重力機械(マシン)―ブラックホールが創る宇宙

制作 : Caleb Scharf 
  • 早川書房
3.29
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本棚登録 : 47
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093608

作品紹介・あらすじ

この破壊的な機械が世界をいまある姿に創造した-ブラックホール研究から、宇宙と生命の誕生を展望。新進天文学者による、傑作科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ブラックホールに物資が取り込まれるとき、外部にエネルギーが放出され、影響を与える。星や宇宙の創成にかかわっているかもしれない。

  • その発見の歴史から今時点でわかっている構造、そして今後の観測
    課題まで、ブラックホールに関してほぼ網羅する内容の本。数式は
    皆無と言っていいほど出てこないので文系の人にも読めると思うが
    著者自身の個人史もからめて書いているせいか、やや分かりにくい
    部分も多い。ただ、訳者後書きに本の内容が上手にまとめてあるの
    で心配ご無用。

    すべてを飲み込む、真っ黒で闇に包まれた地獄の入り口といった
    イメージの強いブラックホールが、この宇宙の構造を作り出す上で
    大事なエンジン(=表題の「重力機械」)の役割をしているという
    話、そして我らの天の川銀河が数ある銀河系の中でも少々風変わり
    な存在であるという話が面白かった。

  • 星の光は何万年、何億年の彼方より降り注ぐ。言い換えれば、遠い星空を観察することは、宇宙創成の記録を読み解くこと。これまでは主にSFの世界で取り上げられたブラックホールについて、その生成メカニズムや宇宙創生のヒントを探る興味深い1冊。

  • タイトルの「重力機械」とは、ブラックホールを指す。この時空を歪ませる宇宙の究極の存在は、その巨大な質量、高速の自転、それらによる竜巻状の時空の歪みにより、降着円盤に膨大な摩擦熱を発生させ、核融合よりもはるかに効率的なエネルギー発生源になるということが、このタイトルに集約されているらしい。
    ブラックホールは、大きな質量を持つ恒星の最終形として生ずると理解していたが、最近の研究では、銀河中心部、あるいは銀河団中心部にある超重ブラックホールは、それとは別物らしい。本書は、このような超重ブラックホールを主な対象として、これが物質を食い尽くすだけでなく、時折膨大なエネルギーを放出することで宇宙が恒星過多になることを防いだり、究極的には、宇宙の進化や生命の発生にも寄与していると論じている。最後の部分は、このようなブラックホールが存在する宇宙に我々が生きているのだから、人間が存在するのはブラックホールのおかげといった感じで「風が吹けば桶屋が儲かる」的な気もするが。
    内容的には、難しい事象の説明として用いられる比喩が分かりやすく、また、個人的には、ほんの20年くらい前まで謎の天体とされてきたクエーサー(準星)の正体がここまで分かってきたのかという点で天文学の進歩を実感できて、読んだ価値があったと思っている。ただ、それでも、やはり難解な部分はあり、著者の説明や主張を100%理解できたわけではなく、本当に理解しようと思えば、何度か読み返したり、関連書籍に当たってみる必要はあろう。まあ、こういう最先端の科学については、色々な書物を読み合わせて、パズルのピースを増やしていくことが必要で、一冊ですべて分かるという本には中々お目にかかれない。本書は、その意味では、すべてではないが多くのピースを与えてくれたと思う。

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著者プロフィール

イギリスに生まれる。ダラム大学卒業。ケンブリッジ大学で天文学の博士号を取得。NASAゴダード宇宙飛行センター、宇宙望遠鏡科学研究所などを経て、現在 コロンビア大学コロンビア宇宙生物学センター・センター長。専門は系外惑星科学、アストロバイオロジー。ニューヨーカー、ニューヨーク・タイムズ、サイエンティフィック・アメリカン、ナショナルジオグラフィック、ネイチャーほか、多数の出版物に記事を執筆。著書にThe Copernicus Complex, Gravity’s Engine(『重力機械――ブラックホールが創る宇宙』水谷淳訳、早川書房、2013)、Zoomable Universe(『ズーム・イン・ユニバース――1062倍のスケールをたどる極大から極小への旅』佐藤やえ訳、みすず書房、2019)などがある。ニューヨーク市在住。

「2019年 『ズーム・イン・ユニバース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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