- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152093875
感想・レビュー・書評
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ハープーナズの快進撃とは逆で登場人物たちの関係はぎくしゃくしてうまく行かなくなります。自分の欲望のためではなく、あくまで自分の信じることを行っているので心地よい感じがします。世間一般でいわれる成功ではなく、自分の人生を生きた結果が小説の内容なのです。
最後の墓場から湖へ向かうところは色んな意味で「くさい」表現となっています。のこった登場人物が本当のスタートをきるための儀式という感じです。
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上巻前半はどんどん成長していく気持ちいい物語やけど、途中からズブズブのドロ沼に。それも、誰も悪くない、自分がプレッシャーに負けてるだけっていう、なおさら救いのないドロ沼。しかも男女のゴタゴタからそうじゃない色恋沙汰から詰め込んだねー。最後はいちおうまとめるべきところにまとめて落とし込んだかな。
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アーヴィングみたいで楽しく読みました。
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下巻は、やっぱりヘンリーの苦しみがあまりにも深すぎてつらい。そういえば、『Dive!』(森絵都)の沖津飛沫も彼女のところに引きこもってたっけな。でもせめてなんか食べようよ。
このヘンリーとシュオーツの共依存は、どちらもが不安定であるがゆえに余計に強く結びついたものだったわけだけど、それをまずはペッラの口をかりて、さらには精神科医の口も借りて、何度も説明しているのが少し惜しいような。読めばわかるのに。
このふたりの関係に比べると、食堂のシェフ、スパイロドーカスは、同じコーチングでもやっぱり落ち着いた大人のコーチングで、完全に脇役なんだけどなかなかかっこいいんですよね。シェフのもとで、ペッラが少しずつ自分の人生を取り戻していくあたりは、好きだったな。
タイトルのThe Art of Fielding は、もちろん、ヘンリーの座右の書のタイトルなのだけど、Fielding という単語は、かならずしも野球の「守備」だけを意味するわけではない。field を動詞として使うときには「〈質問・電話などに〉当意即妙に答える;〈問題を〉てきぱき処理する;〈立場などを〉守る:」という意味もあって、だから大きく考えると「人生のさばき方」なんていう意味も少しは込められているのだろう。
原書版を読んだときにも感じたけれど、人は「失うまい」としてしがみつけばつくほど深く沈んでしまうことがある。でも、沈んで沈んで底を打つと、あとは浮上するしかなくなるんじゃないか(その前におぼれて死んだりしなければ)。そういううっすらとした、ゆるやかな希望を感じさせる終わり方は、二度目に読んでもなかなか好きだった。 -
スランプに陥った主人公ヘンリー不在のままチームは快進撃を続ける一方、彼を取り巻く人々の物語が大きく動き出す。登場人物のキャラクター描写は繊細。野球中心のストーリーではないが野球シーンは緊張感溢れる。良きアメリカの青春小説。