解任

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  • 早川書房 (2012年4月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092915

解任の感想・レビュー・書評

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  • 『日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも簡単に分かれてしまうのか』本書の筆者であるマイケル・ウッドフォード氏が「オリンパス事件」のきっかけとなる記事を書いた記者に対して発した問いは重い。 「オリンパス事件」の主要人物として、己の会社を告発し、壮絶なプロキシー・ファイト(委任状争奪戦)を繰り広げたオリンパス元CEOであるマイケル・ウッドフォード氏による手記です。

    僕はかつて、大学時代に唯一まじめに通っていたO教授の講義で、
    「日本のことを理解する上で注意深く見る必要があるのは日本に住んでいる外国人が残したものだ」
    という教えを受けたことがあり、それが時を越えて僕に日本人が「集合的無意識」の中にあるものがいったい何かということを、本書は教えてくれました。

    筆者が言うとおり、その経歴は「生え抜き」の「サラリーマン社長」であり、ほかの日系大手企業の社長およびCEOとして迎えられた方とは一線を画すということも、そこから明らかになっておりました。しかし、請われてオリンパスのCEO担ってから2週間後、彼は自身の会社が、バブル期に「財テク」によって膨れ上がった損失を隠蔽するため、巧妙な手段を使って行われた「飛ばし」や「不明朗な企業買収」を繰り返し、粉飾決算を行なっていた実態を告発するにいたりました。

    彼は長年のボランティア活動から母国である英国で「ナイト」の称号も授与しており、まさに「サムライ」と呼ぶのにふさわしい人間であると思われます。その彼と長年会社を牛耳っていた―のちに逮捕される菊川会長、さらには森副社長との壮絶な駆け引き。ここの描写は本当に緊迫感に満ち満ちており、経験した人間でしか書くことはできないであろうなと思われました。

    そのハイライトは要領を得ない回答に業を煮やしたウッドフォード氏が森副社長(当時)に
    「森さん、あなたは誰のために働いているんですか?」
    とたずねたところ、彼はウッドフォード氏の目を見つめ返して、
    「菊川さんです。私は菊川さんに忠誠を尽くしています」
    という場面でした。僕はここに旧日本陸海軍に端を発し、現在に至るまでわれわれを苦しめ続けている「病理」があるのだと個人的にはそう確信しております。

    そして、委任状をめぐる闘争や、メインバンクとの不毛なやり取りの末に、彼はCEO復帰を断念せざるを得ないという決断を下すにいたります。彼は現在、母国のイギリスにいるのだと思われますが、彼抜きで果たしてオリンパスは再建できるのか?また、彼は自分が半生をささげた会社をどのように見つめているのか?それが気になるところです。彼が行った記者会見はほぼすべてYoutube上にアップされておりますので、興味をもたれた方はそちらも参照されてみてはいかがでしょうか?

  • あれだけ社会的な影響のあった経済事件で、その当事者、しかも一番の中心にいた人物がみずから書いた本ということで、読まないわけにはいかないなと思って購入。
    買収について疑惑を持ったあと、それを他の経営陣に話した時の反応、その後身の危険を感じて日本を逃げるようにでたこと、すべてが本人の言葉によって生々しく描かれている。
    不正のスキームなどの細かい点までは触れられておらず、純粋にノンフィクションものの読み物として読み進めることができる。
    メインバンクの三井住友が彼が提示した新経営陣の案を受け入れなかったことは残念でならない。

  • オリンパス事件は、日本のガバナンスの歪みを象徴する事例であることがよく分かる。大株主が銀行など日本の大手企業である以上、ガバナンスなんていつまでも画餅のままなのではないかと思えてくる。最後の宮田氏が語るエピソードはなにより経営の本質を語っているように聞こえる。

  • しょ

  • 休暇を利用して一気に読みました。
    とある監査の本で紹介されていたので、遅まきながら読んでみました(寄り道)。

    ガバナンス・コードが策定された一因とでもいえるオリンパス事件。この「解任」後の状況はほとんど知らないけど、とにかくこれが日本の悪いところの集大成(もたれあい、事なかれ主義、秘密主義)だよねと非常に残念な気持ちになってしまう。曲がりなりにもガバナンスの一翼を担う監査という仕事をしているのだけど、この「ガバナンス」が世界でどう捉えられているか、ウッドフォード氏のこの開示からよく伝わってきます。

    自分がこのような場面に直面したときに、彼のように行動することができるか。彼のように行動するのが仕事だと観念する。そうでなければなんでしょう。

    「技術は一流ながら・・・(中略)・・・低級なガバナンスや二流の経営がはびこり、世界で戦うための力が失われているのです。」

    最後、ウッドフォード氏を支援してきた、元オリンパス専務の宮田氏の稿にて、グッドナンバー2とグッドナンバー1について紹介されているけど、これもまた印象深い。腐る程いるグッドナンバー2を経営者に選んだときから、組織の衰退が始まる。両者を見分ける力も持ちたいもの。

  • この世の中には、掃いて捨てるほどたくさんのグッドナンバー2とごく一握りのグッドナンバー1がいる。
    グッドナンバー2が知識、経験を積んでグッドナンバー1になれる確率は驚くほど小さい。
    だから、経営トップの後継者探しは、グッドナンバー1を探し出し、それに必要な教育を施すことが不可欠になる。それができず、手近なグッドナンバー2を後継者に選んだ時点から、組織の衰退が始まる。

    経営トップは修羅場の舵取りだ。綺麗事だけで何とかなるほど単純ではない。だからこそ企業は間違ったことをやらないこと、正しいことをやり通せることが大切になる。グッドナンバー1とグッドナンバー2の差は、この点に関するスタンスの強靭さの差である。
    修羅場に臨んでも、絶対に揺るがない、強靭な軸を持つこと、これが経営トップに求められる最大の資質だ。
    欧州オリンパスの子会社のレディホフ社長は、29才のマイケルウッドフォードに社長を譲り、その後マイケルは、オリンパスの社長になる。

    マイケルも凄いが、レディホフ社長も凄い。
    オリンパス本社本体は腐っていたが(^^;;

  • 読了。何もかもが世界とは別のルールで動く老害達。しかたがない、それが日本だよ。危険の少ない島国村社会ではガバナンスは育たない。優秀な人ですね。朝から一気読み!!

  • オリンパス事件の当事者が語っているということで非常にスリリング。書いてあることはほとんど事実なんだろうけど、これだけの事件になってしまったにも関わらず日常業務は普通に進めていたということや、執拗に「日本に帰らない」と言い張ったのはよくわからない。多分にご本人の危機管理能力にも疑問符があったからこそ解任という結果なんだろうけど、オリンパスという会社は変化を求めてなかったのかもしれないなぁとか思ってしまった。

  • オリンパスの事件は世界に大きな衝撃を与えた。
    たまたま、大王製紙の報道が重なったこともあり、日本企業のガバナンスが甘いという印象を世界に与えてしまった。
    新聞報道もなされていたことなのだが、本書を読むことで、事件の詳細がよくわかる。内容は具体的で、「生々しい」。

    オリンパスの事件は日本の企業に強烈な「教訓」を与えたとみるべきである。報道や裁判にならずとも、同様の行いをしている企業がまだあるのではないか。オリンパスが失墜させたのは「オリンパスの信用」ではなく、「日本企業全体への信用」であると考えるべきであり、日本企業は今一度、ガバナンスや内部統制、監査について見直しをすべきである。

    不正や違法を行うことで、一時的に利益や信頼を勝ち取ることができてしまうのかもしれない。「隠し通せる」という認識があるからそのような行為に及ぶのであろう。しかし、「天網恢恢疎にして漏らさず」という故事成語があり、こちらの方が正しいと考えている。必ず不正や違法は暴かれることになるのであり、その時点では既に手遅れである。
    誰から見られてもはずかしくない経営を行うべきである、というより、それが当然のことである。

    本書やこの事件をきっかけとして、日本企業の経営の透明性が高まり、企業不祥事が根絶されることを願っている。

  • 本件については、以前から納得のいかない点が多く、筆者がプロキシファイトを諦めた頃から、目を逸らすようになっていた。当然、本書も気にはなりながら、何となく手を出さずにいた。それが、たまたまkindleストアにあったので、我慢できずに購入してしまった。内容自体は、すでに数々のメディアで伝えられた通りなので、目新しさはない。ただ、時間を置いて考えても、本件の幕引きの仕方は間違っており、結局銀行が目先のリスクを回避するために、ガバナンスを無視して行動したということである。本不正事案に銀行が関与していたことは明白であり、その点が追求されずに曖昧なままとなっていることは、結局は日本の成長の妨げとなる。私は暫く同社から距離を置いていたが、最近XZ-2というカメラを買ってしまった。これは非常に良くできたカメラである。ただ、今日この本を読んで、このカメラを買ったことを少し後悔してしまった。

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