楽観主義者の未来予測(上): テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする
- 早川書房 (2014年1月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152094360
作品紹介・あらすじ
経済破綻や自然災害の脅威にも関わらず、世界は確実に良くなっている。新世紀DIY革命を初めとする四つの柱を掲げ、豊富なデータに基づきXプライズ基金の創始者が説く「潤沢な世界」の青写真
感想・レビュー・書評
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地球規模の資源の欠乏(食べ物、水、衛生、医療、教育etc.)が、技術進歩により解消されると論じる本。
手始めに、世界の現状はそれほど悪くないということを、様々な統計や現在までの改善の道筋で示す。その後に技術進歩は指数関数的(1→2→4→8→...)であることを論じたうえで、様々な欠乏がどのように解消されるかを、それぞれ具体的な技術について言及し示していく。
本書の魅力は、前向きな姿勢についての技術的な裏打ちがしっかりしていることにある。2012年に書かれた本であり、現実になったものとまだ実現されていないものが入り混じるが、指数関数的な技術進歩が明るい未来を切り開くという大枠の考え方の大切さが損なわれることはない。一読の価値あり。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
技術は指数関数的に発展する。
時間なく、ざっと概観を -
指数関数的に進歩するテクノロジーで世界がどのように変わるかを示唆してくれる。読むことで未来志向のポジティブなマインドセットを与えてくれるので重用する。
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Nさんの書評に刺激を受けて読了。
一般的には悲観的なニュースがあふれており、人類の未来は暗いのかということへのテクノロジー観点からのアプローチ。
日本の場合は人口減少フェーズをどうするかという話題が多いが、世界的には人口が爆発的に増えており、エネルギー問題、貧困問題、キレイな飲料水確保等により、多くの人が自由で豊かに暮らせるようになる「潤沢な世界」をいかに実現しえるか、という投げかけ。
未来がいつも悲観的に思われてしまいがちな理由が興味深い。
人は「認知バイアス」を持っており、判断を狂わせてしまうパターンがある。
「確証バイアス」
→ 情報の解釈を自らの先入観を裏付ける形で解釈しがち。怪しいやつだと思っていたけど、やっぱり良くないことをしてたんだな、という追認行為がそれに当たる。
「ネガティビティ・バイアス」
→ ポジティブな情報や経験より、ネガティブなものに重きが置かれる。
新聞やニュースには人の生き死にが多く取り上げられるけど、いい出来事はほとんど取り上げられないことが、その事例の一つ。
でも本当に世の中は良くなって行くのか?と普通は疑わしいと思いますね、そういうバイアスあるのが人間ですからね(笑)
例えば高齢者の介護費用がかさみ過ぎて、財政破綻が加速するという目の前の問題がありますね。
だから、移民を受け入れよう、海外から介助スタッフを送り込むということがありますが、それでもなかなか財政問題解決しないですし、世の中の30%が高齢者になってくるとなかなかそれもままならないでしょう。
テクノロジーの未来的には、2020年から25年くらいには、人の識別がで介助を行うことが出来るロボットが、10万円程度で市場に出回るようになっているだろうとのこと。
ソフトバンクのペッパー君はまだ介助はできないけど、世界の多くの企業がロボット技術を買い集めようと動いていることにも、その実現があながち遠い未来ではないことが伺える。
半導体の指数関数的な処理能力向上の法則である、ムーアの法則。技術革新の多くにその法則が当てはまる、ということがまた面白い。
刺激になる事例がたくさんあるので、オススメです! -
水と食料廃棄の問題がある。水耕栽培は未来がある。
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冒頭掴みは良かったのに邦題と著者の視点に難あり
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社会の不はテクノロジーによって次第に解決される、という話。
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シンギュラリティ大学の共同創設者である著者によるOptimisticな未来予測。技術的裏付けやデータ的根拠も豊富で、資源の希少性ではなく利用可能性がテクノロジー的進化であるという話や、「潤沢」という概念もよい。
しかしながら如何せん校正が悪い。読み辛い。参考資料が巻末にあったり、章レベルの結論が不明瞭だったり、そもそも上下巻だったり。データや要素が冗長かつ乱雑で読んでいてメッセージがわかりにくい箇所が多数あった。
肝心の内容は、特に後半にかけて面白く、編集や構成でだいぶ改善できそうなだけに残念だ。 -
恐怖を恐れない心は筋肉のようなもの。
きたえられる。
他、テクノロジーで発想自体変わるなど、知見が変わる。
これ読むと、遺伝子組み換えも悪くないんじゃあと思えてしまうのがすごい。 -
現状に対する認識も悲観的ではない。「現在、貧困線以下で暮らしている米国人は、アフリカの人々よりも進んだ暮らしをしているだけでなく、わずか100年前のアメリカで一番の金持ちよりも、はるかに進んだ暮らしをしている」とし、「新しいテクノロジーの進歩によって、人間の大部分は近いうちに、今は富裕層にしか手が届かないものを経験できるようになるだろう」と説く。かつては希少だったものを、潤沢なものへと変えることができるのがテクノロジーの力で、水にもアルミニウムのようなイノベーションが起れば、「潤沢な世界」が待っている。
「あらゆるものが潤沢にある」世界を、悲観主義者は「夢物語だ」と頭から否定し、楽観主義者は「手の届きやすいところにある」と信じ挑戦する。
きっかけはヴェンターやケーメンのような一部の「繰り返し成功する天才」によってなされるのかもしれないが、その先には「一つの問題が解決すればほかの問題も解決されていく」ようなプラスの連鎖反応が待っている。
この「潤沢な世界」を実現するために必要なのは、「指数関数的な変化」だけでなく「協力の促進」も欠かせないと著者は考え、例として鉱山の金埋蔵量を試算するコンテストを取りあげる。 -
2015/05/22
未来は世間が悲観するほど悪いものでは無い。ただ、悪いニュースばかりが目立つように人間の脳は作られていて、またそれに合わせるように世間もまた、悪いニュースばかりを流すのである。潤沢な世界を目指す私たちに必要な事は、この悪いニュースに踊らされるのではなく、楽観的に潤沢な世界を創造することである。
実際に現在起こっている問題として、人口増加の問題が1番大きな傾向としてある。これに付随して起きてくる問題は、食料問題、それに加えて世界の貧困問題をいかにして解決するかということである。
実際のところ、技術は指数関数的に進歩しており、またそれぞれの分野における相乗効果によりより良い未来が作られていくのは確かなことである。今日アメリカで暮らす下流階級の人でさえ、100年前の富豪よりも良い生活をしているのである。 アフリカの奥地に住む人々でさえ、携帯電話の普及により、100年前のアメリカ大統領よりもより多くの情報に触れることができる。こういったことにより実際に生活は確実に世界水準で良いものになっているということを認識することがまずはより良い潤沢な世界を作るために必要な第一歩である。
具体的に今存在している問題に対する解決策としては、水ビジネスの問題がある。きれいな水が得られない人たちが抱える問題は、ただ単に衛生面の問題にとどまることではなく、水汲みにかかる時間であったり、その長期的な問題を包括する。
食料問題としては、遺伝子組み換えや、垂直農場、培養肉など、新たな試みも始まっている。 -
新聞とかテレビとかニュースを読みたくない、見たくない。下品な語り口に辟易と思ってからもうずいぶん経つ。別に知らなくても困らないよ。
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世界経済の落ち込み、資源の枯渇、世界経済の落ち込みなど、未来への悲観論には事欠かない現在ではあるが、過去を振り返って見ると世界は確実に良くなっていると主張し、テクノロジーと資本(慈善家の)と底辺から成長してくる数十億人の人々の力でもたらす「潤沢世界の実現」を上下巻二冊にわたって語る。
上巻では、下層を食料、水、住居といった生きる為の必需品、中間層に、潤沢なエネルギー、十分な教育機会、ユビキタスな通信および情報へのアクセスといった、さらなる成長促進するものの階層、そして最上位層は、個人が社会に貢献するために必要不可欠な自由と健康と、マズローのピラミッドをやや圧縮した三階層の「潤沢のピラミッド」定義し、ICTを中心としたテクノロジーについてレイ・カーツワイルの提唱するシンギュラリティを持ち出し期待を込める。そして生きる為の必需品である水と食料の確保についてその将来を語る。
遺伝子組み換えなどメンデルの法則以降の常識とあったのは驚いたが、事例紹介など、翻訳物にありがちな回りくどさや大仰なレトリックが鼻につき一端はこれで挫折した。 -
技術が人の暮らしを変えていく。
そういうしてんで書かれた本。
とくに都市のビルで行われる農業技術の章が面白かった。上の階で魚を養殖し、その粉や食べ残しを利用して下の階で野菜を栽培するという。
その電力は都市住民のトイレから出される大便を燃焼し得ることでまかない、その燃焼したカスもまた肥料として使って行く。
都市で行える循環型農業がこれからの時代の農業なのではないか、と思った。 -
確かに楽観的だが、どこまで「技術的には可能」なのか俯瞰的網羅的に述べることは重要。知が細分化された現在、そういったことがすっかりわからなくなっている。
ここを押さえれば(本書の内容が妥当なものと仮定すればだが)ほぼ全ての人が幸せになるのにやらない理由は政治的なものに帰結し、本当に切羽詰ったときに何をすべきかが見えてくるだろう。 -
テクノロジーの進化も指数関数的に進むのだということなら、マルサス人口論に対抗できる、そんな印象がある。
でも、テクノロジーの進化が人類にとって直線的に便益になる方向に進むのかな、という疑問はあるが。 -
マット・リドレーの「繁栄」が過去の"前向きな未来"を語った本だとすると、本書はまさしく未来に向けた前向きな未来予測である。「未来はいまよりよくなっている」ということを指数関数的な進化を遂げるテクノロジーの面から説明をしている。
人類の増えるスピードに食料供給が追いつかなくなることがマルサスの罠だったとすると、人類が資源を消費しつくすスピードに対して、指数関数的テクノロジーはそれを上回るということを、上巻では幾多の例を元に説明を続ける。
「繁栄」とセットにして読みたい作品。