世界しあわせ紀行

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制作 : 関根 光宏 
  • 早川書房 (2012年10月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093295

世界しあわせ紀行の感想・レビュー・書評

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  • 「世界しあわせ紀行」エリック・ワイナー

    オランダは売春と大麻が合法で、それはしあわせスイッチのようなもので、スイッチを押し続けなければしあわせは続かないし、同じくらいの幸福感を得たければより強い刺激を必要とするようになる。ロバート・ノージックの「経験機械」という言葉でそんなことが説明されている。日常と非日常、日本的にいえばハレとケの差が無くなることは鬱々とした日々による不安さをより強固にしてしまうと思う。

    スイスはお金が禁句になっている。それは幸福のために嫉妬がなにより良くないことを心得ているからだ。スイスは退屈なところで、かわったこともしない。平凡だけれど、不幸を感じにくい社会になっている。
    スイスは日本に似た空気(読む方の空気)がある。自然とのつながりが強いし、街のトイレがキレイだとか、他人の目を気にするとか、買ったものを見せびらかさないとか、人を信用する文化とか。
    統計上は幸せな国であるスイスだが、自殺率が高いことも日本と似ている。Wikipediaによると10万人当たり、日本は21.7人でスイスは17.5人だ。この点については特に突っ込んだ記述はないが、日本との類似があるのかないのかとても気になった。
    國分功一郎「暇と退屈の倫理学」での退屈の第2の形式(生命の危機が少なく、物質的にもほどほど幸せな中で生じる退屈)が充満しているのかもしれない。
    政治的なことでは、住民投票が多く政治に参加していると感じる民主的な仕組みが幸福感につながっている(実際に相関関係があるようだ)。

    ブータンは欲張らないことで、皆が幸せでいられる。坊さんみたいな国だ。もう一つ興味深い点は、死が身近にあることだ。死体が横たわっていて、腐乱死体さえ見かける。
    ということは僕なりにこんな仮説ができる。死への準備がし易いだろう。死を隠蔽してしまう西洋文明は、死が不安や恐怖になる。命が惜しくなる。その命を惜しむ気持ちは、所有する感覚に大きな影響を及ぼすだろう。死の隠蔽は資本主義のエートスの一つかもしれない。
    ブータンは資本主義は根付き難いかもしれないが、資本によって土地や人が分裂されることもないだろう。

    カタールもは全てお金。お金がなければ文化は生まれないが、全てをお金で買おうとするところには文化は育たない。カタールは外国人が80%を占めているそうだ。移民については日本でも受け入れることを考える機運が年々高まっているように思える。
    幸福感が減退しないものと、不快感が減退しないものについて書かれていて、それは女性の豊胸と大きな騒音だという。

    アイスランドの章は酒浸りなのだけど、大きな示唆を含んでいた。寒冷地で生きることはとても辛そうだが、統計上は幸福度が高い、なぜだろう。どの文化でも、肯定的な感情を表す言葉より否定的な感情を表す言葉の方が多いのだという。あまりにも否定が多いと人は参ってしまうが
    、アイスランドには特筆すべき風土がある。それは失敗への寛容さだ。アイスランドでは、人は多様な経歴を持つ人の方が幸せになれると考える。日本や西欧のように専門性を重視するのと真逆だ。
    アイスランドは元々多神教だったそうで、資本主義のエートスが行き届いていないのが良いのかもしれない。日本の学生に関する調査に記述があった。個人主義的傾向の学生と集団主義的傾向の学生を比較すると前者のが幸福度が低いということだった。
    日本には八百万の神がいるのだから、そういった一つの価値軸でない社会があったろうに、経済ばっかりで計測されてしまう。経済と社会の軋轢が大きくなりすぎている。経済を社会に合わせるようなことは大変困難なのは理解しつつ、期待も持てない。

    モルドバは本書の中で一番不幸な場所だ。なぜなら年収が8万程度でありながら、物質的な価値観が資本主義であるからだ。バングラディッシュなどはとても貧しいが、社会の仕組みがお金が少なくて住むようになっている。一方、モルドバではものの価格や価値観は先進国なのだ。一時は良い時代もあった為、落胆の暗い影が覆っている。庶民はマクドナルドなんて高価過ぎて買えない。縁故主義だから、階層の流動性も全くなく、努力は報われることがない。そしてなにより、それが染み付いた結果多くの人が希望をもてず、人のせいばかりにすることだ。
    モルドバの人は感謝するとか、他人を助けるといったことが少ない。最近の研究によると利他主義的な欲求は食欲や性欲をつかさどる領域にあるということで、人間に古くから備わっているものだと分かってきている。
    集団で狩りをするなどの過程がそういう機能を進化させたのかもしれない。
    良いことは野菜が新鮮なくらい。
    著者なはモルドバ人になるのを避けるべき教訓として
    その一、“「私の問題ではない」というのは人生哲学の一つではなく、心の病である・・・他人の問題は実際に自分の問題でもあるのだ”
    その二、“彼ら(モルドバ人)の不幸を証明するのは、経済的問題に対する彼らの反応であって、問題そのものではない”

    インドではホームレスといっても、家の建物はなくても、家族はある。アメリカ等では、家もないが家族もない。インドではやれるべきことをやったら、あとは天命に任せる。どれでダメなら仕方がないと考える

    他にはタイ、イギリス、アメリカの章がある。

  • 着眼点もエピソードも面白いので漫画にすると良いと思う。
    というのも、文章の端々に批判ではなく皮肉、差別に近いものを感じる。

  • 感想書くのを忘れてた。

    紀行文を読むと、その土地について先回りして教えられたようで、それが嫌だから普段は読まない。けど、これはテーマが『しあわせ』という特殊分野なのでそうはならず、かえってそれぞれの国を旅したくなった。軽妙で読んでる端から笑みがこぼれた。
    幸福学の入門書としても、オリエンタリズム(なんて簡単に言ってはいけないのかもしれないけど)としても、色々な角度から楽しめるので、何度か読んでみたいと思える作品。
    紀行文ジャンルそのものを見直した良作。

    追記:私もアイルランドが気になる。

  • 幸せは落ちてるものじゃないんだなと。
    実践できるだろうか。

    妬まない
    人とつながる
    笑顔でいる

  •  カフェはひたすら時をすごす場所であり、しかも罪悪感とは無縁の空間だ。偉大な哲学者はヨーロッパ出身者が多い。彼らは日がない地にちカフェですごし、実存主義のような独創的な哲学的発想が頭に浮かぶまでひたすら思索にふける。(p.13)

     幸福が不幸の欠如を意味するとしたら、スイス人には幸せになる正当な理由がある。でも、もしも幸福がそれ以上のものだとしたら(幸福が喜びの要素を必要とするのであれば)、スイス人の幸福はリンツ社のチョコレートのように深遠なままだ。(p.43)

     英語の「旅行(travel)」という単語は、「労苦(travail)」という単語と共通の語源をもつ。何世紀にもわたって、旅行することは苦行に等しかった。旅に出るのは巡礼者や遊牧民、兵士、それに加えて愚か者と相場が決まっていた。
     ブータン国内の旅行は、いまでも苦行に近いものがある。ロサンゼルス発ニューヨーク行きの夜間便エコノミークラスにしても、ブータンでの旅行に比べたらどうということはない。(p.115)

     事実というのは、つじつまが合わないことが多い。物事をありのまま受け入れるのは、幸せなことではない。それは、新たな信仰や自助活動の基盤になるものでもない。すべてをそのまま受け入れても、オブラ・ウィンフリー・ショーのようなテレビ番組に出演できるわけでもない。しかし物事をありのままに受け入れるのは、出発点になる。そう思えるのはありがたいことだ。
     ブータンのおかげだろうか。それに答えるのは簡単ではない。ブータンはシャングリラではない。それは間違いない。でも、とても懐が深い。大きくもあり、小さくもある不思議な国だ。この国にいると方向感覚を失い。そして、自分を守っている殻に亀裂が入る。幸運に恵まれれば、その亀裂が広がって、幾筋かの光が射し込んでくる。(p.131)

     幸せですかという質問は、アメリカ人ならしょっちゅう口にしている。ところが、カタールのようなイスラム国家では事情が違う。私がこの質問を発したとき、皆が少したじろぎ、注意深く話題を変えようとしていることに気づいた。幸せや喜びというのはアッラーの御手に委ねられるべきもので、自分たちがどうこう言うべき問題ではないからだ。もし幸せなら、それは神の意志によるものであり、つらいと感じるのであれば、それもまた神の意志というわけだ。(p.162)

    「そう、失敗です。アイスランドでは、失敗が恥ずかしいことだとは誰も思っていなくて、むしろ名誉なことだと考えられています」(pp.218-129)

    人の賢さは、ほどほどがいい
    悪賢さも、頭のよさも、度を越してはならない
    深い知識を身につけた人が
    心底から幸せになれることはめったにない

    ほどほどの賢さが大切だ。賢すぎたり、学びすぎたりすることがあるなんて思ったこともなかった。この点はどこかの異教徒に詳しく教えてもらわなくてはならない。(p.235)

     作家のジョージ・オーウェル「ほぼすべてのユートピア創造者は、歯痛持ちであるために幸福とは歯痛のないことだと考える人間に似ている。(中略)幸福は「苦痛のない状態」ではない。何かが「存在する」状態であるのは確かだ。でも何か存在するのだろうか。それに人は個々の土地を変化させられるのだろうか。あるいは精神科医と電球についての古臭い冗談のように、その土地はそもそも変わりたいと「望んで」いるのだろうか。(p.363)

     アメリカ人は今のままでもそこそこ幸せなのかもしれない。ところが明日になると、人はもっと幸福を感じられる場所や、幸福な生活があるのではないかと期待する。そこですべての選択肢を棚上げにしてしまう。問題にコミットし、実際に行動に移すことはない。つまるところ、危険なことだからなのだと思う。片足をいつも扉の外に出しているとしたら、人は一つの場所であれ、愛することはできない。(p.422)

     幸せになるには他者との関係が絶対的に重要だ。家族や、友人や、近所の人や、職場を掃除してくれる人たちとよい関係を結ぶ必要がある。幸福というのは、名詞でも動詞でもない。それは接続詞なのである。あるいは結合組織と言ってもよい。(p.431)

  • 面白くないわけではないが、読むのにかなり時間がかかった、所々日本のディスりが入ります。特に興味深かったのがカタールと、モルドバ。

  • おすすめのノンフィクションで調べていたら出ていたので手に取ってみる。
    戦争や飢餓といった悲惨さばかりを取材するのに疲れたジャーナリストが、しあわせな国を求めて各国を旅するルポタージュ。
    着眼点がおもしろい。
    が、つまるところどこが一番幸せなのか?
    結局、その国の人々の価値観は今までの生活の積み重ねの中で培ったものであり、それを実感として受け取ることは旅行者には難しいことなのかもしれない。
    悲惨さや辛さ、やりきれなさ、悲しみ、怒りといった環境はきっと人類全てに共通の感情として伝わるものだろう。
    でも、幸せの価値観というのは育った風土によることろが大きいのではないか。
    ただ、異国の国のジャーナリストだからこそ感じられる作者の目線の皮肉めいた軽快な文章は読み物としておもしろかった。

    以下、目次
    ○オランダー幸せは数値
    ○スイスー幸せは退屈
    ○ブータンー幸せは国是
    ○カタールー幸せは当たりくじ
    ○アイスランドー幸せは失敗
    ○モルドバー幸せは別の場所に
    ○タイー幸せは何も考えないこと
    ○イギリスー幸せは未完成
    ○インドー幸せは矛盾する
    ○アメリカー幸せは安住の地に

    2012年 早川書房

  • しあわせとはなんぞや?てなことで、色々な国に出向いてみた本。

    いろいろな国に行っているのはいいが、肝心の地元の人へのインタビューが充実していない。

    まあ、作者が思ったことをごちゃごちゃと書いている感じ。

    でも、色々書いてあるので、自分が考える切っ掛けをつかめるし、面白いところもあったので星4つ。

    ただ、しあわせとはなんぞやなどと考えるのは、自分が幸せでなく、性格に難がある奴だろうと皆さんが思うような人が作者なので、人によっては嫌いな文体かもしれない。

    私は、誰もが幸せの定義を知っていると思う。
    つまり、よく言われるように、本人が幸せだと思っている人がしあわせ。
    だから、お金とか、愛とか、名誉とか、対象は関係ない。(人によって違うので、定義に入れようがない)

    個人的には、作者がこれくらいのことを分かった上で、じゃあ、個人がしあわせだと思う脳の回路というのは、その国の文化に影響を受けやすいのか、宗教に影響を受けやすいのかなどと分析していって欲しかった。

  • 幸福に通じる道は一つではない。

  • 誰もが“しあわせ”を願っている。しかしその幸せとは実は何なのか?誰もが知りつつ しかし納得できる答えを見つけられていないのでは。
    そんな問いを求めて世界10ヶ国をたずね歩いたジャーナリストがいた!国によってしあわせの基準は違う。海外を旅行する気分で、自分の幸福を見つめてみてはいかがですか。

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Eric Weinerの作品

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世界しあわせ紀行の作品紹介

戦乱や飢餓に満ちた不幸な国ばかりを取材するのにうんざりしたジャーナリストが、人びとが世界で最も幸せに暮らす国を探して旅に出た。訪れるのは、オランダ、スイス、ブータン、カタール、アイスランド、モルドバ、タイ、イギリス、インド、アメリカの10カ国。各地で出会う人びとのユーモラスなやりとり、珍しい風習や出来事などをウィットに富んだ筆致でつづりながら、ときに心理学や哲学の知見も交えつつ、真の幸福について思いを馳せる。果たして一番幸せな国は見つかるのか?全米ベストセラーとなり、18カ国語以上に翻訳されたユニークな旅行記。

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