係を修復するのは難しい。
    例:託児所の遅刻に罰金を科した→罰金はうまく機能しないばかりか、長期的に見ると悪影響がでる
    罰金無し:遅刻は後ろめたい・罪悪感→時間通りに迎えに行こう
    罰金導入:お金を払うのだから遅刻するもしないも自分が決める
    数週間後、罰金廃止:罪悪感は復活せず。遅刻を続け、むしろ、遅刻がわずかに増えた。=罪悪感も罰金も無い!

    社会規範は忠誠心を育てる。さらに、人々を奮起させる。
    プレゼントは経済効率が悪いものの、社会の潤滑油として重要だ。
    例:恋愛関係に年収など市場規範を持ち込む。
    男性の利点(財産)は年月とともに増えるが、女性の利点(外見)は年齢とともに減る→悪質な商取引→経済上合理的な行動は、買うよりリリースすることだ。

  • 不合理な行動や決断には一定の規則があり予見できるとのこと。うなづけるエピソードが満載。

  • 行動経済学という分野の本を初めて読んだが、とても面白かったと思う。

  • 私たちが日常生活でくだす決断は、合理的ではなく非合理的である。行動経済学は、人がどのように行動すべきかではなく、実際にどのように行動するかにもとづいているほうがはるかに理にかなっている。

  • 今年度はゼミで行動経済学を勉強することになったため、そのはしりとして行動経済学的観点から書かれた本書を読んでみた。

    内容はとても新鮮で面白く分かりやすい。
    従来の経済学的考え方と行動経済学的な考え方を対比して書かれているので、2つの差を理解することも容易である。

    全15章からなり、それぞれ完全には独立していないものの、1章ごとに完結している。特に印象に残ったのは「ゼロコストのコスト」「先延ばしの問題と自制心」「扉をあけておく」の3章である。
    ”無料”と”有料”の差は何なのか、どうして先延ばしをしてしまうのか、なぜ人は選択肢を残しておきたがるのか、などを実験結果から考察している。

    すんなり読める面白い本だと思う。

  • ”わたしたちはみんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である。””わたしたちは、目の錯覚に引っかかるのをどうすることもできないように、心が見せる「決断の錯覚」にころりとだまされてしまう。”
    これらは、本書の結論にあたる部分で語られることばである。
    本書では、主に人間の決断に関して、それが如何に不合理なルールによっているかが明かされる。
    そう、不合理ではあるがそこには一定のルールがあるのだ。
    本書を読めば、一見説明不能な集団の行動や決断に、実は一定のルールが存在することが分かる。人間の不合理さの中にルールを見いだすことは知的好奇心の充足とともに、ある種の虚しさを感じさせるが、知的な人間であろうとするならば、知っておかなければならないことだと思う。

    大胆な仮説を一般に共感し易い実験で実証した、名著だと思う。
    ぜひ手許においておきたい。

    図書館にて。

  • * 1章: 相対性の真相 なぜあらゆるものは - そうであってはならないものまで - 相対的なのか
    - おとり効果、A とBとA'があると、A を選ぶ
    - 大きい円と小さい円
    - 給料に対する男の満足度は、妻の姉妹の夫より多く稼いでいるかどうかで決まる


    * 2章: 需要と供給の誤謬 なぜ真珠の値段 - そしてあらゆるものの値段 - は定まってないのか
    - マーク・トウェインがトム・ソーヤーについて書いた「トムは人間の法則を発見した。欲しくなるようにするには、それが簡単に手に入らなくすればよい」
    - 価格の「刷り込み」
    - 価格のアンカー、アンカリングによる恣意の一貫性があるか。学生番号を元に、ワインの落札価格を決定。
    - ハーディング(herding: herd「群衆」), 行列ができている店がいい店のように思えてしまう
    - 自己ハーディング、自分の過去の決定が正しいものだったと正当化する
    - スターバックスは他と違う「入店経験」を提供することで、価格設定を新しいものとして刷り込んだ。
    - マイナスをプラスに変える、朗読に対して「10ドルもらう」か「10ドル支払うか」、最初のアンカリングによって、未来の決定に影響がでる
    - 自分に合う車が出てくるまで質問の回答を調整する、=> 合理的な判断をしていると思っているが、自分の得たいものを正当化したいだけ


    * 3章: ゼロコストのコスト なぜ何も払わないのに払い過ぎになるのか
    - 無料!の力
    - 同じ10セントの値引きでも、それが無料になるといきなり魅力が増す => 人は本能的に「失う」ことを恐れる
    - 無料で10ドル分のamazonギフト券を受け取るのと、7ドルだして20ドル分のギフト券を受け取るのとでは、どちらがよいか?


    - 出費の痛み
    -- 痛みの逓減性、請求額が高いほど痛みは増すが、そこから1ドル増すごとに増える痛みの量は小さくなっていく


    * 4章: 社会規範のコスト なぜ楽しみでやっていたことが、報酬をもらった途端楽しくなくなるのか
    - 市場規範と社会規範
    - お金よりプレゼントのほうが熱心、やる気があがる。ソファを運ぶのを手伝ってもらう
    - 一度社会規範から外れてしまうと、その後戻るのは難しい。


    * 5章: 無料のクッキーの力: 無料!はいかに私たちの利己心に歯止めをかけるか [#k2d3cc25]


    - 無料でクッキーを配ると、クッキーを売る場合と比べて、1人あたりの取り分が減る。他の人の幸福を考慮するようになる


    - 皿に1つだけ残ったスシ、共有資源を他者と分け合うという社会的行動


    - 無料 < 労力をもらう < お金をもらう


    * 6章: 性的興奮の影響: なぜ情熱は私たちが思っている以上に熱いのか [#qc240642]


    - 性的興奮状態にあると、変な性癖を受け入れやすくなる


    - 興奮状態は、判断の質を落とす


    - 無痛分娩、痛みを知っていないときに下す判断は意味がない。


    * 7章: 先延ばしの問題と自制心: なぜ自分のしたいことを自分にさせることができないのか


    - レポート提出の締切りと成績
    -- 締切りを教授が決める
    -- 締切りを生徒が決める => あらかじめ決意表明するツールを与えることがいい成績を取る助けになる
    -- 締切りを設けない


    - ホンダの車の定期点検パック、フォードはパーツごとに点検のタイミングが違うことを気にしていたが、ユーザが先延ばしにして何もしないよりは、ホンダのように決め打ちでユーザに示したほうが迷いなく点検を行うことができた


    - 思想家ソロー「単純化だ!単純化せよ!」


    - 強化スケジュール、ラットがレバーを押すと餌がもらえる、回数を曖昧にしておくと、餌が出ないように設定を変えた後でもしばらくレバーを押し続ける
    -- EメールやSNS も、当たりや外れがあるから中毒になってしまう。当たりの確率を増やせば中毒症状は防げる


    - 人間の様々な種類の欠点に打ち勝つには、長期目標のためにとるべきあまり喜ばしくない行動に対して、目先の強力なプラスの強化を与える奥の手を探すのが有効。副作用が出るが将来的には効果の出る薬を飲むため、薬を飲む時間は大好きな映画の時間にする、など




    * 8章: 高価な所有意識: なぜ自分の持っているものを過大評価するか [#db4318c5]


    - バスケットボール大会の良い席のチケットを抽選で当てた人は、抽選で外れた人よりも高い値段で売ろうとする。誰かの天井は誰かの床。


    - 本当に必要なものを選択することが難しい理由として、人間の3つの奇癖がある
    -- 自分が既に持っているものにほれこんでしまう
    -- 失うかもしれないものに注目してしまう
    -- 他の人が取引をする視点を自分と同じだと思ってしまう。自分が良いと思っていたリフォームは、他の人にとっては欠点に映る


    - 仮想の所有意識、広告などでよい印象を与え、あたかも自分がそのサービスを享受していることを想像させることにより、本当にそのサービスを欲しいと思わせる




    * 9章: 扉を開けておく: なぜ選択の自由のせいで本来の目的からずれてしまうのか


    - 項羽がとった、背水の陣


    - 「扉ゲーム」、価値のない扉とは知りつつも、その機会を失うことを嫌って生かし続けてしまう


    - 架空の物語で、あるロバは、どちらの干し草を食べるか悩んでいるうちに、餓死してしまった


    * 10章: 予測の効果: なぜ心は予測したとおりのものを手に入れるのか


    - バルサミコ酢を加えたビールを、そのまま伝えるか、「MIT特製ビール」と伝えるかで、選択する確率が変わる


    - 雰囲気が高級だと味も高級に感じる、ちゃんとした入れ物にいれた砂糖やミルクが用意してある場合と、適当な皿に用意された場合とで、コーヒーの味が異なる。


    - 知識が先かあとかで経験が変わる


    - 料理の題名、いいことが書いてあるとそれを想像して経験も変わる
    - コカコーラとペプシ、コカコーラは味とは別の、過去の経験なども影響する。ブランドによる効果


    - ステレオタイプ、押し付けられたレッテルによって反応も変わる、プライミング。老齢に関するアンケートをすると、その後歩く速度もゆっくりになる。


    * 11章: 価格の力: なぜ1セントのアスピリンにできないことが50セントのアスピリンならできるのか
    - プラセボ効果
    -- 薬や治療をしてくれる人に対する信頼
    -- 条件付け、パブロフの犬


    - 価格が高いものほど、効果がある
    - 割引されたものは、その分効果も下がる


    * 12章: 不信の輪: なぜわたしたちはマーケティング担当者の話を信用しないか


    - 一度だまされると、次回以降用心深くなる
    - 共有地の悲劇、みんなで協力すればみんなが利益を得るが、誰かが利己的な行動をとり始めると、最終的にみんなが協力しなくなり、みんなが損するようになる
    -- 出資ゲーム、みんなが出資した金額の合計をみんなで均等に分け合うゲーム


    - ティンバーランド、二酸化炭素排出削減、リサイクル、環境を破壊せずに持続生産可能なサステイナブル素材の利用、投資から得られる収益、自分たちの子供たちの生きる指針であれと願った道徳規則に、自分の会社もちゃんとしたがっていたいだけ


    * 13章: わたしたちの品性について その1: なぜわたしたちは不正直なのか、そして、それについて何ができるか


    - 2004年アメリカ、強盗などの被害額(5億2500万ドル)より、従業員による職場での盗みや詐欺などの被害額(6000億ドル) のほうが大きい


    - ふたつの不正、あきらかに悪い人がする不正と、普段は正直な人が行うちょっとした不正


    - わたしたちは大きな不正行為をするときしか、不正の監視機能が作動しない。ホテルからタオルを持ち帰ることと、それが見つかったときの代償をいちいち比較しない


    - 十戒を事前に思い起こさせると、「ちょっとした」不正は減る


    * 14章: わたしたちの品性について その2: なぜ現金を扱うときのほうが正直になるのか


    - 学生寮の冷蔵庫に、コーラをいれておくと知らぬうちになくなるが、1ドル札をいれておいてもなくならない。


    - 貨幣に変わる「引換券」を用いた場合でも、不正は起こった


    - ジャーナリストのアプトん・シンクレア「何かを知らずにいることで給料をもらっている人に、その何かを理解させるのはむずかしい」、=> 「その人が代用貨幣を扱っている場合、その何かを理解させるのはさらに難しい」


    * 15章: ビールと無料のランチ: 行動経済学とはなにか、そして、無料のランチはどこにあるのか


    - レストランでの注文、最初に注文した人と最後に注文した人で、注文内容とそれに対する満足度は変わるか
    -- あとに頼んだ人は前の人とかぶらないようにした、満足度も下がった
    -- 個別に注文表を書くようにすると改善した


    - 「独自性欲求」を持つ人のほうが他人と異なる注文をする傾向が高かった


    - 経済学者, 人間の行動はすべて情報に基づき合理的な決断による
    - 行動経済学者、人々は身近な環境から余計な影響をうけやすく(文脈効果)、関係のない感情や浅はかな考えなどさまざまな形の不合理性に影響されやすい

  • 前半は特に、目が醒めるような話だった。プレゼントを送るのか、現金を送るのかの決定的な効果の違い等々、現実にそのまま使える話も多数。
    ただ、若干後半は冗長なようにも感じた。
    全体としてはそこそこに面白いし、とても読みやすかったと思う。

  • 良著!

    経済学において人は合理的に行動するとされているが、実際には傾向として不合理に行動する場合がある。

    実験がユニークで面白い。

    確かにそういう場面だったら、そういう行動を取っちゃうなぁ…と思うようなことをまとめた感じ。

    これを理解すれば、人の行動を遠回しにコントロールすることもできるかも知れない。



    P88
    わたしたちはときに、その決断が合理的に見えるように仕立てたくなるということだ。

  • かつて日本の企業は社員を遇するのに「社会規範」をもつてしたのかもしれない。「市場規範」を用ゐることにして、今のやうな状態になつてしまつたのかもしれない。そんな気がした。 それにしても、なぜ従来の経済学は人間を合理的なものと考へたのか。昔から人が不合理な決断をするといふことは変はつてゐないはずなのに。

全146件中 91 - 100件を表示

ダン・アリエリーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×