ハーバードの人生が変わる東洋哲学──悩めるエリートを熱狂させた超人気講義 (ハヤカワ・ノンフィクション)
- 早川書房 (2016年4月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152096128
作品紹介・あらすじ
「君の人生は必ず変わる」。そんな約束から始まる中国思想の超人気講義。「ありのままの自分なんてどこにもいない」「自分探しの旅など意味がない」――常識が覆る、孔子や孟子の新しい読み方。
感想・レビュー・書評
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「ハーバード」という名前に惹かれて読んでしまった・・・。日本のビジネスマンは弱いよね、こういうのに。「ハーバードの〇〇」とか「マッキンゼーの〇〇」とか「東大の〇〇」とかさ。日本人の作者が書いたものならまだしも、本書の原題は『THE PATH(道)』だからね~。まさに今の出版社のマーケティングに踊らされてしまいました(笑)。
本書は、ハーバード大で「中国哲学」を教えているマイケル・ピュエット教授の講義を元にした本です。
孔子から始まり、孟子、老子などの教えを西洋文化と比較しながら分かりやすく解説する文体。
日本は東洋か西洋か聞かれれば、間違いなく東洋思想を基にした文化なので、孔子や老子の教えは「どこかで聞いたことがあるな」という既視感や「そりゃ、そのとおりだよ」と100パーセント納得できる部分がたくさんあります。
しかしながら、そういった日本人にはなじみやすい概念は、西洋人にとっては全く未知の、目から鱗が落ちまくる概念だったのでしょう。
ということで、本書は当然日本語に翻訳されていますが「中国哲学」を全く知らない西洋人向けに書かれた本であるので、日本人にとっては、「わりと当たり前」のことが書いてある部分もたくさんあります。
つまり、こういった「中国哲学」のプレビュー的な本を読んでから、本格的に孔子の『論語』や老子の『老子道徳経』、孟子の『孟子』などの原典にチャレンジしていくのが良いのでしょうね。
僕がこの本で一番興味深かったのは、ラストの第9章『世界じゅうの思想が息を吹き返す時代』ですね。
この章は、西洋文明が初めて古代中国文明に触れた際、古代中国の完成された官僚制度の素晴らしさに感動したという部分です。
中国は、多くの民族や部族が覇権を争い、数多く国が成立し、その都度トップが変わってゆきました(時には漢民族から異民族であるモンゴル系の民族をも含む)。
しかし、国のトップが変わっても、その優れた官僚制度は残ったのです。
この官僚制度の根本をなしていたのが『科挙制度』でした。
「科挙制度」とは西暦500年代から1905年まで、中国の国名で言えば『隋』から『清』の時代まで、約1300年間にわたって行われた官僚登用試験のことです。
この登用試験の素晴らしいところは、出身や家柄、身分に関係なく誰でも受験できる公平な試験で、本当に才能のある個人を官吏に登用するこの制度は、当時としては世界的にも非常な革新的なものでした。
つまり、西洋文明ではいわゆる『王族・貴族』が代々国を牛耳り、為政者が有能だろうが、無能だろうが、「王族・貴族」という身分を持った為政者だけで国を左右することができたのです。ですから、無能な為政者が続いた国は、荒廃し、そこの民衆は搾取されていたのです。
しかし、当時の中国では本当に能力のある人間が官僚となり、国を作っていったので、西洋文明では想像も出来ないほど、国力は上がっていきました。それを統治する為、さらに有能な官僚たちによる高度な統治機構がどんどん機能していったのです。
今では、普通選挙や平等な試験などはごく当たり前の権利ですが、この「科挙制度」が出来たのは、西暦500年代、つまり日本で言えば「古墳時代」から「飛鳥時代」のことなのです。まさに、当時の中国は世界最先端の文明を築いていたといっても過言ではないでしょう。
つまり、このような古代中国で、政治だけでなく、この本に記載されているような素晴らしい思想家や哲学者達もどんどん出現し、彼らの思想や哲学もさらに高度に発展していったということも非常に頷けるところなのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2024/01/08 読破
一言:事象に対しての中国の思想家達の考えを学ぶことができ、私の理想は孔子ではなく荘子でもなく、老子でした。
p139
成果が上がり、仕事が成し遂げられると人民は「自分たちは自然にこうなのだ」と言う。
老子は直接的な行動や露骨な作戦ではなく、劇的に異なる現実を実現させるための地ならしをする。
p148
強さは必ず、弱さで打ち破ることごできる。
身の回りのあらゆるものを能動的に一つに織り上げることで、私たちが道をつくりあげる
→自分の理想は、周りの皆が自主的に、自然と完遂する、そんな環境の作成が非常に望ましい。
そんな環境の作成には、今あるもの・やることをまとめあげ、洗練するという行動を踏んでいくことを考えないといけない
p201
荀子曰く、人の本性は悪であって、それを善にするのは人為によるものだ、人の本性は生まれつき利益を好む傾向がある・・・
→「自然のままの方がいい」というのは危険な観念
自分は聖人を目指し、自分の理想を作るには環境を作る努力をする必要がある
何か一つでも考えの軸が欲しい方・中国の偉人の考えを比較したい方や、考えに対しての考察を読みたい方はおすすめです。 -
「またハーバードかぁ〜」と思いながら、中国のいろいろいる哲人の違いについて、頭を整理したくて、読んでみた。
が、これが思いの外、いい本だったな〜。
まずは、ある程度、自分なりに学んだつもりになっていた孔子の解釈からして、目から鱗だし。そのあとにつづく、孟子、老子、荘子となるほどな展開。
そして、最後に衝撃なのは、荀子の解釈。荀子はいわゆる性悪説ということであまり人気がないというか、少なくても私は興味はなかった。が、これを読むと、荀子がもっとも自分の考えに近いことがわかってしまった。。。。。
わたしは、別に性悪説ではないのですが。。。。
なんだろう、荀子も人間の本性が「悪」であるみたいなことを言っているわけではない。
「自然」という概念がかならずしも人間にとって素晴らしいものであるわけではなくて、人間が努力、改善して築いてけた文化・文明に注目している。
そして、著者は、西洋の思考が、個人の本質、そしてそこにもとづく自己実現ということにフォーカスが行き過ぎていて、かえって人間を不自由にしているという。
人間は、絶対の本質があるわけでもなく、世の中も決定論的な法則があるわけではない。世の中は不確実であり、人間もその状況のなかで変化するもの、ということを前提にしたほうが、人間って、自由なんじゃない?という感じ。
つまり、これは社会構成主義の元祖ではなかろうか? -
孔子を始めとした中国の哲学の考えを現代の西洋的な自由主義の観点から解釈し直している。礼などの現代では意味がなくおろそかにされがちな部分も役割を演じることに意義があるという説明は納得できた。気の話など、現代科学的には受け入れがたい話の部分は解釈に無理があると思った。
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期待してた内容と微妙に違っていた。
東洋哲学というか中国の哲学かな…。 -
1600+税
孔子は礼によってのみ仁を修養できると説いた。
そのくせ仁を実践する生活を送ってはじめて礼を取り入れいつつくりかえるかを体感できると思っている。堂々巡りに聞こえるかもしれない。
礼とは感謝すること、例えばありがとうお願い。
仁とは人が行したら嬉しいと思うことを考えて行うこと。悲しい人がいたら手を差し伸べる。
心と体は繋がっている。だから体を労わってケアすることは心のケアにもなることを理解しておく。
五行によれば各人には習得すべき五つの徳性がある。仁、義、智、礼、聖。それぞれの徳性は私たちの良い面を磨くのに役立つ。
仁
仁義、真実、誠。
人を思いやり、優しさをもって接し、己の欲望を抑えて慈悲の心で万人を愛す。
義
義理 筋。
私利私欲にとらわれず、人として正しい行いをし、自分のなすべきことをする、正しい生き方。
礼
礼儀。
人間社会において、 親子、夫婦、君臣、目上 などの、社会秩序を円滑に維持するために必要な礼儀作法。
智
智徳
学問に励み、知識を得て、正しい判断が下せるような能力。
信
確信
信頼、信用、正直など。 約束を守り、常に誠実であること。
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目次の各タイトルはとても興味深いのに、内容は抽象的で何が言いたいのかわからない。
論語などをもっと引用して、考え方や行動に変化が起こるのを期待していた。
「この講義が終わるまでに、きみの人生は必ず変わる」と書いてあるが、残念ながら読む前と何も変わらなかった。 -
東洋哲学を用いた自己啓発本なんだが、そこに「ハーバード」というフィルターが入っているので、欧米人のエリート教育という体裁になっている。よって、欧米人による欧米人のための東洋哲学活用法みたいになっており、そういうのに興味があれば参考にはなるだろう。が、普通に東洋哲学を勉強したいと思うのであれば、日本人による日本人のための東洋哲学入門を読んだ方がいいだろう。
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難しかった
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本の作りは丁寧、翻訳はナチュラルだし、引用部分は読み下しと原文と両方記載してあって、勉強になる。
が、肝心の中身が、個人的には、どうも気に入らない。
所々、良いことも言ってるのだが、やはり西洋人が東洋思想を「解釈」する限界なのだろうか?
「#ハーバードの人生が変わる東洋哲学」(早川書房、M.ピュエット&C.グロスロー著)
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