- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152093738
作品紹介・あらすじ
くもりの日にだけ開店する、ちょっとかわったパンケーキ屋さん。幼馴染の男子と親友の女子がつきあい始めたことに悩む女子高生みほだが、店を訪れたおかげで……温かさと甘酸っぱさ大盛りの物語
感想・レビュー・書評
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曇りの日だけ開店する「バージンパンケーキ国分寺」。非処女のお客さんにだけ反応する見えないカウベル。
陽炎子さんとわるつ先生の物語がすごく良かった。まぶさんと盛さんがやっているパンケーキ屋さん、本当にあったらいいな。みほと久美と明日太郎は3人なりの付き合い方を見いだしていくのかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「バージン」ということばに、惹かれたわけではないけれど、結果的にそうなってしまったのかもしれない。
作中のみほのように、「処女って何?」とだれかに問いたくて仕方がない最近のわたしに呼応するように、目の前にこの本が現れた。
ほわほわふかふかしたモチーフがちりばめられた世界観、閉じた円環のように心地よい喫茶店のイメージに乙女心がくすぐられるのは勿論なのだが、その根底にどこかすんなりとした芯を感じる文体。どこかふしぎな世界観、ふしぎ設定の理由をあえて説明せずに「そのままが当たり前」のように放置している感じが村上春樹に似ているなとも思ったり。
「非処女にしか鳴らないドアベル」というモチーフが非常に良いと思った。漫画の「ラブレス」のように、処女/非処女、童貞/非童貞が解りやすく可視化(この作品では”音”)されたなら、どんなふうに感じるだろう。ドアベルの鳴る・鳴らないは、否応なく彼もしくは彼女の「ひめごと」に思いを至らせる。この人はどんなふうに処女をあるいは童貞を喪ったのか。そこにどんな意味と記憶と思い出が眠っているのか…。
処女か非処女かなんて、単なる「通過儀礼」の有無にしかすぎないのに、そこにまるで0と1ほどの歴然とした違いを見てしまう。その「さかいめ」を越えることに意味を、理由をもとめてしまう。
むしろその心性こそが、「処女的なもの」とでも呼べるような特有の繊細さな気もする。とても貴重で、たぶんきっと処女喪失と同時に喪われてしまうものなのだろう。そういう少女のようなこわれやすさは。
他人のセンシティブな領域に想像力を行使するのは自分にとってもダメージになる。 -
平仮名多めのゆるふわファンタジー?
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文句無しのほんわか系小説です。人物やパンケーキの名前ひとつ取ってもワクワクが止まらない、可愛さやキラキラさに満ちている作品です。少し読んだだけで、なんて絵本のような優しい書き方の文章なんだろうと思ったら、著者が短歌も読まれる方でした。あらすじを見た時、もっとどろどろした三角関係を想像していましたが、意外なお話も多く詰まっていて素敵な世界観。
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みくの幼馴染みである明日太郎と親友の久美が付き合い始める。友達としての付き合い方しか知らないみくと、女としての付き合い方しか知らない久美の気持ちがすれ違う。この状況に対して、みくの考えた打開策に驚き。普通はそんな考えに辿り着かない。もやもやしていたみくの心の拠り所となっていたバージンパンケーキ国分寺。まぶさんの過去がちょっぴり切ない。ラストは何が現実で、何が幻想だったのかよくわからなくなり、不思議な感情だけが残った。
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曇りの日だけに開店するパンケーキ屋さんにまつわるお話。高校生の恋模様、ある人に反応するドアベル、オーナーと常連さんの過去…後半にかけてファンタジー要素が強まりますが、すんなり受け入れられてしまう不思議。そう、山のようなパンケーキを目にしてもするりと胃におさまってしまうかのように。よしもとばななさんが好きであれば、読みやすいかと思います。
「食べものは、かつて生きていたもの。わたしたちはだれかの思い出を食べているのね」という言葉に開眼…! -
パンケーキ、というタイトルに惹かれて読んでみた。
様々なパンケーキが出てくるが、変わった名前なので想像しづらい。
簡単なレシピでもあれば「美味しそう」と思ったかもしれない。
美味しいパンケーキを出す店、というなら美味しさをもっと表現してほしかった。
パンケーキ店で繋がっている人々の話が章ごとにあるが、全体的なまとまりがあまり感じられず残念。
ファンタジーな作風。 -
表紙とタイトルのインパクトが強く、新聞記事にも取り上げられていたので読んでみることにした。よくある「ほっこり系」ではなくて、なんとも不思議なテイストの内容だった 。様々な先行作品の要素もある気がした。
高校生のみほは、幼馴染の明日太郎が、親友の久美と付き合い始めたことでもやもやしている。そんなとき、不思議なパンケーキ屋さんで曇りの日だけバイトすることになる。
店主のまぶさんが魔法のように作り出すパンケーキ。美味しそうである。読み手を、どうしようもなく「食べてみたい」気持ちにさせる。また、親友とも幼馴染とも「うまくやる」方法として、みほが導き出した提案がなかなかすごい。面白い。
漢字をわざわざ平仮名表記にするセンス(「放課ご」など)や、持ち物の呼称に違和感があった。そこが、良くも悪くも個性のようだ。 -
主人公が女子高生で、幼なじみの男子と女子の親友と三角関係?のようなものに巻き込まれていて、パンケーキのお店がメイン舞台で、店主がカッコイイ感じの女性で、常連さんが占い師(魔女?)で・・・と、ピースだけを挙げていくと「ありがち」なのだが。
所々に「へ?」と思うような、微妙にハズした文章だったり場面だったり設定があり、予定調和が乱れ、良い意味で裏切ってくれるところがユニークであり、飽きさせないポイントに思えた。
連作短編で、主要な登場人物の過去も語られる。もっと長大な話に拡げることもできそうなのに、腹八分目ならぬ七分目ぐらいでまとめている点も、「こ、この続きはっ?」と気になってしまう。
なんというか、じらせ方が上手い。
「雪舟えま」なんて可愛い名前で、かよわそうに見えて、実は太極拳の名手、といった印象。 -
読んでる時、読んだ後、パンケーキが食べたくなりました。
きれいな文章なので、内容はけっこう『えええ!?』ってところもあったけど、するする読めました。
いろんな人のレビューを見て読んだんですが、わたしは、この物語は腹八分目じゃなけど、ちょっと物足りないくらいでちょうどいいのかもしれない、と思いました。
みほちゃんの感性というか考え、そしてラスト、わたしは好きです。