定理が生まれる: 天才数学者の思索と生活

  • 早川書房
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本棚登録 : 197
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094520

作品紹介・あらすじ

数学のノーベル賞「フィールズ賞」を二〇一〇年に受賞した著者が、受賞に繋がった定理を発想し、精査し、諦めかけては難局を乗り越え証明に至る一部始終を自らの筆で明かし解説する仏ベストセラー

感想・レビュー・書評

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  • 天才数学者の青春 『定理が生まれる 天才数学者の思索と生活』 - HONZ(2014年5月4日)
    https://honz.jp/articles/-/40416

    定理が生まれる──天才数学者の思索と生活 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000008127/pc_detail/

  • 数学者とはこうもストイックな生き物なのかと反省させられました。また、著者の造詣の深さが数学だけでなくその他いろいろな芸術分野にも及んでいるところを見ると、天才はやはり天才なのかと、凡人とは時間の流れが違うのだと感じさせられました。

  • 140920 中央図書館
    現代のフランスの若手数学者が、「定理の証明・論文作成」に取り組む自らの日常を断章風に綴っている。著者の専門は数理物理学にも近い解析学で、ボルツマン方程式を世界で最も美しい方程式だと思っている。
    <blockquote>ボルツマン方程式にはすべてを見出すことができる。統計物理学、時間の矢、流体力学、確率論、情報理論、フーリエ解析・・・。この方程式によって描かれる数学の世界を誰よりもよく知っているのはこの私だと言われたこともある。(p6)
    </blockquote>
    また著者は、比較的広い範囲に研究フィールドを持ち、一見異なる内容について共通の構造を見つける手法を得意にしている。今回、後輩の一人クレマンと共同で取り組む対象は、
    <blockquote>空間的に周期的で、安定平衡に近い非線形ヴラソフ方程式の解は、自ずと別の平衡状態へと進むということ(p38)</blockquote>
    を証明すること。これは、プラズマ物理学に出てくる<span style='color:#ff0000;'>「ランダウ減衰」、すなわちボルツマン方程式を支配するメカニズムに反して、プラズマの自然な安定化、すなわちエントロピーの増大が起こることなしに平衡状態に戻る現象</span>に関係する。
    著者はこのテーマについて、1年間にわたって、クレマンとTeXまじりの膨大なメールを交換しつつ、作業の分担、相互チェックを着実に進めていく。その間、深刻な行き詰まりは何度もある。論文も一度では受理されない。そのつど、深夜まで苦吟し、目覚めの直後の啓示に戦慄し、忘我の集中を繰り返す。舞台は、パリやプリンストンでの最先端の数学者達とのコミュニケーションを交えつつ移り変わり、各種の断想や、現在過去の数学者の業績の解説や突然の音楽リスト開陳を挟んで、フィールズ賞受賞というハッピーエンドまで続く。

    最も印象的なのは、<span style='color:#ff0000;'>数学に没頭する専門家の、静謐でコントロールされた集中する姿と、知のフィールドを拡大するために共に献身するオープンなコミュニティの様子</span>だ。その様子は、著者の文章のように詩的とも言える。
    <blockquote>カーペットの上に直に座り、殴り書きのメモに囲まれながら、私は熱に浮かされたように書き、キーボードを叩いている。(p139)
    後頭部がカーペットに触れたその瞬間、満ち足りた波動が頭からつま先まで、体中に広がる。午後1時あるいは1時半だろう。私は昼食を終え、仕事部屋に戻った。リラックスタイムにちょうどいい瞬間だ。(p193)</blockquote>

  • 数学者ヴィラーニの日常を綴ったエッセイ.
    数理物理の大問題に取り組み,共同研究者と頻繁にメールをやり取りしながら,
    死に物狂いで問題と格闘する姿が素晴らしい.書いてある数式の意味は全くわからないけれど,それは飛ばして読んでもおもしろい.やがて問題は自分たちの予想を超えたレベルで完成し,学術誌に掲載が決定する.その間にフィールズ賞の受賞を知らせる電話がかかってくる!
    受賞後の騒動は大変なもの.それも楽しんでしまうのがすごい.

  • 大一級の数学者が自ら定理の証明を完成させていく過程を綴る。一般の人でも十分楽しめる内容。
    ボルツマンの方程式を拡散現象に結びつけ、最適物流がエントロピー増大の法則で理解できるという業績のようだが、ほとんどの人にとって数式や専門用語は理解できないと思われ、翻訳も大変だったと想像。ランダウ減衰が非線形方程式で成り立つことに解決をもたらし、時間可逆な力学系で起こる平衡への速い移行と、時間非可逆的な振る舞いについての最初の数学的に厳密な結果とのこと。
    ブラックジャックやデスノート、ナウシカが好きで見た目的にも非常にインパクトのある人物で、かなり文章の書き方にもキャラがたっている。
    ジョン・ナッシュやペレルマンなどの逸話も面白かった。 ポアンカレ本人のエピソードでもそうだが、一度発表した論文に欠陥が見つかり、それを改良・解決するパターンはワイルズでも共通している

  • なんと美しい叙述をするのだろう。逸話も数式もメールのtex表現も、読み終えると何から何まで美しい。解説文も完璧。関数解析、偏微分方程式、、、数学や物理を学んでいて良かった。ペレルマンへの評価も美しい。よきかな。

  • ☆著者は2010年フィールズ賞受賞。
    共同研究者とメールでやりとり。定理の証明ができるまで。これはおもしろい。

  • フィールズ賞を受賞した数学者のエッセー。ボルツマン方程式の研究によってフィールズ賞を受賞。それまでの同僚との研究のやりとりや数学者としての生活。家庭生活。趣味。それらが渾然となって数学者が数学を研究するとはどういった感じかを読者に垣間見せる。電子メールにTexによる数式が書かれている。こうやって共同研究して論文が書かれていくのか。

  • 読了。23冊目。
    数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞した筆者が、受賞に至る定理を構築する過程を日記形式で綴った本です。数学者の悦びと苦悩の日々がリアルに描かれています。原著はフランス語ですが、数学の最先端である専門用語が多く登場し、よくこれを日本語に翻訳できたなあと驚きます。知的興奮を覚える一冊です。

  • 知らない分野はいつも非常に面白く読める。21世紀の今でも純粋数学の学者たちは紙と鉛筆で理論を組み立てるのかと少し驚いた。

    読了とはいえ、全体の1/3かそれ以上の数式及び数的思考は読み飛ばした。残りの部分は、あまりにも翻訳調で苦しかったけれど、興味深く読めた。

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