紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている

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著者 : 佐々涼子
  • 早川書房 (2014年6月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094605

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っているの感想・レビュー・書評

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  • あの日、液状化で水浸しになってはいたが、子供たちは一緒にいて命の不安もなく、点けたTVをしばらく観ていた。
    そのうち「あの車........」 と絶句する次女の声でTVを消し、それからしばらくはTVは点けなかった。

    画面を通してさえ、とても直視することができなかった津波被害。

    日本製紙石巻工場。
    ドーム23個分という巨大プラントの被災から復興までを、淡々と綴る本書。
    被害のど真ん中にいた人達の言葉が、この世のものとは思われない悲惨な状況を伝えてくれる。

    その日から何を思い、どのようにして、今目の前にある本を構成する紙を生み出すに到ったか。
    決断、覚悟、忍耐、我慢、
    生きてさえいれば、人はこれほどのことができるのか。

    一方で、報道されなかった被災地の治安の悪さも描かれている。人の暗い側面は、人の苦しみを増大させる。

    野球部の話もある。
    多大な被害を受けた会社が野球部に託す役割は、本というもの出版というものの役目に重なるところがある。

    第八章はヤマ場。
    タイトルの 紙つなげ!の場面。
    無念と悲しみと頑張りと責任感の集積の上に 8号抄紙機が稼働する。紙がつながれる瞬間には 言葉を失う。

    著者は第七章の冒頭に、この本が生まれた経緯を挟んでいる。筆者の媒体としての透明な存在感が、この本の厚みを際立たせていると思った。

    最後の最後に本書の使用紙が記載されている。

    本文;オペラクリームHO四六判Y目58.5kg
    口絵;b7バルキーA判T目52kg

    カバー:オーロラコートA判T目86.5kg
    帯:オーロラコート四六班Y目110kg

    ありがとうございました。

  • 「紙の本を読める」

    それがこんなにもありがたく、尊く感じられたことはありません。

    これほど思いを込めて、ページをめくったこともありません。

    ただただ『感謝』その気持ちでいっぱいです。

  • こういう、災害、逆境の中で、身近な人を失いながらがんばる話は、苦手だ。好きとか嫌いとかではなく、話を聞いていると自分の感情がコントロールできなくなって、電車の中だったりするにも関わらず、思わず目頭が熱くなってしまったりする。冷静に、一歩引いた立ち位置が好きな自分にとって、この本はずばり「苦手」なジャンル。

    まだあれから3年しか経っていないのか。当時、こういった話は、テレビを見ればいくらでも流れ(そして自分は目を背け)ていた。この作品ならではのテーマは「本」。震災後、雑誌が印刷できずに、週刊マンガ雑誌などは電子版を無料配信していたりしていたけれど、いつの間にか終わっていた。何か震災で大変だったみたいだけど…そんな噂を耳にしつつも、よく分かっていなかった現実を、石巻工場のプライドが乗り移ったような、最高に手触りのいい、読みやすい紙で伝えてくれる。石巻に設置され、震災前まで、日本の印刷を支えてきた、「紙をつなぐ」機械。日本の本の歴史をつなぐために、人の力と心をつないで、再び動かすまでの物語。

    ノンフィクションなだけに、読んでいろいろ好悪感じるところはあるだろうけど、本好きな方は、ご一読を(電子ではなく、「紙」で。電子書籍化はありえないとは思うけど)。

  • あの東日本大震災の直後、某月刊誌の編集部にいた自分も、この本に書かれているのと同じ体験をしていた。
    「東北の製紙工場が壊滅的な打撃を受けていて、うちの会社の雑誌にまで紙が回ってくるかが読めない状況だ。最悪、いま進めている企画がすべておじゃんになる可能性も覚悟しておいてくれ」という連絡が会社上層部から回ってきていたのだ。
    まさにそれが、この本に書かれている日本製紙石巻工場のことであり、なかでも「8号機」と呼ばれる巨大マシンがその主力だ。
    石巻工場が被災するなか、当然、この機械も大打撃に遭った。元通りになる姿など誰も想像できなかったにも関わらず、会社の英断と多方面に渡る準備、従業員や関係者のあまりに気の遠くなるような努力や苦労があり、わずか半年で8号機は見事に復活を遂げたのだ。

    「8号が倒れるときは、この国の出版が倒れる時だ」とまで言われているという。
    この本の著者や担当編集者同様、震災とそれにまつわる“紙騒動”があるまで、自分もどこで本の用紙が作られているかすら知らなかった。あらためて、紙の本や雑誌をめくる喜びと、その1ページ1ページのとてつもない重みを感じることのできる1冊となった。

    ★10個でもあげたいくらいの評価。

  • 出版された時から気になっていたノンフィクションでした。
    著者は「エンジェルフライト」の佐々涼子さん。
    今度はどんなノンフィクションを発表されるだろうと注目してもいました。
    ちょうど折しも、世に広めたい小説を出版するために奔走する編集者が主人公の小説を読んだばかりだったので、今度は別サイドから出版の縁の下の力持ちを知ろうという、ナイスなタイミング。

    震災関連本は多々ありますが、あまり表に出てこないいい話ではない人間の残酷な部分や利己的な場面が登場するのがショッキングです。
    そこは本筋の「紙つなげ」から若干逸れる話ではありますが取材されていく中でこれは絶対にはずせない話だと著者は思われたのではないでしょうか。
    この居酒屋の店主さんの生々しいお話があるからこそ、また「紙つなげ」の話の過酷さや希望が一段と感じられるようにも思います。

    野球部の話もそうですが、どんな逆境にあっても希望を失わないということは、人間が生きていくうえで絶対に必要なことなのだと感じさせられます。
    希望あって、そして支えられていると感じられることで絶対にやり遂げるとか為してみせるという強い信念が創られるのだなと。

    文中に「無性に欲しくなるのはたばこ、酒、本、そして野球」と出てきますが、ライフラインじゃないからこそ無性に欲しくなったり必要であったりするものってあるなと感じます。
    ライフラインがまだ整いきれていない中で、たくさんの人が本を求めたという話をいろいろな所で見聞きしました。
    ライフライン以外の心の支えが生きていく意思をしっかりもつためには必要なんだと思わされた話でした。

    本好きでたくさんの本を読んできたと思っていましたが、その本を創るための紙について思いを致したことは今までありませんでした。この本を読んで紙をつなぐことにまさに命がけで向き合ってきた人たちに申し訳なさと感謝を感じました。

    写真が巻末にありますが、これが一般の本のように最初ではなく最後にあることに一段とメッセージを感じます。紙の手触りを感じながらページをめくり、写真を見つめました。

    自分は電子書籍も多少読みますが、これからも紙の本を買い続けると思います。そしてこれからは内容だけでなく紙の手触りや本の創りにも関心をもち続けたいと思いました。

  • 日本製紙が日本の出版用紙の約4割を担っている。石巻工場がその基幹工場である。
    読んで初めて知る事実。

    「紙の本が手に入らない」そんな状況で今日を迎えていたかもしれない。

    正直読むのが辛かった。
    活字で読んでも、映像で記憶に残るので、影響を受けやすい。
    (案の定読み終わったその日の夢は海の中…)
    だから本は完全に娯楽のために読むもので、
    辛い現場のノンフィクションや、フィクションでも震災、病気、事故等々の話しは読まないこととしている。
    でもそれでもこの本を手に取ったのは、紙の本が好きだから。
    知っておくべきなんじゃないかと思って。

    今も紙を供給し続けてくれているすべての人に感謝したい。
    好きな紙質があって、手に馴染む紙、新品の本をめくっていく感触は電子書籍には替えられない魅力だと思う。


    (図書館)

  • 東日本大震災から奇跡的な復興を遂げた、日本製紙石巻工場と日本製紙石巻硬式野球部のお話。

    もう長いこと読書を趣味としてきたが、本の紙なんてあまり気にしたことがなかった。しかし書籍用の紙には出版社のこだわりが沢山詰まっていて、あのアメリカの週刊誌『TIME』も、この工場で生産した紙を使用しているそうだ。
    そして日本や海外の出版業界の期待に応えるため、工場の復興に尽くした人たちがいたことも、恥ずかしながら今回初めて知った。

    野球部の活動再開に際して同社の中村会長が、「金のことなんか心配するな」と語るシーンが非常に印象的だった。基幹工場が壊滅的なダメージを受け、経営資金には余裕など無いはずなのだが、結果的にこの判断が従業員の士気を上げ、早期復興の原動力の一因になったのだと思う。

    あの日から約3年半経ったが、実は震災関連の本を手に取ったのはこの作品が初めてだった。甚大な被害をテレビや新聞で知りながら、わずかな寄付と祈ることしかできなかった自分に対し、自責の念のような気持ちがあったからだ。
    でもこれからは出来なかった事を悔いるより、誰かのために自分ができることを考えて行きたい。

  • 「オペラクリームHO四六判Y目」。この文字が意味するところをわかる人は決して多くはないだろう。これは、本書の本文に使われている紙の種類だ。そして、その紙は、本書の舞台になっている日本製紙石巻工場で作られている。

    本書は、出版文化を支えるその工場で、震災時に何があったのか。そして、どのような決断と努力があり工場は再開に至ったのか。そこで働く人の思いや葛藤、そして紙がつなぐ人と人との絆を感じさせる一級のノンフィクション作品だ。

  •  あの日の未曾有の惨事は、被害状況が明るみになればなるほど、各方面に恐慌を齎したと思われる。
     かくいう私も、書店に「運搬だけでなく生産ラインが壊滅らしく、ひょっとすると今後書籍のお届けは、正直難しいかもしれません」と言われ、愕然としたことを思い出す。趣味より生活が最重視されることは当然の成り行きとは言え、それでなくとも様々な要因から出版社が次々と店を畳んでいた時期でもあり、また執務との絡みもあって、書籍の暗鬱とした未来を同職仲間と嘆いたものだ。
     しかし、私のような書籍好事家は、あの日以降も相変わらず彼らの不断の努力と信念によって、今日この時も支えられている。
     「事物(もの)」の先には「人間(ひと)」がいる。「人間(ひと)」の先にも「資源(もの)」がある。全く有難いことである。

  • 朝起きてから夜寝るまでにいったいどれだけの紙に触るだろうか。
    新聞、ティッシュ、キッチンペーパー、トイレットペーパー、雑誌にコミック、文芸書に文庫、おっと、レシートもあったな。
    何気なく何度も何種類も触っている紙が、ある日突然無くなったら…困る。いや、困るなんてもんじゃない、生活自体が成り立たない。
    けど、そんな状態になりかけていたのですね、この国は、あの3月11日に。
    壊滅的な状態からの復興。言葉にすれば簡単なことに思えるけれど、そこにはやはり当事者にしかわからない、というより、わかった気になってはいけない苦しみと悲しみがあるのだろう。
    この一冊は、そんな「わかることはできないけれど覚えておかなければならないこと」が詰まっていた。
    震災と復興の物語、というだけでなく、現場の力、職人の矜持、リーダーのゆるぎない意志力、など危機的状況からの再生に必要な企業の力を示してくれている。
    日常的に紙に触れている私たちだからこそ、この一冊をたくさんの人に手渡たさなければ、そう強く思った。

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東日本大震災で被災した日本製紙・石巻工場。機能は全停止し、従業員でさえ復旧は無理だと考えた。しかし社長は半年での復旧を宣言。その日から彼らの戦いは始まった。紙の本を愛する全ての人へ

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