- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152095589
作品紹介・あらすじ
一見エレガントな理論が、実はとんでもない破局の元凶だった──「NYタイムズ」の名物コラムニストが、フリードマンからアセモグルまでスター経済学者を筆刀両断、今後の対処策を示す痛快作。
感想・レビュー・書評
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社会科学は因果推論の根本問題が存在するため研究が難しい分野であるため、
本書の表題はその点が考慮されておらず過大に思える
とはいえ2008年の金融危機で直面した経済学の混乱の歴史を知るには悪くない詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
経済学者の提言は役に立たないところか有害だーって内容。どんな考えが有害なのかがわかりやすく書かれている。
世界を破綻させたとあるが、実際は破綻してるわけじゃないのでまあタイトル詐欺なのは否めない。
経済学者がいかに間違った提言を自信満々に、臆面もなく、予測どころか実証すらかけらもなく、検証に耐えられない状態であるのにも関わらず垂れ流しているのかはとてもよく書かれているのだが、なぜそうなってるのかというと「間違った考えに固執してるから」としか書いてないのがちょっと残念かな。
基本的に政策提言は採用されなければただの戯言にしかならないものなので、なぜ採用されるのか、(正しい政策が)なぜ採用されないのかまで触れないと、経済学者が間違った考えに固執できるのかが謎のまま。
経済学者が”お墨付き”を与えた”間違った”政策を望んだのは誰、それで得をしているのは誰なんだろうね。 -
まことしやかに語られてきた経済学の理論が、いかに多くの問題をはらんできたかを実際の経済情勢に照らして指摘する良著。必ずしも一般向けの啓蒙書ではないが、経済学をよく知らない人にも分かりやすく書かれていると思う。
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スミスの「見えざる手」以来の主流派経済学に流れる自由主義を一刀両断。
金融危機を招いた金融の自由化、新興国に大きな問題を残したワシントンコンセンサス等、確かに多くの失敗を上げることが出来る。
しかし、規制、関税、政府の膨張が解ではあるまい。自由主義をイデオロギー化して行き過ぎてしまったことが問題なのだろう。 -
諸悪の根源、ミルトン・フリードマン。
ケインズは「雇用・利子および貨幣の一般理論」でリカードの経済理論を「秩序立っており、美しいが、現実にはありえず、思考の中でのみ成立する」と批評し、リカードもそのことを弁えていた感がある。
人間の行動を数式やモデルに当てはめて何かをわかったように語るところは血液型占いと大差ない。その程度の内容で「科学」を標榜し、現実の誤りをつきつけられても異論を認めず、政府の政策に悪影響を及ぼし、社会を衰退させる...中世の神学者と現代の新自由主義経済学者は同類である。
本書には触れられていないが、一流大学の教授という世間の景気動向に影響されない職につき、財産を築いた彼らにとって、自分たちの資産が毀損する「インフレ」と「累進課税」は許し難いことなのであろう。
だからこそ彼らはデフレを温存し、中流以下の階層を貧困化させ、自己責任の名で敗者「のみ」に痛みを押し付けることに痛痒を感じていない。恥も外聞もない最低の守銭奴。
反知性主義は支持できないが、「主流」経済学者だけは抹殺してもよいと思う。 -
サブタイトルに「七つの大罪」とあるが、7つがどれなのかを探すのがけっこう難しい。
各章でひとつずつ検証・反論されているわけでもないし、全7章あるけれど見出しで「コレ!」と書かれているわけでもない。
・見えざる手(アダム・スミス)
・セイの法則(供給が需要を作り出す)
・財政縮小による景気拡大
・インフレターゲット
・効率的市場仮説
・グローバルゼーション
・経済学
おそらく上記が七つの大罪(間違っていたらスマン)だと思われるが、1回読破するだけでは、いくつかのテーマが重なりあっていたり、なかなか理解しづらかった。
圧倒的なボリューム(文字量)なのだが、余白や改行がほとんどないので、けっこう読むのが困難にも感じる。
著者が大罪と呼ぶものも、以前には功績と呼ばれていたこともあったし判断が難しい。
ある地点をとって大罪もあるし
過去は功績であって、現在は大罪だとする。
しかし未来はまた功績であったと反転することもある。
その時その時の政策や経済理論は『それなりにベストを尽くし出されたもの』なはず。
それらが功績になるのか大罪になるのかは、あとになって検証してみないとわからないもの。
不都合な部分を寄せ集めて現在の視点で書くのは「後出しジャンケン」のようにも見えた。 -
著者はNYタイムズの名物コラムニストだという。「経済学者」ではないからこそ、いわゆる「主流派の経済理論」をこてんぱんに書くことができたのだと考える。
スミスの「見えざる手」にはじまり、供給が需要をつくり出す「セイの法則」、フリードマンの自由市場(万能)主義、インフレ抑止政策、市場は常に完全に情報的に効率的であるとする「効率的市場仮説」、グローバリゼーション、そして「経済学は科学である」という思い込み。これらが筆者が指摘する「七つの大罪」だ。
リーマンショック以前、さんざん幅をきかせていた新古典派の経済学者たちが使う理論に対して「現実とは違ってるじゃないか」と迫るのが本書。経済学を自然科学的なものと考え、計算可能で美しく理論化できることに魅力を感じている人たちに、「目を覚ませ」と冷や水を浴びせている。
訳者あとがきに〈マドリックはシンプルでエレガントな理論よりも、国により時に異なる「汚い理論」の構築に挑むという社会理論の王道を歩めと経済学者に求めているが、それには数式を振りかざせば知的と感じるような幼児性や教科書を講じてポストを得るという既得権を捨てるだけの勇気と教養が必要である〉とあるが、その通りだと思う。