ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

制作 : 友野典男(解説) 
  • 早川書房
4.20
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093387

作品紹介・あらすじ

伝統的な人間観を根底から覆し心理学者にして、ノーベル経済学賞に輝いた著者の代表作。待望の邦訳。私たちは日々、無数の意思決定をなかば自動的に行なっている。カーネマンは、直感的、感情的な「速い思考(システム1)」と意識的、論理的な「遅い思考(システム2)」の比喩をたくみに使いながら、意思決定の仕組みを解き明かし、私たちの判断がいかに錯覚の影響を受けているかを浮き彫りにしていく。人間はこれまで考えられていた以上に不合理なのだ-。プライベートやビジネス、政治における、よりよい決断への道筋を示し、あなたの人間観、世界観を一変させる、21世紀に生きるすべての人、必読のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 人間はシステム1により、直感的な判断をせざるを得ない。しかし、その判断は正しくない場合があり、ヒューリスティクスの誤用や平均への回帰を無視してしまう。
    また、自分の専門的な分野での決定では過剰な自信が現れ、アルゴリズムよりも低い精度になってしまう。
    自信過剰にならず、錯覚を起こさず(起こしてもそれを認識できるようにし)、統計的な手法を重視して意思決定を行なっていきたい。

  • 2002 年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者カーネマンの著書である。本書では、私たちの意思決定過程に係わる様々な心理的要因が取り上げられており、いかに私たちが無意識的な心理プロセスに気づいていないかを気づかせてくれる。多くの実験内容が具体的に例示されているので、体験を通じて、「人間」について新たな視点をもつ機会を提供してくれる。
    (選定年度:2017~)

  • 冷静さを与えてくれるが、ある意味人生をつまらなくするかもしれない。

  • とても面白くて興味深くて、日々の自分の判断、引いては人生に影響を与えそう。
    ただ、もっとコンパクトに要点だけを纏めた、読後用の本が欲しい。

  • 行動経済学の重鎮ダニエル・カーネマンの一般向けに書かれた主著。内容は心理学の分野に属する研究だが、経済学の分野にも大きな影響を与えており、著者にはノーベル経済学賞が授与されている。著者の仕事が経済学の分野で評価されているのは、経済学の前提とされていた経済合理的個人に対して、実際の人間の行動の「いい加減さ」を説得力のある形で提示し、行動経済学という新しい研究分野を切り開いたからに他ならない。

    著者は、本書の目的を「認知心理学と社会心理学の新たな発展を踏まえて、脳の働きが今日どのように捉えられているかを紹介する」ことであるとする。プロスペクト理論、利用可能性ヒューリスティックス、プライミング、アンカリング、メンタル・ショットガンなど、近年著者らを中心に行動経済学の分野で明らかになった概念が網羅的に紹介されている。

    行動経済学の分野では、慎重にデザインされた実験により、いくつもの心理学上の新しい知見を得てきた。その原理を原始的な下位層の「システム1」と熟慮を伴う上位層の「システム2」の二階層システムによって説明できるとした本書は、この分野に興味がある人は必読書と言える。上下巻に分かれた大部の書だが、訳も村井章子さんで読みやすい。

    上巻の第一部では、本書のベースとなる「システム1」と「システム2」の概念について書かれている。本書のタイトルの『ファスト&スロー』は、この「システム1」と「システム2」をそれぞれ示したものだ。この用語自体は心理学で広く使われている用語らしいが、一般向け書籍にも関わらずあえて「本能」と「理性」を例にとらないところは、本書で余計な先入観なく読んでほしいというところの現れのように思われる。よく読むと「本能」と「理性」とは異なることも分かる。そのシステムがどのように動くのか生物学的な仕組みは解明されていないが、二階層のシステムが存在するとして仮定すると、すべてのことが上手く説明できるという類の理論だ。二階層システムにおける鍵はおそらく「システム1」の方だが、この自動的な処理が想像を超えてかなり広くかつ複雑な領域まで動いていることが示される。いわゆる「本能」という言葉で想起されるものとはこの点で大きく違う。ちなみに「システム1」の能力は、生得的なものに限定されるものではない。自転車の運転やプロスポーツ選手やプロ棋士のように十分に鍛えることができるものだ。

    「システム1」の仕組みは、進化の過程で得られたものでもあり、大抵は驚くほどうまく動く。しかし、そのトレードオフとして「システム1」はその本質からまず言明や状況を信用するところから始まるため、非常に容易にだまされるもので、ヒューリスティックやバイアスに捕われて系統的に誤るものである。一方、「システム2」の特徴は動員するのに注意力という努力を必要とするという点で「システム1」と明確に区別される。人間の行動において、この「システム1」と「システム2」を使って効率的にものごとを判断して選択すべく調整が働くことになる。「システム2」がしっかりと「システム1」をモニタして制御するべきなのだが、「システム2」は生来の怠け者のため、結局あっさりとだまされることが多いものであると理解することが大切だ。本書では、多様な事例でそのことが示される。エインズリーの『誘惑される意志』の双曲割引やシモンズの『錯覚の科学』の主張にもよく合致する。

    第二部では、人間がいかにヒューリスティックとバイアスに引きずられて統計を正しく扱うのが苦手かについて説明している。それは本書の主役である「システム1」と「システム2」の仕組みに依存している。とにかく直感に頼る場合、目立つ事象やまやかしのパターンに簡単に惑わされる。自動的に働く「システム1」が常に動いて、そちらの方向に引き込もうとするのに「システム2」は多くの場合抗えない。

    さらに、アンカリングの持つ強い拘束力を示す実験の数々が紹介される。アンカリングとは最初に提示された数値に縛られる傾向のことである。それが全くあり得ない数字であっても効果がある。例えばガンジーが亡くなった年齢を推定する質問の前に、ガンジーが亡くなった年齢は144歳より上か下かという質問を挟むだけで、その元の質問の回答値が有意に上がることがわかっている。モロッコの露天商がべらぼうな値段から交渉を開始するのも全く合理的である。さらには、全く関係のない数字であってさえも、続く独立した質問の推定に影響を与えることが示される。これはシステム2の仕事にシステム1の仕事が無意識に影響を受けていることを示す例である。

    第三部は、「自信過剰」というサブタイトルが付いているが、専門家と呼ばれる人々の判断について疑義が示される。特に金融業界に対して辛辣だ。『ブラック・スワン』で批判された金融業界が陥ったわなについても「システム1」と「システム2」によって説明付けている。

    下巻は、第四部が選択行動について、第五部が二つの自己について。盛りだくさん。

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    「システム1」の特徴が第一部の最後にまとめられていたので書き写す。

    ・印象、感覚、傾向を形成する。システム2に承認されれば、これらは確信、態度、意志となる。
    ・自動的かつ高速に機能する。努力はほとんど伴わない。主体的にコントロールする感覚はない。
    ・特定のパターンが感知(探索)されたときに注意するよう、システム2によってプログラム可能である。
    ・適切な訓練を積めば、専門技能を磨き、それに基づきく反応や直観を形成できる。
    ・連想記憶で活性化された観念の整合的なパターンを形成する。
    ・認知が容易なとき、真実だと錯覚し、心地よく感じ、警戒を解く。
    ・驚きの感覚を抱くことで、通常と異常を識別する。
    ・因果関係や意志の存在を推定したり発明したりする。
    ・両義性を無視したり、疑いを排除したりする。
    ・信じたことを裏付けようとするバイアスがある(確証バイアス)。
    ・感情的な印象ですべてを評価しようとする(ハロー効果)。
    ・手元の情報だけを重視し、手元になりものを無視する(「自分の見たものがすべて」WYSIATI)。
    ・いくつかの項目について日常モニタリングを行う。
    ・セットをプロトタイプでカテゴリーを代表する。平均はできるが合計はできない。
    ・意図する以上の情報処理を自動的に行う(メンタル・ショットガン)。
    ・難しい質問を簡単な質問に置き換えることがある(ヒューリスティック質問)。
    ・状態よりも変化に敏感である(プロスペクト理論)。
    ・低い確率に課題な重みをつける。
    ・感応度の逓減を示す(心理物理学)。
    ・利得より損失に強く反応する(損失回避)。
    ・関連する意思決定問題を狭くしフレームし、個別に扱う。
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  • 世の面接官はコレを読め
    直感よりアルゴリズムを重視しろ

  • プロスペクト理論をつくり行動経済学を開拓したカーネマン教授が認知的錯覚について解説した歯応えがある本。
    各分野で絶賛されてて社会科学の分野では必ず参照される古典になるとかなんとか。そんな大袈裟なーと思って手に取ってみたが確かにえらい本です。



    まず、人の行動心理や脳の働きを2つの仮想キャラクター(システム1=速い思考とシステム2=遅い思考)で想定する。これを元に特にシステム1の直感や無意識を重点に解説しつつ人間の意思決定時の不合理な思考・行動(ヒューリスティック=安易な解決法とバイアス=系統的エラー)を解明していく内容。

    この解明が面白い。

    さまざまな実証研究や心理実験を読むだけでも人間の認知をめぐる奥深さが知れて興味深い。有益な内容で幅広い層に読まれるべき1冊でしょう。

  • 心理学者にしてノーベル経済学賞を受賞した著者が、直感的・感情的な「速い思考」と、意識的・論理的な「遅い思考」の比喩をたくみに使いながら、人間の意思決定の仕組みを解き明かす。上は第1部〜第3部第21章を収録。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40176573

  • ダニエル・カーネマン。人びとの日常における判断がいかにいいかげんかわかり、とても面白い。
    大筋は認知的錯覚について説明し、それをさらに3つの観点から説明している。下巻は経済学との関連が多く難しかったが、実験や例えなどが大量に散りばめられておりページをめくるたびにへぇ~と感じるだろう。翻訳もので上下巻だが尻込みせず読んでほしい。

  • 展示図書 思考力フルスロットル!!! 
    「考えを学ぶ」「考えを鍛える」「考えを描く」図書
    【配架場所】 図・3F開架
    【請求記号】 141.8||KA||1
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/379926

     原書 Thinking, fast and slow も所蔵あり

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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