- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152096029
作品紹介・あらすじ
中東で、アフリカで、CIAは暗殺に、国防総省はスパイ活動に手を染めていた――ピュリッツァー賞を受賞したNYタイムズの記者が暴く米国の新たな戦争の実態。巻末解説は防衛研究所の小谷賢氏
感想・レビュー・書評
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【ノート】
・「アラブの春」がCIAなどの組織主導ではなさそうということが分かった。リビアも。かなりアメリカ陰謀説があったけど。とは言っても、それはあくまでもCIAだけのことで、他の組織の画策ということはあり得るか。
・CIAは国外での好き勝手やっても(米国の法的に)お咎めナシ、ただし軍事はダメ。逆に軍は、もちろん軍事はOKだけど非交戦国への派兵はダメ。そんな縛りが双方にある中、9.11とドローンという兵器が様相を一変させた。特にCIAは東西冷戦状態が消滅した後では組織として縮小傾向にあった。
・ちなみに「ヴァージニア州マクリーン(CIA本部の実際の所在地はラングレーではなくこちら)にあるCIA本部 (P43)」と本書にはあり、実際にはラングレーにはないらしい。じゃあ何で映画やスパイ小説なんかでCIAのことを「ラングレー」と呼ぶのがまかり通ってるんだろう?
[中央情報庁(CIA)]
チャールズ・アレン 収集担当長官補佐 1998 - 2005
J・コーファー・ブラック テロ対策センター(CTC)長 1999 - 2002
デニス・ブレア 軍事支援担当長官補佐 1995 - 1995、国家情報長官 2009 - 2010
リチャード・ブリー アレック支局長(CTCのビンラディン捜索ユニット) 1999 - 2001
ウィリアム・ケイシー 長官 1981 - 1876
デュエイン・”デューイ”・クラリッジ 工作担当官 テロ対策センター創設者
レイモンド・デイヴィス CIA契約職員 2011年にパキスタンで逮捕される
ポーター・ゴス 長官 2004 - 2006
ロバート・グルニエ イスラマバード支局長 1999 - 2002、テロ対策センター長 2004 - 2006
マイケル・ヘイデン 長官 2006 - 2009
ステファン・カップス 副長官 2006 - 2010
アート・ケラー パキスタンにおける工作担当官 2006
マイク テロ対策センター長 2006 -
ロス・ニューランド 中南米および東欧担当の工作担当官。のちにCIA本部の高官となる
レオン・パネッタ 長官 2009 - 2011
ジェイムズ・パヴィット 工作担当次長 1999 - 2004
デイヴィッド・ペトレイアス 長官 2011 - 2012、アメリカ中央軍司令官 2008 - 2010
エンリケ・プラド テロ対策センターの工作担当官。のちにブラックウォーターに就職
ホセ・ロドリゲス テロ対策センター長 2002 - 2004、工作担当次長 2004 - 2007
ジョージ・テネット 長官 1997 - 2004
[国防総省(ペンタゴン)]
ロバート・アンドリューズ 特殊作戦および低強度紛争担当国防次官補代理 2001 - 2002
スティーヴン・カンボーン インテリジェンス担当国防次官 2003 - 2007
マイケル・ファーロング 情報活動に関わる国防総省職員。のちに民間のスパイ活動を監督する
ロバート・ゲーツ 国防長官 2006 - 2011
スタンリー・マクリスタル陸軍中将 統合特殊作戦コマンド(JSOC)司令官 2003 - 2008
ウィリアム・マクレイヴン海軍大将 JSOC司令官 2008 - 2011
マイケル・マレン海軍大将 統合参謀本部議長 2007 - 2011
トーマス・オコンネル 特殊作戦および低強度紛争担当国防次官補 2003 - 2006
レオン・パネッタ 国防長官 2011 - 2013
ドナルド・ラムズフェルド 国防長官 2001 - 2006
[ホワイトハウス]
ジョン・ブレナン 国土安全保障およびテロ対策担当大統領補佐官 2009 - 2013(CIA長官 2013 - )
リチャード・クラーク テロ対策調整官 1998 - 2001
[パキスタン]
シャキル・アフリディ CIAのスパイとして雇われたパキスタン人医師
マフムード・アフマド陸軍中将 軍統合情報局(ISI)長官 1999 - 2001
アリ・ジャン・アウラクザイ陸軍中将 連邦直轄部族地域(FATA)担当パキスタン軍司令官
エサン・ウル・ハク陸軍中将 軍統合情報局(ISI)長官 2001 - 2004
ジャラルディン・ハッカニ パキスタンの部族地域に拠点を置く犯罪ネットワークの指導者。アフガニスタンでアメリカ軍部隊を攻撃
アシュファク・パルヴェーズ・キアニ陸軍大将 軍統合情報局(ISI)長官 2004 - 2007、陸軍参謀総長 2007 - 2013
べトゥラ・メスード ネク・ムハンマド・ワジル死後のパキスタン・タリバン運動の指導者
アサド・ムニール陸軍准将 ISIペシャワール支局長 2001 - 2003
キャメロン・マンター イスラマバード駐在のアメリカ大使 2010 - 2012
アフマド・シュジャ・パシャ陸軍中将 ISI長官 2008 - 2012
ハフィズ・ムハンマド・サイード ラシュカレ・タイパ(”純粋な者たちの軍”)のトップ
ネク・ムハンマド・ワジル 部族地域におけるパキスタン・タリバン運動の指導者
[イエメン]
イブラヒム・アシリ アラビア半島のアルカイダ(AQAP)の天才的爆弾製造者
アブドゥルラフマン・アウラキの アンワル・アウラキの息子
アンワル・アウラキ 過激な導師。AQAPのメンバー。アメリカ市民
アリ・アブドゥラ・サレハ 大統領 1990 - 2012
[ソマリア]
アデン・ハシ・ファラ・アイロ アル・シャバーブ初期の指導者
シェイク・ハッサン・ダヒル・アウェイス イスラム法廷連合の指導者
ミシェル・”アミーラ”・バラリン アメリカの女性実業家。アメリカ政府の契約社員
サレハ・アリ・サレハ・ナブハン 東アフリカにおけるアルカイダの下部組織のケニア人メンバー。2009年に殺害された
平和の回復と対テロリズムのための同盟(ARPCT) CIAが資金提供したソマリアの軍閥連合
アル・シャバーブ(”若者たち”) イスラム法廷連合の武装組織 -
CIAが対象国の情報収集といったインテリジェンス収集活動から、いかにしてドローンによる暗殺を実行するようになったのか、その実態が事細かに描かれている。
あまりにも詳細で、日本ではほとんど知られていないニュースやもちろんアメリカ本国でも浸透していない事などが盛りだくさん。しかも登場人物も多数で、時間のながれも前後していたりと、かなり読みにくい内容であるが、CIAってこういうことをやっていたのか、といった漠然とした読後感は残った。 -
9.11アメリカテロからのCIA、国防総省、ホワイトハウスを中心とした、アメリカの対テロ戦争に対するドキュメンタリー書。
テロ対策をきっかけとして、CIAの対外諜報から標的殺害(暗殺)へ枠を拡げると共に、国防総省も戦争からインテリジェンスへの拡大による、国としての機能の重複と縄張り争いの激化。
たいへん綿密に綴られております。
特にビンラディンの標的殺害については、パキスタンの軍および諜報機関同士との関係性など、非常に興味深い内容でした。
最後に、日本のインテリジェンスの大家である、小谷賢さんが監訳をしておりましたので、本書を手にとりました。 -
CIAが、9.11以降かつての暗殺部隊に戻り、世界各地でドローン他による殺害を繰り返している。何となくは知っていたが、ここまで詳細に書かれているとは驚きだ。
アメリカの勝手な正義で、間違った情報で無実の市民が巻き込まれて死んでいる。こんな事が許されるはずはない。
ヒラリーも同じ事をやるのだろう。アメリカはいつか、正しい方向に戻れるだろか? -
CIAの秘密戦争 マーク・マゼッティ著
水面下のテロとの戦いに迫る
2016/4/17付日本経済新聞 朝刊
終了まで1年を切ったオバマ政権は、イラク撤退、慎重なシリア政策、軍事費削減に見られるように、一般的には軍事介入に後ろ向きの政権と解釈されがちだ。だが、戦争には表には出ない水面下の「影の戦争」がある。本書は、米中央情報局(CIA)が見えない戦争の主役になっている現状を米紙記者が丹念な取材で明らかにしたものだ。
転機は9.11テロだった。冷戦終焉(しゅうえん)で下降線を辿(たど)っていたCIAの予算と権限が、対テロ戦争で増大された。フォード大統領によって禁じられていた暗殺も認められるようになった。テロを事前に防ぐことが、インテリジェンス(諜報(ちょうほう))の蓄積なしには不可能である以上、CIAの権限拡大は必然だったかもしれない。
しかし、著者は深刻な弊害について問題を提起する。CIAが諜報の枠を超えて、軍事行動の当事者となっている実態だ。国防総省との縄張り争いのエスカレートは、軍事と諜報の相乗りを加速させている。
本書が明かす内容で衝撃なのは、無人機ドローンを用いた攻撃が頻繁に行われていることだ。「標的分析官が殺害の対象者を正確に把握していなくてもミサイル攻撃する許可」をCIAはホワイトハウスから得ているという。ドローン攻撃は対象が「疑わしい行動」をとったかで判断される。「戦闘可能な男」と見なされれば攻撃は合法となる。パキスタンでのドローン攻撃で「民間人は殺害していない」とオバマ政権が主張できる根拠がここにあったと著者は述べる。
伝統的な戦闘員と民間人の定義が通用しない時代に、いつのまにか突入している。旧来の戦争倫理がドローン攻撃に対応できるのか。本書はそうした問いへの挑戦状でもある。オバマ政権は、米兵の死傷報道で支持率が急降下する法則をイラク戦争で学んだが、軍事攻撃は極秘であれば「戦争」と定義されないことも裏の真実だった。
ビンラディン殺害作戦の記録としての価値も本書にはある。作戦はCIAのものとして遂行され、同局パネッタ長官が責任者だった。クリントン国務長官が行き過ぎたドローン攻撃に対して、駐パキスタン大使の承認が必要として牽制(けんせい)したのに対して、「間違っている」とパネッタ氏が反論するシーンは鮮烈だ。
反戦論者の印象が強いオバマ大統領がCIAのドローン攻撃を追認する一方、安全保障ではタカ派とされがちなクリントン氏が外交的手続き論を尊重していた様子は、オバマ政権内の興味深い裏側も浮き彫りにしている。
原題=THE WAY OF THE KNIFE
(池田美紀訳、早川書房・2200円)
▼著者は74年米国生まれ。米ニューヨーク・タイムズ紙記者。
《評》北海道大学准教授
渡辺 将人 -
現代の戦争
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・内容は監訳者解説に簡潔にまとめられている。