ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091697

感想・レビュー・書評

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  • ハーバード大学で大人気の政治哲学の講義と東大安田講堂で行われた特別授業を書籍化した下巻となります。「正義とは何か?」この単純にして最も難しい命題に挑戦するサンデル教授と受講生とたちとの掛け合いに注目。

    この下巻は、NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱室」の第7回~12回まで、および2010年8月に行なわれた東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」を収録したものになります。

    僕がこういう講義に魅かれるようになったきっかけとは、現在は東進ハイスクールで教鞭をとっている英語講師の今井宏先生が大学時代の恩師の授業をはじめて受けたときにちょうど、サンデル教授が展開しているような授業たったと参考書に収録されているエッセイで述懐していたからです。自分がかくまっている人間を尋ねて人が訪ねてきたときにその人はいないと答えるということは果たして正義か否かという問題は、あんまり詳しいことはここでは言えませんが、この命題に近いことが実際の生活のうえで起こったことがあって、本当に考えさせられるものがありました。

    そして、東京大学で行われた講義には、前の世代で行われた過ちを今の世代が背負うべきか?という命題には。すごくデリケートかつ普遍的なことで、こういうことがものすごくまじめにやり取りされるのは、一般社会の営む上ではほぼありえない話で、普通は何も考えることなく通り過ぎていくものですが、いざ、この問題が浮かび上がってきたときに、きちんと立場を明確にできるのか?などと読んでいて自分に問いかけました。答えは出ていませんが…。

    この本はできることならば上巻とあわせて一気に読まれることをお勧めいたします。

  • 4時間半程度で読了。

    上巻の、カントなどの理論から続き、アリストテレス、ロールズの考えを飛躍させ、サンデル教授自身の考えを以て締めくくっている。

    結普遍的な原理というものは存在せず、どのような事象にも哲学、倫理の観点からの視点を意識し、判断をすることが重要と理解した。

    結論自体には非常に納得したが、これまで事例として説明されてきた主義・思想が腹に落ちていないことも多々あったため、改めてサンデル教授自身の著書を読み、理解を深めたい。

    上巻同様、巻末の東京大学での講義が、ハーバードでの講義全体のポイントを絞って記載されているため、先に読むと全体の理解が早くなるかもしれない。

  • 哲学の本を、初めて全部読み終えることが出来ました。

    「より多くの命を救うために、少数の命を犠牲にすることは正しいか?」と言った疑問を、サンデル教授が学生たちに投げかけます。「何が正しいのか?」自分の意見を述べ、答えを模索する学生たち。アリストテレスや、カント、ロールズと言った過去の哲学者の考えを紹介しながら、サンデル教授は学生たちの道標となります。

    そして、最後にサンデル教授自身の考えで締め括ります。

    「何が正しいのか?」という問いに対して、多様な価値観が存在する現代では合意に達することは不可能だが、対話し、悩み、関与し続けることで、「何が正しいのか」より深く理解することが出来る。

    感動的なフィナーレでした。それでも、半分も理解出来ていないと思うので、繰り返し読んで見たいと思います。

  • 結婚について、同性婚に対するマサチューセッツ州の判事の判決文に、不覚にも涙が出るほど感動してしまった。

    婚姻届とは、独占的で永続的なふたりの関係を国家が承認したたえる行為だそうだ。

    この判決をもらった男性はきっとものすごく嬉しかっただろうと思った。

    2012-12-08追記
    「男性」じゃなくて、「女性」のカップルでした。

    しかも、このレズビアンカップル、すでに離婚しているとか・・・。

    なんじゃそりゃ・・・・orz

  • 内容紹介

    指名手配中の弟の居場所を捜査当局に教えなかった兄の行為は誉められるべきか?日本の東アジア諸国への戦争責任やアメリカの原爆投下責任など、過去の世代が犯した過ちを現世代は謝罪すべきか?論議を呼ぶテーマの向こうに見えかくれする「正義」の姿とは? 現代社会のアクチュアルな問いに切り込む斬新な哲学対話が、世界の見方を大きく変える。知的興奮に満ちた議論は、感動のフィナーレへ。 下巻は、NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第7回~12回まで、および2010年8月に行なわれた東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」を収録。

    内容(「BOOK」データベースより)

    指名手配中の弟の居場所を捜査当局に教えなかった兄は、その行為を責められるべきなのか?論議を呼ぶテーマの向こうに見え隠れする「正義」の姿とは?日常のアクチュアルな問いに切りこむ斬新な哲学対話が、世界の見方を大きく変える。知的興奮に満ちた議論は感動のフィナーレへ。NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第7回~12回、および東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」を収録。 --このテキストは、文庫版に関連付けられています。

    著者について
    1953年生まれ。ハーバード大学教授。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。専門は政治哲学。2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員を務める。1980年代のリベラル=コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。講義の名手であり、中でもハーバード大学の学部科目「Justice(正義)」は、延べ14,000人を超す履修者数を記録。あまりの人気ぶりに、同大は建学以来初めて講義を一般公開することを決定。その模様はPBSで放送され、日本では2010年、NHK教育テレビで「ハーバード白熱教室」(全12回)として放送された。この講義をもとにした『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)は、各国でベストセラーとなっている。このほかの主要著作に『リベラリズムと正義の限界』、『民主政の不満』、Public Philosophyなど。2010年8月に来日した際には、東京大学(安田講堂)およびハヤカワ国際フォーラム(六本木・アカデミーヒルズ)において特別講義を行ない、いずれも大きな反響を呼んだ。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    サンデル,マイケル
    1953年生まれ。ハーバード大学教授。専門は政治哲学。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル=コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。類まれなる講義の名手としても著名で、中でもハーバード大学の学部科目“Justice(正義)”は、延べ14,000人を超う履修者数を記録(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、文庫版に関連付けられています。

    目次
    本書を読むにあたって
    第7回 嘘をつかない教訓
    レクチャー1 「嘘」と言い逃れ 〔小林正弥教授による解説〕
    レクチャー2 契約は契約か? 〔小林正弥教授による解説〕
    第8回 能力主義に正義はない?
    レクチャー1 勝者に課せられるもの 〔小林正弥教授による解説〕
    レクチャー2 わたしの報酬を決めるのは…… 〔小林正弥教授による解説〕
    第9回 入学資格を議論する
    レクチャー1 私がなぜ不合格? 〔小林正弥教授による解説〕
    レクチャー2 最高のフルートは誰の手に 〔小林正弥教授による解説〕
    第10回 アリストテレスは死んでいない
    レクチャー1 ゴルフの目的は歩くこと? 〔小林正弥教授による解説〕
    レクチャー2 奴隷制に正義あり? 〔小林正弥教授による解説〕
    第11回 愛国心と正義 どちらが大切?
    レクチャー1 善と善が衝突する時 〔小林正弥教授による解説〕
    レクチャー2 愛国心のジレンマ 〔小林正弥教授による解説〕
    第12回 善き生を追求する
    レクチャー1 同性結婚を議論する 〔小林正弥教授による解説〕
    レクチャー2 正義へのアプローチ 〔小林正弥教授による解説〕
    東京大学特別授業[後篇]――戦争責任を議論する

    本の感想(オフィス樋口Booksより転載、http://books-officehiguchi.com/archives/4776290.html

    『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業 上』 の続きである。この講義録では「第9回の入学資格を議論する」と「第10回のアリストテレスは死んでいない」に興味がある。

    第9回の入学資格について、日本では入試の得点で決まると言われているが、アメリカの場合、大学によっては人種や民族枠が設けられている。入試の得点が良いにもかかわらず、民族枠で不合格になったのは差別かどうかが議論されているが、日本ならどのような事例が当てはまるのか思いつかない。

    第10回のアリストテレスは死んでいないでは、ゴルフカート問題が議論されていた。ケイシー・マーティンの血行障害について、PGAは認めるべきか認めるべきではないかという議論が話題になっていたことを思い出した。ゴルフ=歩くことという競技?という意見には考えさせられる。

  • 『人間は自分で選ばない限り、いかなる道徳的つながりにも縛られることはない。これが意味するのは、人間は自由で独立した至高権を持った自己だということだ。人間は、自らが創り出した義務によってのみ、自らを律するのである。カント派やロールズ派の自由主義を批判するコミュニタリアンですら、「自由とは、自由で独立した自己が自らの行動を選び取ることだ」という主張には説得力があると認めている。しかし、コミュニタリアンは、そこからは、道徳的・政治的な生という側面がそっくり欠けてしまっていると論じる。コミュニタリアニズムの政治哲学者、アラスデア・マッキンタイアは、「自己」を説明するのに、「物語的な観念」を用いている。これは、自己について、カントなどとは異なる考え方だ。「人間は、本質的に物語を紡ぐ動物である。『私は何をするべきか』という問いに答えるには、まず『どんな物語の中で私は自分の役を見つけられるのか』という問いに答えてからでないと、答えることはできない」』面白かった。でも、やっぱりカントなりロールズなり、原典を読むのが一番面白いな。

  • ソクラテス的な対話の手法を用いた講義録。人種区別をした入学資格、PGAゴルフトーナメントへの車いすの導入、同性婚などの問題の是非を問いながら、学生たちは議論を重ね、”善ありし正義”という教授の政治哲学の考え方に導かれていく。

    東大講義の部分は、確かに読みやすい。しかし、政治哲学の授業だが、”政治”的な問題を含んでおり、東大生の”お人良し”さが、釈然としなかった、というのが正直な感想だ。日本人の戦争責任の問題や、オバマ大統領の原爆投下への謝罪問題など、ハーバードで扱われたテーマとは異なり、より我々日本人にとってリアルな話題だからか。もっとも、政治哲学で扱う目標は、やはり本来そのようなリアルな問題なのだから、例題ではなるほどと思うことも、実践問題になると簡単には納得できない、というのは道理なのかもしれない。ハーバードでも、イラク問題やイスラエル問題など、当事者的問題を扱ってみたらどうなるのだろう?学生たちは、道徳観と政治的建前の二本足に立って、どのような議論を進めるのだろうか?当然、東大生とハーバード大生では、育ってきた文化的立場も異なる。きっと、この辺りが政治哲学の醍醐味でもあるのだ。

    それにしても、最後の終わり方は感動的だった(以下、引用)。

    他者を深く考え、関与していくことは、多元的な社会にはより適切でふさわしい理念のように思える。私たちの道徳的、宗教的な意見の相違が存在し、人間の善についての究極的な多元性が存在する限り、私たちは道徳的に関与することでこそ、社会の様々な善を、より深く理解できるようになる。
    解決できない問題を提起しながらも、議論は続いていく。なぜなら、私たちは、日々これらの質問に対する答えを生きているからだ。

  • 教授が次々と繰り出す究極の選択に酔い痴れながらも、何処かでコミュ二タリアンの本性を現し議論をそちらの方に誘導するのではないかと、やや懐疑的に読み進める。ところが議論は最終講に於いて意外な展開を見せる。「ほう、そう来ますか!」って感じ。これって上質な一編のミステリだね。探偵小説の種明かしを先に読んでも、そんなの当たり前だとか、納得できないってことになる。やっぱり12回の講義内容を時系列に読むしかない。読了済の小説でも映画化されて観れば又良し。次は講義の映像版を見よう!因みに私は今もコミュ二タリアンではない。

  • 2回読んで。
    1年前読んだときは特に下巻の内容についていけなかったけど、その後いろんな本を読んで、何気に読んだら理解できたw

    哲学とは答えの出ない、今日も明日も考えるための材料だ。
    こんなニュアンスで始まって終わって、結果すごく面白かった。

    後半を占めた「正義と善」の話は難しくって読みたえがあった。
    人とのかかわりは大事だけど、時には難しくって、だから哲学が必要で。でも哲学がいつも正しいわけじゃない。だからといって考えをやめたらいいのか。そうなると、もっと問題があふれてくる。

    人生何が正解かわからないと同じように、哲学はいつも形を変えて正義になろうとする。面白いね。

  • 哲学は時代によって求められる答えが揺らぐ。
    戦争時代は人を殺してもとがめられない。
    でも今はとがめられる。

    時代で揺らぐ哲学であっていいのだろうかと
    投げかけてくる先生の言葉に考えさせられる

著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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