バナナ剥きには最適の日々

著者 :
  • 早川書房
3.46
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本棚登録 : 364
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092908

感想・レビュー・書評

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  • 表題作が好きだ。SFマガジンに載ったのを読んだときのあざやかな読後感が忘れられない。ドライだけど切なくて、タイトルから連想されるサリンジャーの語り口をちょっと思いだしたりした。私が読んだ範囲内では一番とっつきやすい円城作品ではないかなあ。

    「SFが読みたい!」に掲載されていたインタビューがとても面白かったのだが、やっぱりこの人が思いっきり好きなようにSFを書くと、すごく読者を選ぶ作品になるようだ。「読みやすいように気を遣った」ものでも、「本当にわかったのか?説明してみろ」と言われたらたいそう困る。よくわからないけど面白い、というのが私の円城評。

    「バナナ剥き~」はおおざっぱに分類すれば人工知能ものになるんだろうか。無人探査機に搭載された宇宙人発見のためのプログラムの独白、という設定。SF好きではない人はまず読もうと思わないだろうけど、意外やこれが、しーんと寂しくほんのり温かくしみじみ胸にしみるお話なのだ。ダマされたと思って読んでみて。

    他に8作品が収録されているが、独特のシャープな雰囲気がいい感じだ。よくわかった、とは言えないけど。

  • 初円城さん。タイトルに惹かれて図書館で借。

    1ページ目を読んだ時の「!!!?」という感覚は、今まで味わったことがないかも。
    読んで深く理解するというより、感じるお話だったなぁというのが素直な感想。

    とにかく言葉の選び方、その思考、物語の展開が今まで読んだどの本とも違っていて、それでいて魅惑的で、ひきこまれてしまった。

    電車の中で読んでいたのですが「こりゃ電車で読む本じゃない!」と思い、自宅で腰を据えて読みました。

    好きな文章をピックアップしだしたらきりがないし、じゃあこのお話たちの本質を理解できたかと言われれば自信を持って「はい!」とは言えないのだけれど、この方の文章って中毒性ある気が…。

    とりあえず他の作品も読んでみようと思います。

  • よく分からないとこが面白い。屁理屈から屁理屈(笑)

  •  帯の「どちらかというとわかりやすい最新作品集」という言葉を疑う短編集。意味がわかりやすいのではなく、著者の魅力の何たるかがわかりやすいといえばわかりやすい。
     特に宇宙を漂う人工知能を描いたタイトル作が秀逸。他者の認識を消去される淋しさは、自意識の消失を伴う無常観に帰結するのであろうか。
     お気に入りは、言葉遊び的な魅力を最も堪能できる『equal』。「音と音の間の無音は、ただの無音と違うのでした。」

  • タイトルの響きがよくて、新刊情報で即買いの1冊。円城さんのセンスも素敵だけど、この元タイトルにしても、ものすごく引用されることが多い!それだけ秀逸なんだろう。やるなあ、円城さんとライ麦おじさん。

    表題作は、あるマシンに搭載された、ある機能のお話。ファンタジックさとシニカルさがすごくいいバランスだと思う。この機能くんが(だいたい任務として)日々考えることと、それは考えても仕方がない、あるいは任務として要求されていないことに対する感情が、絶望的とはいわないまでも、「なんでこんなことやってんだろ」という徒労感に包まれている。でもそれは決して悲観的なものでなく、「ま、しょうがないか」とむしろ軽やか。村上春樹作品の「やれやれ」に近い感じかもしれない。このあたりも、ほかのかたが指摘されているとおり、「本歌」を巧みになぞってらっしゃる気がする。

    円城さんの作品は、言葉の選び方と物語の構成で結構ハードなようにも見えるので、自分が果たしてキャッチアップして読んでいるのかどうか尋ねられても、正直な話、うまく答えられない。『AUTOMATICA』などを読んでいると、思考実験に巻き込まれているようで、途中で何ページか戻ることもしばしば。でも、本質的なところでは、限りなくベタ甘に近いロマンチックテイストで攻めてくるように思う。『捧ぐ緑』や『墓石に、と彼女は言う』では、登場人物の台詞や、さりげなくさしはさまれる情景が硬質ながらスイート。そこにダメ押しのシチュエーションで、不覚にも「いやーん、そう持っていきますか!」と真正面から胸キュンツボを突かれるので、自分ながらこっぱずかしくなっちゃいますぜ(笑)。

    スイートなものからビターなものまで、この本で描かれた世界に何らかの教訓や意味を求めると、たいていの場合、腹が立って終わるだけのような気もする(笑)けど、「ようわからんけど、なんかおもろいし、キレイな文章!」と愉しさも残るし、理解が深まるとかそこを求めずに、つい繰り返してめくるような気もします。賽の河原状態の読書でいいや!という感じの本、といえるのかも。当たりどころが悪ければ、「円城ジャンキー」になるかもしれません…って、私はすでにそうなってしまったのかもしれないなあ。

  • いかにも量子力学的な?作品集。

    日常と非日常、常識と非常識、普通と異常の境目をきわどく行き来し、だんだん境目がわからなくなる感じが良い。

  • 好:「祖母の記憶」「Jail Over」「捧ぐ緑」

  • ないはないはない。

    頭こんがらがりそうだけど、おもしろい。

  • 優しい言葉遣いにどんどんと置いていかれる感覚

  • 「equal」が素敵すぎて涙目です。

    横に21文字入るのかハヤカワ文庫!
    どうも最近のは17列の模様。
    けど、28文字くらいの岩波の横書きでokレベルなのを確認。
    よかった。
    待ってる。

著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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