あるときの物語(下)

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制作 : 田中 文 
  • 早川書房 (2014年2月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094421

あるときの物語(下)の感想・レビュー・書評

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  • 一冊の本を目の前にして理系がからっきしの自分がどれだけの数存在しうるのか、内容もまた表紙を開いたりページを捲るときに変化しうるとかの理論なんかひとつも飲み込めてないし、合ってるのかさえ分からないけど凄くドキドキした。これが本を読むのを読められない理由のひとつかもしれないと思う。ナオの書くジコウの人生を物凄く読みたい、読んでる私も存在しているかもしれないと思うとまたドキドキする。六十四億九万九千九百八十の刹那を28×365と少しを一刹那も感じず大事にしなかった。時折、指を鳴らして刹那を感じてみようかな。

  • 米国に住む作家ルースは、海辺でハロー・キティの弁当箱に入った日本の少女・ナオの日記を拾う。3.11の津波で流されてきたのだろうか。
    帰国子女のナオは、中学で壮絶なイジメにあっている。父は米国で仕事を失い、妻と娘・ナオを連れて日本に帰ってきたが、仕事が見つからずひきこもりになっている。ナオの心のよりどころは祖母の尼・ジコウだ。ナオは、自分が死ぬ前にジコウの人生を残そうとする。ルースが拾ったのは、そのノートだった。
    ナオは、ナオの父親は生きているのか、3.11を通して日本を見つめるルースとその夫。日本と米国、現在と過去を行き来する物語。
    ナオの生き様や、その生死が不安でぐいぐい読ませる。それはルースも同じで、ネットで調べまくる。特攻隊員だったナオの大叔父の手紙やジコウの経歴。少しづつ分かってくるナオとその周辺。
    最後まではっきりとは分からないのだが、ナオと父の明るさを予感させる生をほのめかし、少し安堵をおぼえて読み終わった。

  • 読み終わった後も、この物語が終わってしまったという事が理解出来ずに「どこまで読んだっけ?」とぺらぺらめくってみて、最後まで読み切った事になんだか驚く様な、そんな物語。生活の中にそっと誰かの生活が入り込む、ルースと同じ経験をしていた様に思う。

    この物語の結末がはっきりと描写される事はない。
    自殺願望を持っていた父と娘が明るい方向へ歩き出せた、らしい、というのがわかるのは、一度虚言で仕事をもらったと言って公園で1日を潰す生活をしていた父親からのメールだけだ。

    彼らが前へ歩き出せたのだと思ってほっとすると同時に、心のどこかで、その明るすぎるメールの内容にこれはまた、ハルキ2が作り出した妄想の、願望の世界なのではないだろうか、という思いが拭いきれない。

    そこを含めて、素晴らしい物語だったと思う。

    読んでよかった。

  • ルース・オゼキは、全然知らない作家さんでしたが、俄然興味が!「イヤー・オブ・ミート」(アーティストハウス)を図書館に予約しよう、、、

    早川書房のPR
    「日系アメリカ人作家の圧倒的な大作登場
    人生を終わらせようと決意したナオは、その前に敬愛する曾祖母、104歳の尼僧ジコウの生涯について書き残そうと考えて日記をつづる。

    ナオの日記を読み進めるルースは、様々な問いを抱える。日記はなぜ今ここにあるのか? 津波に運ばれてきたのだろうか? そして、ナオはどうなってしまうのか――

    交錯し、共鳴する人々の運命が向かう先とは。日系人作家の圧倒的な大作。」

  •  10年以上前に日本で書かれた日記が、時空を越えてカナダの小島にいるルースに語りかける。
     我々読者は、ルースと一緒に祈る。「どうか彼らが無事生きていますように」と。
     アメリカ企業を解雇されて日本に帰国した父の自殺未遂、語り手ナオへの凄惨を極めるいじめ、それらの先に彼らがみたものは?日記が3.11の波によって流されてきたものなのであれば、ナオたち家族は無事なのか?ハルキ①の日記はどうやってナオの手元に渡ったのか?
     これらの疑問を物語が解き明かしてくれることを期待するも、謎は謎のまま終わってしまう。ただ一点だけ明らかになったのは、「ヤスタニハルキ(父)とヤスタニナオ(娘)は存在していた」ということだけ。物語が終わった今も、やはり祈ることしかできない。

     ふたりのヤスタニハルキに共通するかっこよさに私は震えた。戦争を憎み、「波と戦ったほうがまし」と海に自分の飛行機を向かわせた①と、自分の作ったインターフェースが軍事に利用されることに耐えられなかった②。その良心ゆえにふたりとも生きづらさを抱えるのだけれど、とっても美しい生き方だしかっこいいと思う。何の慰めにもならないけど、かっこいいよって伝えたいと思う。

     物語の肝となる量子力学やシュレーディンガーの猫については残念ながらよく理解できなかったが、時間を粒子と捉える禅の考え方ははっとさせられた。刹那、刹那、刹那。『いま、いま、いま、と指でおさえているうちにも、いま、は遠くへ飛び去って、あたらしい「いま」が来ている。』と太宰も書いてたのを思い出した。刹那の連続の中に、世界中の選択が重なっていると思うと、「今」が奇跡みたいに思えてくる。

  • 読んでいて苦しい
    つらい
    哀しい
    でも・・・よかった

  • 死に方、というか死因を一様に扱いすぎではないか。
    戦争での死と、津波での死と、寿命と、原発で土地を失うことは、どれもが「天災」というわけではない。
    面白くなかったかというと違うが、読み返すかと言われるとそれも違う。

  • ナオの父親が実在することが分かり、これから謎解きが始まるかと思わせるが、結局なぞは謎で終わる。

    夢で日本の地に飛んで、過去の人間と会話するくだりなどはちょっとついていけなかった。

    仏教と量子力学はよくその相似性が引き合いに出される。

    どこにでも存在するということ 時空を飛び越えること。

    ルースは著者とかぶり、オリバーは著者の配偶者の名前。

    物語を書くということ そして それを読むということの意味を追究した物語といったところか。

    それにしても パパがヒーローだから救われたでは
    誰も救われないじゃないか。

    非ヒーローにこそ意味があるのに。

    ヒーローとかスーパーパワーで済ましてしまうのが
    稚拙。アメリカ的だ。

  • 下巻は量子理論が出てきて,さらに難解。
    過去と現在,夢と現実が混ざり合い,互いに影響し合うという,さらに幻想性を増しています。

    個人的にはハルキ①のパートが心を打ちました。
    ただ,ハルキ①のノート,どうやってジコウの手元に届いたのかという点については消化不良のまま。
    ハルキ①がとても魅力的な人物だっただけに,ここは何らかの結論があった方がよかったように思います。

    父娘が未来へ歩き出していく様子をうかがわせて物語は終わり,読後感は悪くありません。
    壮大で読み応えのある小説です。

    もっとも,手元に置いて何度も読み返したいかというと私にとってはあと一歩というところでした。
    個人的な好みですが,それは以下の点から。
    ・過去と現在が混ざり合わなかった上巻の方が好み。
    ・ファンタジーが入るより,とことんリアルに進んでほしかった。
    ・ハルキ①のノートが残っていた経緯,日記がどうやって流れ着いたのか,何らかの結論が示されている方がよかった。
    ・ジコウと過ごし,感化されたはずなのに,あっさり売春に走るのはどうかと思う。この点は受け入れられない。

    以上が読了直後の率直な感想です。
    不満もありますが,深い余韻を残す作品だと思います。

  • 読み終わり。物語の完成直前に東日本大震災が起きて,一から書きなおされたという小説。仙台が出てきます。慈眼寺というお寺も。(その名前のお寺,うちの近くにあるよ)

    時間と場所と登場人物がいったり来たりする不思議な小説で,とても引きつけられました。ナオのその後が知りたい。

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