ならずものがやってくる

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制作 : Jennifer Egan  谷崎 由依 
  • 早川書房 (2012年9月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093233

ならずものがやってくるの感想・レビュー・書評

  • 以前、三浦しをんさんが紹介していた本。
    一つ一つ別の人物を主に書かれていて、短編集のような印象を受ける。だが、それぞれの話は繋がっていて時間も越えて紡がれている。各話がまるでその主人公が実際語っているかのような文章で、興味深かった。

  • 少しずつ繋がった登場人物達の連作短編集、なのだけど、同時代の横の繋がりだけでなく時間を遡っての縦の繋がりと織り上げられていき、まるで大きな河の流れを見るようだった。
    作者の凄まじい手腕。
    タイトルの「ならずもの」が何なのかわかった時には涙が出た。
    とてもシビアだけれど、読後感はすっきり。

  • 最近、新しい作家のアイデアや感性を味わうのが楽しい。もともと古典が大好きなのだが、新しい本を読まなくてはならないね。本書にはパワーポイント小説まで挿入されている。このアイデアたるや。
    内容は音楽プロデューサーのルーを共通人物として、友人、仕事仲間、家族など近いまたは遠い関係の人々が、時間と場所を変え、人称を変え、語り口も変えつつ、異なる物語を紡いでいく。それぞれは独立しており、完成度の高い短編集のようだ。巧みな構成力と物語。ただ、通勤で細切れに読んでいると、それぞれの登場人物の関連がフォローしきれなかった。読み終わって再度ぱらぱらと読み返すと、もやっとした部分がパズルのようにはまった。
    主人公はルーでも、関係者の誰か一人でもない、「ならずもの」であるところの「時間」なんだろう。容赦なく人を老いさせる時間、その中で小さな希望を抱きつつ歩いていく人間たちを俯瞰する。

  • この手の本を読むには年をとりすぎているのかもしれない。
    なんとなく、そんな思いが浮かんできてしまった。

  • いくつもの短編が連なることで長編としても捉えられる作品。各短編の主人公と登場人物が時間や場所が異なりつつ繋がっている。文体や手法を変え実験的な趣きもある。(パワーポイントだけで構成したものも)人物描写が丁寧な印象。

  • ルイス・シャイナー著「グリンプス」がお好きな方なら、という紹介を聞き、ずっと読みたかった本。
    でも、「グリンプス」は完全に音楽マニア受けする作品だったことに対し、こちらはレコード業界に憧れている人向けではないかと思った。
    ただ文学としてはこちらの方がより深く、読ませてくれる作品となっている。全体の構成としては、連作短編のようで過去・現在・未来が交錯し読む時間が確保できなかった私にとって読みにくかった。
    それでも、実在するバンド名や楽曲が取り入れられ、すっきりした読後感を得られた。

  • チャーリーとロルフの物語が好き。最後の、こっそりとロルフと呼んでいる息子が見せる「あのとき空を見上げていた夢見るような表情を見てとる」s-ン。その情景がはっきりと浮かんでじーんときた。
     レアとルーの会話も好き。「この世界に溢れてるクソッタレなやつらの言うことを聞くな。オレの言うことを聞いておけ」
    「あんたもそのクソッタレなひとりだ」でも、彼の言うことを聞いた。

    何年か後に読み直したら、また感じるところは違うんだろう。
    私があの日に、過去の瞬間を思い出したみたいに。未来のどこかで、今この瞬間が蘇るみたいに。
    何年たってもこのものがたりと一緒にいたい。そんなふうに思わせてくれる小説。

  • 僕らはいつもこの「ならずもの」と共に過ごし時には歓迎し時には嫌悪する。
    時間軸は前後し、各章ごとの人の繋がり、連なりは細部に宿る。多くの事柄は目に見える事だけではない。多層的だけど主観から見えればひとつだけだ。だから少しだけズラす、レイヤーの重なりから見える語りは小説としてうまく機能しているしやはり面白い。

    短編集と言えば短編集かもしれないがこの一連の連なりによって紡がれた物語は長編小説でもある。
    そんな物語を実は僕ら生きている。輪郭は時として曖昧になったり濃く明確になる。

  • よくわからない

  • 元パンクロッカーで、現在は有名音楽プロデューサーとなったベニー。そして、有能きわまりないが、盗癖を持つその助手のサーシャ。二人がたどる人生は、ささやかな波瀾に満ちていて…。二人からはじまった物語は、それぞれに抱える過去にさかのぼり、彼らと関わった人々につながっていく。ニューヨーク、サンフランシスコ、アフリカ、ナポリと舞台を移し、過去から未来まで自在に行き来しながら描き出されるさまざまな人生の断片は、はたしてどこに行きつくのか。胸を打つ詩情と圧倒的な筆力でアメリカ文学界を席巻した傑作長篇。ピュリッツァー賞、全米批評家協会賞、ロサンゼルス・タイムズ文学賞受賞。

  • 【文を書く練習としてのレビュー】
    これは、今年読んだ本のベストになるかもしれない。
    ミランダ・ジュライの『いちばんここに似合うひと』の感触と共通するものがある。が、こちらの方が長編性が高い分圧倒される。神話的な効果も高い。
    ジュライのものと共通の神話性もある。作品のなかには小さく愚かで弱く惨めで疲れて孤独な人間が出てくる。だが、偉人でもなんでもない(あなたや私のような)小人物も微細に描き出されることで個別性がゆえの尊厳を獲得する。存在の重みが付与される。読者は、ひとりひとりの人間がそれぞれ現実に生きているという事実に新鮮な驚きをもってあらためて出合う。
    谷川俊太郎が父の死にさいして書いた詩のなかに「残された者はますます謎めく細部に喜ぶ」というような一節があったのを思い出す。ラベリング、クラスタ分け、レッテル、ヒエラルキー。そうした怠惰な「一般性」が外れ、世界の解像度があがる。個別的なひとりひとりの人間のもつ謎めく細部の厳かな輝き。
    私が創作作品から得られる喜びのうち最大のものはこれだ。読後、鑑賞後に、ふだんの景色が違って見えること。昨日までと同じ人間が、世界が、愛おしく、可憐に、かけがえのないものに感じられること。
    人間の小ささと、にもかかわらず、あるいはそれがゆえにもつ存在の重み。おかしがたさ。『ならずもの〜』には、細部を描き出すミクロスコープ的な筆力と並行して、それと対照的な「時間」というマクロな視点の通奏低音が大きな役割を果たしている。時間は、死すべき動物としての人間に対し最大級の猛力をふるうものである。多くの者が時間によりすり減らされ、うばわれ、そこなわれる。それの前ではほぼ無力となる、この時間という「ならずもの」との負け戦での登場人物たちのあがきが描かれることで、かえって人間の神々しさが見えてくる。そういえばカミュが解釈したシーシュポスの神話がそんなはなしだった。
    文体のオムニバスアルバムのような小説的実験性とユーモアを感じさせる軽みもある本書だが、にもかかわらず読後に受ける「壮大な物語を読んだ」という満足感は、この神話性によるのだと思う。古くからの普遍性あるテーマを変奏する無数の物語たちが、『ならずもの〜』の背景に連なって垣間見える。

  • あるバンドのベースマンに関係した人物に関する13の短編からなる小説。

    それぞれで視点人物、表現方法が異なっている。それぞれがどこかでつながり、最後の章は最初の章へと関連していき、全編として一つの世界を形成している。

    異なった視点人物で話が進み、相互に連関していくという手法は新奇なものではないだろう(登場人物が多くて把握しきれず、関係図を書けと言われると困るが…)

    盗癖のある失踪した姪サーシャへの恋心を秘めてナポリに探しに行ったテッドが、彼女の粗末なアパートで二人で夕陽を見る描写が心にしみる「11グッバイ、マイ・ラブ」、本作品を含めた長編小説の存在を危うくするパワーポイント形式で表された「12偉大なロックンロールにおける間」、流行市場に背を向けたレーベルオーナーベニーが元バンド仲間スコッティをアレックスらと情報を駆使して売り出していく現代社会批判を含んだ展開と、アレックスが実はサーシャと関係があったことを思い出す、「1見つかった物たち」へと連関していく構成が絶妙な「13純粋言語」が良かった。

    一つ一つの物語はそれほど起伏のあるものではなく、全体で世界が形成される完結性、そこに流れる時間の厳粛性認識にだまされている感が個人的にはなくもない。

  • とてつもなく素晴らしかった。"ならずもの"はいつも突然私達の心を掻き乱しにやってくる。そんな時、人生にどう立ち向かえばよいのか。その答えをこの作品から教えてもらえた気がする。全編宝石のように輝く至高のバイブル。

  • パワーポイントによる表現が出てきたり、とても斬新な小説です。

    各章、登場人物も変わり、独立しているのですが、何故か先が気になって一気に読んでしまいました。

    本国でもとても高い評価を得ているのも、なるほどという感じです。

    ただ、ちょっとニヒルで、もの悲しくて、読んでいて幸せな気分になれる章はあまりなかったので、読み終わった後はそれほど感動を覚えませんでした。

    最後の章も良かったですが、個人的には、再起を図る独裁者のプロデュースをする女性、その娘と女優の話が心に残りました。

  • 第3回(2013年度)受賞作 海外編 第2位

  • 【第3回 twitter文学賞 投票】
    なんども章を繰り直しては読み方すらも時間を行き来。さら〜っと出てくる「何年後はこうなる」という文の、ならずもののあまりにもさらっとした登場感の振り幅にズキンッ! ならずもの=Dr.マンハッタンである説を提唱。

  • 戯れに恋人の旧居を観にいく男。インター フォンを押す間際、自分がそのドアの先に求 めていたのは「若い頃の自分」だと気づく。 。またしても時間と記憶についての名作を読んだ。 詳細は皆さんのレビューが素晴らしいので、そちらに譲る。
    大和田俊之氏(慶応大准教授)
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/121209/bks12120908020003-n2.htm
    中島京子氏(小説家)
    http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/500
    清水清氏(編集者)
    http://blog.ottava.jp/ottava_moderato/2012/11/post-a953.html
    鴻巣友季子氏(翻訳家
    http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47760230X21C12A0MZB001/

  • 今までの人生で読んだ小説の中で、最低最悪だと思う。読んでいてとても苦痛を感じるし、取り留めのない駄文の繰り返しに辟易する。この小説の評価こそ、"パロット"による幻影だ。

  • これもまた、ソローキンの『青い脂』と同じく、2012年の海外文学好きの間で話題になった作品。それだけで気になっていたわけではなくて、「ならずもの」という語感がひたすら気になっていた。原題は“A VISIT FROM A GOON SQUAD”。

    第1章は、盗癖を隠している女とそれを知らない男の、あるひとこまのエピソード。化粧室で財布をすり取ろうする女の高揚感と、思いがけない事態に遭った狼狽の描写が鮮やかで、ややありきたりかなあ?と思ったものの、これだけ読んでも短編として十分面白い。しかもこれをスタートに、しりとりのように、でも不規則にリレーされて物語がつながっていく。この作品を数章読んだ印象は、「エリザベス・ストラウト『オリーヴ・キタリッジの生活』の構成と同じじゃん」という、ちょっとさめた感じだった。ピューリッツアー賞の受賞作に共通なんじゃないかと思わせる、巧みで明晰な筆致も同じように思え、「こんなんでいいのかなあ」という、ちょっとした失望感があった。

    でも、そこを我慢して(というのは不適切かもしれないけど、まあそんな感じ)進んでいくと、ある時点から鮮やかに、キャラクターや物語の受け渡しが像を結ぶ。ルーの周りのグルーピーだった男女、彼・彼女らのパートナーや仲間、家族…成功をつかんだものもいれば、リアリティ・バイツに立ち上がれなかったものもいる。少しだけ未来のことが意外な形で書かれていたり、ずっと過去のことが描かれていたりと広がりながら行きつ戻りつし、大回りして鮮やかなエンディング。なるほど、これが「ならずもの」の正体…でも、不愉快になるわけでもなく、「そういうもんだよね」と大人の静かな笑みで読み終えることができたように思う。

    各章に文章のさまざまなテクニックが凝らしてあるので、そのテクニックに気が取られて、登場人物の関係が見えにくくなってくる。思わず、「ハヤカワ文庫NVみたいに、カバーに『登場人物一覧』、プリーズ!」と何度もつぶやいてしまった(笑)。でも、それぞれの凝った構成が、簡単に登場人物の関係や心理を読ませない目くらましになっているんだろう。それほどに多様な視点とテクニック満載の作だと思う。特に第12章の表現方法が新しすぎてまいった。小説家志望のかたは、絶対お読みになったほうがいいですわよ!

    60年代くらいからのアメリカ音楽がそこここにちりばめられているので、そのへんに弱い私には、それが作り出す効果がピンとこなかったようにも思う。うーん、現代アメリカ小説を読むには、ロック・ポップスに明るいほうが5倍くらいは確実に楽しいのだな!と、ニック・ダイベック『フリント船長がまだいい人だったころ』と同じ教訓も得たのでありました。そこが、自分に対する減点ポイントかも。

  • 様々な人生がおりこまれて、それがまた様々な角度で書かれている。ぐるんぐるんと視点を変えることが若干しんどくもあり面白くもあり。

  • アリの巣のように、
    仕上げた空間から細い通路を伸ばして、
    また別の空間を作る。
    そこからまた通路を伸ばしてさらに別の空間。
    最終的に見事な作品が完成する。

    2010 年 全米批評家協会賞小説部門受賞作品。
    2011 年 ピューリッツァー賞フィクション部門受賞作品。

  • いろんな文体、手法で違った主人公のストーリが展開。個別の物語は大きくはつながらないが、みんななにかみえない「ならずもの」に追われている。
    深く共鳴する物語があったり、読みきれないのがあったり。と、物語の価値について考えさせられた。

  • 個人的には"失くしていく"物語って印象が強いかなあ。ところどころで涙ぐんだ。

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元パンクロッカーで、現在は有名音楽プロデューサーとなったベニー。そして、有能きわまりないが、盗癖を持つその助手のサーシャ。二人がたどる人生は、ささやかな波瀾に満ちていて…。二人からはじまった物語は、それぞれに抱える過去にさかのぼり、彼らと関わった人々につながっていく。ニューヨーク、サンフランシスコ、アフリカ、ナポリと舞台を移し、過去から未来まで自在に行き来しながら描き出されるさまざまな人生の断片は、はたしてどこに行きつくのか。胸を打つ詩情と圧倒的な筆力でアメリカ文学界を席巻した傑作長篇。ピュリッツァー賞、全米批評家協会賞、ロサンゼルス・タイムズ文学賞受賞。

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