- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152093813
作品紹介・あらすじ
一九六〇年代のテネシー。孤独で暴力的な若者レスター・バラードは、凄惨な連続殺人に手を染める。ピュリッツァー賞受賞作家が一九七三年に著した、死と暴力と性に彩られた問題作がついに邦訳!
感想・レビュー・書評
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国境三部作以降しか読んでなかったので、かなり驚いた。そこで主人公たちは、ひたすら謙虚に慎ましく生きるものとして描かれていたからだ。レスター・バラードは怖れ、毒付き、卑小な欲望に流され、涙を流し、生にしがみつく。ある意味、それらの主人公たちよりも人間らしいと言えるかもしれない。これはコーマック・マッカーシーが絶対悪を描き始める前に、人間の卑小な悪、それこそが本質だとでも言うように描いたものだ。ただ、やはり精緻な日々の営みや、自然の描写は詩的、神秘的で美しい。氏の作としては短く、読みやすい。っても、子どもにオススメできるような内容じゃないけど笑
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とある連続殺人犯のお話。内面は描かず、動機は問わず、ただたんたんと田舎のうらさみしい土地にたったひとり小屋に住み着き(無断)、狩をし、まきを割って暖をとる、そして気ままに暴力を振るい、動揺やためらいもなく人を殺す。彼は結局彼自身が送った人生に相応するような無機質な最後を迎える。読み終わって後を引くのは疑問や同情じゃなく、単純な淋しさ。
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『チャイルド・オブ・ゴッド』
原題:『 -
コーマック・マッカーシー
「チャイルド・オブ・ゴッド」(1973)
「Suttree」 (1974) 初期三部作
「ブラッド・メデリアン」 (1979)
「すての美しい馬」 映画化
「血と暴力に国」 映画化「ノーカントリー」として、アカデミー賞作品賞ほか4部門 21世紀からの三部作
「ザ・ロード」 映画化
「チャイルド・オブ・ゴッド」は初期作品だか映画化によって2013年邦訳
アメリカ、アパラチア山脈に住む貧困部落で、母は男と逃げ、父は自殺した。身寄りのないまま育ち、レスター・バラードが育った小屋を含め周りの土地まで、税金滞納で競売にかけられるところから始まる。
住処をなくした彼は、敗れ小屋を見つけ、孤独な自給自走の生活が始まる。それが7~10歳のころ。粗野で粗暴なので村人にも馴染まなかったが、車で森に入った若者のカップルを見つけて殺し、それから連続殺人が始まる。
以前妹に対する近親相姦から、殺した女を屋根裏に隠した死姦を繰り返し、ついには放火。孤独ゆえか、殺した女を屋根裏に上げて同居をするようになる。火事を起こし家がなくなった後は複雑な地形の洞窟にすみ。まれな大洪水が起こり犯行が現れて逮捕。弱りきった体で逃げ迷い、病院に来て自供し死ぬ。
広いアメリカの社会では、こういった山間部の貧困部落があり小説の題材になっている。この犯人レスター・バラードもそうした社会で人と交わらず教育を受けないで育つ。ライフルの腕を頼りにいつも持ち歩いて食べ物を獲る事もある。、無知と、生きるために食べ物を見つけては食べるようなその日暮らし。しかしそれに慣れ。そういった生活を続けるとなどは、殆ど本能によって生きている。危険から身を守ることを(独白で)言葉にすることが出来ても、自分自身を振り返ってみることなどまったく思いつかない。
陰惨な、犯人に関して言えば社会に見捨てられた悲惨な人生ではあったが、コーマック・マッカーシーが書く文章は、四季の風のそよぎであれ、雪すさぶ吹雪に揺れる木であれ、レスターが徘徊する足のしたの霜柱や、落ち葉にた無数の不透明なガラスのような光など、澄み切った自然の風物が、透明感を持って心に訴えてくる。
そういった青く青い高い空、澄み切った流れ、野草に吹く風の音。鳥や獣の鳴き声や羽根が風を切る音。、雪の上に残していく足跡。作者の筆致は独特の情感を持っている。
またこの作品は、ショートストーリーろ積み上げることで、シーンが違っても実に気の効いた形で、回りに雰囲気や、中でもレスターの生い立ちが徐々に判明するように話しに汲み込まれている。
会話は括弧で囲まず詩のような箇条書きで雰囲気がいい、それも大きな特徴で、こうした構成が酷薄な事件を和らげているようにも思える。
現実に起きた事件を基にしているとも言われるが、前面の露悪的な事件の周りが,こうした別世界に思えるような世界なので、殺されて無残な姿を晒す遺体の姿まで、大きな自然の中では、最後は静かに土に返るように思える。
前に方用に、非常な世界を書いて名前が出てそれが映画化され作家として安定したした。今ではノーベ文学賞候補ともささやかれているという。
今年になってマッカーシー原作の「悪の法則」を見た。豪華キャストの競演だったが主題が弱く、原作を読んでいないのでわからないが、★3位の出来だった。 -
孤独と暴力の世界。それを追求しながらも、美やユーモアや宗教性とあり多層で豊かな世界が垣間見られる。それにしてもこの圧倒的な暴力の魅力はどうなのだろう。200ページあまりの小説だが、
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これの凄さも
良さも
私にはわからない -
堪能。40年前の作品とは思えん。
美しすぎる描写と異常者の有り様。映画見たい。 -
どちらかといえば初期のころの作品だが、
独特の文体、表現はすでにこの時点で固まっていたのだと思う。
猟奇殺人ではなく、
それを取り巻く世界を描いたという訳者の解説はなるほどと思った。 -
2章の途中で読むのを断念しました。
「文学」として、どれほどの価値があって
傑作と評されているのかわかりませんが、
「小説」としては、面白くありませんでした。
少なくとも私には。
独特の文体とリズムがあって、原文がそうなのか
翻訳特有の文章感になっているのかわかりませんが
たぶん両方なんだろうと思います。
それに馴染める人は苦にならないと思いますが
殺伐とした内容に加えて、淡々とした地の文と
やさぐれた会話文を読んでいると
いやーな気分になってきて、どこに面白さを
見出していいのかわかりませんでした。 -
面白かった。
淡々と話が進んで行くのが怖い。